3話:サワガニ
サワガニはかなり身近なカニです。川べりの石の下とか探してみてね!
異世界生活一日目(続)
コメちゃんズが運んでくれた赤い木の実は、本当においしかった。
でも――
甘すぎて、めっちゃ喉が渇く。
水分はとれてるはずなのに、砂糖水を飲みすぎたあとみたいに、喉がカラッカラだ。
「まかせて!」
ミコちゃんの元気な声とともに、突然コメちゃんズたちが私の体を持ち上げ――
「ちょ、ちょっと!? 海のほうに向かってない!? やめて!私、海水は飲めないの!!」
本気で海に投げ込まれるところだったけど、ミコちゃんの合図がギリギリ間に合って、私はなんとか助かった。
考えてることが念話で伝わるのも、便利だけど大変かも……。
「ミコちゃん、海の水はしょっぱすぎて飲めないの。……しょっぱいって、わかる?」
するとミコちゃんはハサミをピッと掲げて、元気よく答えた。
「わかるよ! しょっぱくない水がいいんだね。ちょっと危険だけど、案内するよ!」
頼れるなあ、ミコちゃん……。
でも、水を飲みに行くだけで“危険”ってどういうこと……?
「しょっぱくない水は、森の中にあるんだ。でも、森は僕らの住処じゃないから、いろんな危険があるの」
……なるほど。
あのジャングルみたいな熱帯林の中に行くってことか。
この世界、何もかもがスケール大きいから、森の中の普通サイズの動物でも、私からしたら脅威かもしれない。
でも……飲み水がなきゃ、さすがに生きていけない。
私は覚悟を決めて、ミコちゃんとコメちゃんズの案内に従い、森の奥へと足を踏み入れた。
しばらく進んだそのとき――
「ガサガサッ……」
目の前の茂みが揺れて、そこから飛び出してきたのは――
「ええ!? ライオン!?」
思わず叫んでしまったけど、冷静に考えて、ジャングルにライオンはいない。
……多分、ヤマネコ系の大型種だ。でも、とにかくデカい。
私の頭なんて、一口サイズじゃない!?
磯野恵、異世界でネコに食べられてゲームオーバー……は、いやだああ!!
もちろん、私にも、ミコちゃんにも、コメちゃんズにも、
あんなのを撃退する手段なんてない。
絶体絶命――
……そのとき、コメちゃんズたちが一斉に走り出した。
「えっ!? ダメ!やめて!危ないよ!!」
止める間もなく、コメちゃんズたちは全力で突撃して、ヤマネコに――もしゃもしゃと食べられていった。
「メグミ! 今のうちに、水場に進むよ!!」
ミコちゃんの、強くて痛切な念話が届いた。
……そう、どうしようもないのだ。
無力な私たちは、犠牲を払ってでも進まなければならなかった。
コメちゃんズの何匹かがいなくなってしまったけれど、
おかげで私たちは無事にヤマネコをやり過ごし、前に進めた。
しばらくすると、水の流れる音が耳に届いた。
――ちょろちょろとした、澄んだ音。
ようやく、沢に辿り着いた。
水辺に近づくと、そこにコメちゃんズとは少し違う見た目の、
ひと回り大きなカニがやってきた。
【サワガニ】
・サワガニ科。甲幅3cmほどのカニ。
・一生を淡水で過ごす。日本の川の上流〜中流に生息。
・食用可。素揚げや佃煮にすると香ばしくて美味。
……出たよ、食用可。
このスキル(勝手に「カニペディア」って呼んでる)情報、美味しいかどうかに偏りすぎでは!?
「おおきい いきものだー! 浜のカニもいるぞー!」
「なにしにきたー?」
うん、話しかけてきた。つまり……この子たちも意思疎通できる=食べられない。
「ええと、水……飲める水を探してて……。ミコちゃん、通訳お願い」
ミコちゃんがちょこちょことハサミを動かし、サワガニたちに何か伝えている。
「水! のめ! おれたち、きれいな水好き! あんしん!」
お墨付きをもらったので、思いきって水を口に含んでみる。
――ごくっ、ごくっ。
「い、生き返る~……!!」
南国みたいな気候で、思ってた以上に脱水してたんだ……。
はあ、これでやっと一息つけた気がする。
水、確保。生存確率、大幅アップ。
あとは、住む場所だ。
森は明らかに危険すぎるし、どこか安全なところが必要。
あとで、ミコちゃんに相談してみよう――
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