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5話:ベンケイガニ

ベンケイガニも比較的見つけやすいカニです。アカテガニとの見分けが難しいです。

異世界生活二日目。


オカガニさんたちが作ってくれた巣穴のおかげで、私はぐっすり眠れた。


……ちょっと、いや、かなり床が硬かったけど。

あとで葉っぱでも敷こう。スローライフの基本だ。


朝ごはんは昨日と同じ、赤い実。

甘くて美味しいけど、甘すぎるのが難点。栄養も偏ってそうだし、やっぱり何か他の食材もほしいところ。


でも贅沢は言ってられない。

仲間のカニさんたちを食べるわけにはいかないし、もしほかの動物を狩ったとしても、普通の女子高生だった私は解体なんて無理。包丁持ったことないし。


……そういえば今日は、外敵対策のために、**オカガニさんおすすめの「すごく強いカニさん」**を探しに行くんだった。


「ミコちゃん、みんな準備はできてる?」


「いつでも行けるよ~。メグミが一番ねぼすけだったね!」


私が一番遅かったらしい……。


「お、メグミ来たな!強いヤツは森の中の沼地に住んでるんだ。そこまで案内してやるぜ!」


「オレたち、見ての通りデカいからよ、ヤマネコ相手でも何とか逃げ切れると思うぜ!」


「しかも沼地までの道は俺たちサワガニの庭みたいなもんだ!危ない道は避けてくぜ!」


オカガニさんとサワガニさん、頼もしすぎる。

私は彼らの後ろについて、また森へと足を踏み入れた。


まずはサワガニさんたちの“沢”まで進む。


「ここで半分だ。メグミ、疲れたら水でも飲んで休んでけよ」


言葉に甘えて一口。

うん、やっぱり沢の水は美味しい。清らかで冷たくて、体に染み渡る。


いつまでもサワガニさんに汲みに来てもらうのも申し訳ないし、そのうち巣穴の近くまで水路でも引けたらいいな。


そんなことを考えていたら、突然、前方の茂みから一匹のカニが飛び出してきた。


【ベンケイガニ】

・モクズガニ科。甲幅3cmほど。陸上生活を主とするカニ。

・川辺の土手や石垣に住む。甲羅の溝が武蔵坊弁慶の顔に見えることが名前の由来。

・食用にはしない。泥臭いことがあり、ペットとして飼われることも。


……「食用にしない」って書いてあるのに、「泥臭い」とか明らかに食べてる感想なんだよなぁ……。

やっぱりカニペディアの人、全員食べてるよね。


でもそれはともかく、このカニさんがベンケイガニさんらしい。

図鑑の記述より遥かに大きいけど、それもこの世界ではもう驚かない。


「おぬしら、拙者の縄張りに何の用だ!」


ハサミを高く掲げて、やけに堂々とした威嚇ポーズ。


今まで好意的なカニさんばかりだったから、こういう“対峙”は逆に新鮮だ。


「あ、あの、私たちこの先の沼地に用があって……。ベンケイガニさんの縄張りを荒らすつもりはないんです」


「むっ! 通りすがりでしたか。それは失礼! 拙者、見た目はいかついですが実力は微妙ゆえ……もしおぬしらが敵なら、と肝を冷やしておったのですぞ」


うーん、この人、ちょっと情けない……?


「今、拙者のこと『情けない』とか思いましたな!? 拙者、これでもけっこう大きくなるまで頑張ったのですぞ!」


あっ、考えてたこと、またバレてる……。


「しかし、おぬしらの数は多い。だがこの先の沼地は“長老殿”の縄張り。拙者なら絶対に近づきませんぞ!」


「でも、話せばわかるかもしれないし……。私の家を守ってくれる人を探してるの」


「ぬっ!? おぬしの家……もしかしてかなり立派なのでは?」


「うん。オカガニさんたちが、私が入っても余裕があるサイズで作ってくれたの」


「拙者も、その……おぬしらの一団に入れてくれぬか!? 長いものに巻かれたい!」


「えっ、さっき“絶対に近づきません”って……」


「だが、おぬしからはただならぬ気配を感じる! 勘が働いておりますぞ!」


完全に手のひら返しだけど、まあ……味方が増えるのはありがたい。


「ミコちゃんたち、いいかな?」


「うん、僕もコメちゃんズも反対しないよ!目立つし、赤いし、でっかいし!」


「まあ、俺たちより立派な見た目してるし、なんか頼りなさそうだけど、その分脅威に思われにくくていいんじゃね?」


皆の許可も取れたみたい。

そしてオカガニさんはというと――


「体はデカいんだ、俺たちと一緒に穴掘りぐらいは頼むぜ!」


やっぱり労働力目当てだった。


「ではでは! 話もついたようなので、拙者が沼地まで案内しますぞ!」


……さっきまで「絶対近づきませんぞ!」って言ってたのに、めちゃくちゃ先頭で意気揚々と進むベンケイガニさん。


ツッコミたいけど、まあいいか……。


こうして私たちは、強者が棲むという沼地へと向かった。



最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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また次回、お会いできるのを楽しみにしています!


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