13話:魔法使いコメちゃんズ
それゆけコメちゃんズ
異世界生活七日目
水、安全、衣服、食事——私の異世界生活は、順調に整いつつあった。
贅沢を言ってはいけない。カニさんたちは毎日とても頑張ってくれている。
……でも!でも!
ごはんが木の実ばかりって、正直そろそろ飽きてきた!
とはいえ、安心して生で食べられるのは森の木の実ぐらい。
キノコは危険そうだし、魚も素人が生で捌いたら危ないと聞く。
でも私は、かつて文明に生きていた人間!
解決方法ぐらいは分かる……そう、火だ!
火の起こし方? 昔テレビでチラッと見た!
たぶんいける!
「ミコちゃん! モクズショイさんたちから、乾いた繊維を少し分けてもらってきて!」
「わかった! メグミ、服つくるの?」
「ううん、火を起こそうと思って。そんなにたくさんはいらないよ」
ミコちゃんはコメちゃんズの元へ、ちょこちょこ走っていった。
私は住処を出て、ワタリガニさんに会いに行く。
「ワタリガニさん、森から乾いた木と、とがった枝を探しに行きたいんだけど……いいかな?」
「メグミさん! 木なら我々がいくらでも集めてきます! 危険な森には行かないでください!」
「でも、私ばかり何もせずに……」
「メグミさんが無事で、安らかに暮らしてくれればそれだけで私たちは満足なのです!気にしないでください!」
すごすごと住処の入口に戻ると、ミコちゃんが一抱えの繊維を抱えて待っていた。
「繊維、もらってきたよー! これで足りる?」
「ありがとう、ミコちゃん! これで十分だよ!」
あとは木材を待つだけ。
「メグミさん、木を集めてきましたよ! よく乾いてます!」
「枝もたくさんありますよ!」
住処当番じゃないカニさんたちまで総出で集めてきてくれたらしい。
「ありがとう、ワタリガニさん! ごめんね、当番の日でもないのに……」
「メグミさんの頼みなら、我々はいつでもはせ参じます!」
その言葉に胸がじんとする。
よし、今こそ人間の力を見せるとき!
乾いた板を敷き、その上に繊維を乗せ、とがった枝でゴシゴシ摩擦する。
コシコシ……コシコシ……
……全然火がつかない。
コシコシコシコシコシ!
腕が痛い。汗が出る。でも火の気配すらない。
「メグミ殿、何をしておりますかな? 新しい遊びでござるか~」
ベンケイガニさんが様子を見に来た。
「あ、遊んでないよ。火をつけようとしてるの」
「ひっ! よくわかりませんが、拙者は立ち去りますぞ……!」
しまった、ついイライラして強く言ってしまった。
「ごめんねベンケイガニさん……ちょっとイライラしてた。強く言ってごめん」
「いえ、拙者は気にしておりませんぞ! メグミ殿にここを追い出されなければそれで満足ですぞ!」
「ではここで、応援することにしますぞ!」
ベンケイガニさんがハサミをふりふり応援を始めた。
……これは、何としても火をつけなければ。
そこへ、大量のコメちゃんズがやってきた。
「メグミー、なにしてるのー?」
「今日はずっとそこにいるよねー?」
「なにかやることないー?」
癒されるけど……今は頼めることはない。
「いま火を起こそうとしてるから、コメちゃんズにできることは――」
「ひー?」
「火!」
「えーい!」
コメちゃんズが繊維にハサミを向けて、何かに集中している。
……ハサミから赤い光が?
……火がついた……!? って、それ火!? 魔法っぽい!
「これが火ですぞ? 凄いですな、コメちゃんズ!」
「えっ、これってやっぱり魔法……?」
「まほうー!」
「あったかくできるー!」
「メグミがやりたかったことー、ぼくらがやるー!」
……コメちゃんズ、いつの間にか魔法使いになっていた。
これもこの世界の進化なのかな。
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