4話:オカガニ
筆者はオカガニにはあったことがなかったりします。
異世界生活一日目(続々)
食べ物と飲み物を確保できた私は、ミコちゃんに素朴な疑問をぶつけていた。
「ミコちゃん、私が安心して寝られる場所って、ある?」
「う~ん……メグミは大きいから、僕たちじゃ砂に埋めることもできないなあ」
「埋めないで!? ていうか、砂に埋まったら窒息して死んじゃうから! 大きさ関係ないの!!」
焦る私の頭に、突然サワガニさんから念話が届く。
「メグミ! でっけー穴を掘れるヤツが、森の入り口に住んでるぞ!」
……でっかい穴!それだ!
「サワガニさん、その穴掘れるカニさん、紹介してもらえますか?」
「もちろんだぜ! ついてきな!」
元気なサワガニさんの先導に、不安ながらもついていく。
でもまたヤマネコに遭遇したらどうしよう……。
「心配すんな! 森の入り口くらいなら、俺たちの庭みたいなもんさ!」
サワガニさんの力強い言葉に、ちょっとだけ安心する。
この世界のカニたち、なんだかとっても親切で頼もしい。
だからこそ、「カニペディア」の**“食用可”**の文が、ますます浮いてる気がするんだけど……。
しばらく進むと、サワガニさんの二倍はありそうな、大きなカニが土を掘っているのが見えた。
【オカガニ】
・オカガニ科。甲幅6cmほど。陸上生活に高度に適応したカニ。
・森や草地に巣穴を掘って暮らす。産卵時期にはメスが海へ向かう。
・食用可。沖縄などでは茹でガニや汁物にして食べられる。
……またもや出た、食用可。
だから食べないってば。しかも意思疎通できる相手を食べるの、普通に無理でしょ!
「おお、デカいの来たな。おれになんか用かい?」
オカガニさんがどっしりと構えた様子で、話しかけてくる。
「えっと、私が寝られるような、丈夫な……埋まってない巣穴が欲しいんですけど……。ミコちゃん、通訳お願い!」
ミコちゃんがちょこちょこと身振りで説明すると、オカガニさんはうなずいた。
「ふむ。巣穴が欲しいんだな? だが、俺ひとりじゃメグミサイズはちと無理だな」
「仲間を連れてくる! ちょっと待ってろよ!」
そう言って、オカガニさんは森の中へと消えていった。
待つことしばし、地面が震えるような音とともに、大量のオカガニさんたちが現れた。
「メグミ! 俺たちが最高の巣穴、作ってやるぜ!」
「安心しな! めっちゃデカいの掘ってやる!」
その言葉通り、オカガニ軍団は怒涛の勢いで土を掘り返しはじめる。
そのスピードと力強さは、まるで小型重機の軍団。
気づけば、立派な洞窟のような巣穴があっという間に完成していた。
「がっちり固めといたから、安心のマイホームだぜ!」
ハサミをシャキンと決めて、オカガニさんが胸を張る。
「ありがとう、オカガニさん……! これで、今夜は寝られそうです!」
「おいおい、メグミ。俺たちも、サワガニも、コメツキガニたちも、みんなで守るから安心しな!」
「……あ、その……“身代わり戦法”とか、そういうのは、ちょっと、もう……」
思い出してしまう。ヤマネコに食べられたコメちゃんズの姿を。
「メグミ、俺たちが食べられるのは嫌なんだな」
「うん、普通に……嫌だよ。悲しいし……怖いし……」
「メグミがイヤなことなら、僕たちもイヤだよ!」
ミコちゃんも、サワガニさんたちも、真剣にうなずいてくれる。
みんな優しい……本当に。
「じゃあ、森のとてつもなく強いやつを探すしかねえな」
「えっ、オカガニさん、そんな心当たりあるんですか?」
「昔な、仲間のひとりがとんでもねえヤツを見たことがあるんだ。そいつが味方になってくれたら、森の連中も近づけなくなるかもしれねえ」
「でも夜は危ないから、行くのは明日にしようね!」
ミコちゃんがしっかり釘を刺してくれる。助かる……。
確かに、今日はもう夕暮れ時。
いろいろありすぎて、もうくたくた。
とりあえず、今日はここでおやすみなさい――。
外敵対策は、また明日考えよう。
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