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54話:嵐の後に

異世界生活五十五日目


嵐は一晩明けると、嘘みたいに消え去っていた。


昨日の夜は雨と風、それに波の音が激しくて、ほとんど眠れなかった。


ここに来なかったみんなは無事だろうか……。


「ナイトくん、ワタルくん。ここに避難してないのは誰?」


「力の一族と派手ガニ達、それからサワキさん、ヤマトくん、あとは水路工事に行ってたオカガニですね」


「じゃあ、住処の様子を見つつ、合流できたら合流しよう」


「川の付近は増水していて危険ですから、様子見は私たちに任せてください」


「うん、ワタルくんお願いね」


わたしたちは高台の避難所から、住処へと下っていった。


「メグミ! 無事だったか!」


「あ、サワキさん! ヤマトくんも、大丈夫だったんだね」


「ああ、ヤマトくんが異変に気づくのが早くて助かったんだ」


「潮風が強くなりすぎてたから、たまたま気づけただけだ」


「これで、あとは派手ガニさんたちとセンシくんたちで全員かな」


浜辺に着くと、そこはもう元の住処の面影はなかった。


水路は壊れ、塩田は消え、窯は流され、住処の洞穴は砂で埋まってしまっている。


波はすっかり穏やかになり、静かな浜辺だけが戻ってきていた。


――でも、わたしたちが作ったものは全部なくなってしまった。


「オー! メグミ! 陸の皆さんは無事デシタカ?」


「あ、カムリさん! 派手ガニさんたちとセンシくんがまだ見当たらないの」


「ん? 派手ガニ達ならそこにいるぞ」


「メグミ! 我らの美しい住処が……なくなってしまいましたね」


「ハロさんたちも無事だったんだね!」


「わたしたちは嵐のとき、すでに森に避難していました。嵐が過ぎたので、様子を見に来たのです」


「これであとはセンシくんだけか……」


「あいつも海のカニだから、流されても戻ってこれるだろう」


「でもセンシくんはナイトくんほど泳ぎが得意じゃないし……」


「時間はかかるかもしれませんが、あいつはしぶといので大丈夫です」


ボコッ。


「誰がしぶといだって?」


砂浜から、瓶を抱えたセンシくんが現れた。


「センシくん! なんで砂の中から?」


「なんでって、メグミ達が一生懸命作った食材や服を、とっさに埋めて流されないようにしてたからだぜ」


「えっと……ということは、今までの物が埋まってるってこと?」


ボコッ。


「砂はついてるけど、洗えばまだ着られそうだな」


ホリくんが、モクさんたちが染めてくれた服を掘り出してくれた。


「みんなが無事でよかった……」


わたしはへなへなと座り込んでしまった。


「メグミ、大丈夫かの?」


「あ、うん。安心したら力が抜けちゃって……。センシくんも無茶して埋めなくてよかったのに」


「お前たちが積み上げたものを全部水に流されるのは癪だろ? 俺ができることを考えたら、体が勝手に動いてたんだ」


「……うん、ありがとうセンシくん」


「さてメグミ、今回は嵐に負けちまったが、次はどんな住処にする?」


「え? オカちゃん、もう働くの!?」


「当たり前だろう! 失われたものは作り直す! しかもスケールアップしてだ!」


「ふむ、なら高台の簡易避難所を改造するのはどうじゃ?」


「おお、それはいいな! あそこはあの規模の嵐でも津波の影響が全くなかったからな!」


「メグミにイメージを出してもらって、さらに快適にしよう!」


「拙者はまだ嵐のショックが抜けきらないので休ませて……」


「休む場所がないから今から作るんだ! 働け!」


「どうしてですぞーーーー!」


オカちゃんはケイちゃんや大勢のオカガニ達を引き連れて、森へと入っていった。


「はぁ……でも、本当にみんなが無事でよかった。それが一番だよね」


「そうじゃのう。建物は全滅したが、仲間と積み立てたものは残った。あとは発展させるだけじゃ」


「うん! わたしもできること、がんばるから!」


わたしたちは、住処再建の意思を固め、作業へと取りかかった。



最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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