106話:炭酸泉を探そう!
クラフトコーラっておいしいよね。
異世界生活百七十一日目
北部での活動も4日目、来る前に考えていたやりたかったことは、ほとんどやれた!
びっくりするくらいスピーディだ。
今日からは、今回の遠征最後のタスク、炭酸泉を探したい。
「みんなー!集まって~」
「なんでしょうか?」
「今日は炭酸泉を探します!」
「それはなんだべ?」
「なんか、シュワシュワした水!ここは温泉だから、近くの洞窟とかに湧いてないかな?」
「見たことないべなあ」
「う~ん、じゃあここ以外の洞穴とか知らないかな?」
「それならいくつか心当たりがあるべ」
「じゃあ、マオさんを先頭に、キワミくんと、タラちゃんと、アッシーくんと、ベススさんと、わたしで探しに行こう」
「なんや?うちは留守番か?」
「サキミさんは農場で忙しくない?」
「朝の水やりも終わっとるし、手は空いとるんや」
「じゃあ一緒に行く?」
「もちろんや、いきたなかったら、そもそも声なんか、かけへんで!」
ということでサキミさんも加えて洞穴捜索が始まった。
拠点からそう離れてない場所に、一つ目の洞穴はあった。
「ここだべ!炭酸?あるといいべな」
マオさんが先陣を切って入っていった。
……結論としては何もなかった。
「まあ、こういうこともあるべ」
マオさんが慰めてくれる。
「すぐ、見つかるとは思ってないから!次行くよ!」
マオさんに先導されて次の洞穴を目指していたわたしたちだが……
ドサッ!
まだ残っていた雪が崩れ落ちた音がした方向を見ると、ぽっかりと洞穴があった。
「こんなとこに洞穴があったんだべなあ」
「とりあえず調べてみよう!」
「マオさんの偵察済みではないので、注意していきましょう」
未発見の洞穴なので、ここはキワミくんが先頭に立って探索するようだ。
「なんか広いな!また温泉が湧いてるんじゃないか?これ」
「タラちゃんの言いたいことも分かるけど、この洞穴暖かくないよ?」
「メグミ様!泉があります!」
「ほら、やっぱり湧き水があるところは、雰囲気が似てるんだよ」
「どれどれ……見た目は気泡があるように見える」
「まて、毒かもしれん。まずは私が調べよう……これは毒ではないが……ピリピリするな」
「ベススさんのお墨付きも出たし、ひと口……おお!結構なシュワシュワだ!たくさん湧いてるし、いい場所を見つけたかも!」
「メグミ!これうちのときと一緒で、先住がいるみたいやで!」
「え!?また勝手に採っちゃうとこだった!?」
ガサゴソ……
物音がすると漆黒のカニさんが姿を現していた。
「あれ?カニペディアが反応しない。知ってるカニさんの色違いだったりするのかな?」
「あー、すまんな、うちら、あんたがここに縄張り作ってるの知らんかったんや、ここは大目にみてや」
「サキミさん!そいつはカニじゃありません!」
「ああ、虚無だ!俺達にはわかる!そいつは念話を放ってない!」
「虚無って、あの土座衛門さんが戦ってた、黒い狼みたいなやつじゃないの?」
「メグミ様。虚無は様々な形をとります、今回は最悪なことにカニ型ですが……」
「見た目が一緒なら、できる事も変わらんだろうし、むしろ対処が楽じゃねえかな?」
「そんな甘い相手じゃないのは、タラちゃんが一番わかってるでしょうに」
「違いねえ」
「私達が前衛を務めるので、サキミさんや、マオさんは、メグミ様の方に敵が行かないようにお願いします」
「わかったべ」
「まかしとき!」
虚無のカニは、わたしたちの話し合いが終わるのを、わざわざ待っていたように、ゆっくりと動き出した。
「侮られてますね、先手はもらいます!」
ドシュッ!
キワミ君の鋭い付きが虚無のカニの甲殻に命中する。
「ぐっ!手ごたえが無い!」
「ならこいつはどうだ!」
ドゴッ!
タラちゃんの強力なハサミの振り下ろしが命中する。
「分厚い壁を殴ってるみたいだ!勝の大将なら一発なんだが俺の威力じゃこんなもんか……」
「ここは狭いので、徹様や勝様は呼べません!いったん外に退避しますか?」
「それがいいかも!みんな出口に……」
その瞬間、地面からにじみ出るように、虚無のカニが複数出口側に立ち塞がった。
「脱出できない!?」
「こいつはちょっと絶体絶命な感じだな……メグミちゃんだけ逃がして、大将にこの洞穴ごと虚無を埋めてもらうか?」
「そんなことしたらタラちゃん達が生き埋めになっちゃうでしょ!なんかこう、なんかあるよ!」
その瞬間腰につるしていた、包丁が光を放ち始めた。
「土座衛門さんの包丁?」
「メグミ聞こえるかい?」
「え!?土座衛門さん!?き、聞こえるよ!」
「君の包丁なら虚無も切れる。みんなで協力すれば何とかなるはずだよ」
「うん、試してみる!キワミくんこの包丁を使って切るぞーって思って虚無を切ってみて!」
「わかりました、やってみます!」
ズシャッ!
キワミくんが振るった包丁が、虚無のカニの甲殻を切り裂いた!
「これは、いけますね!」
ズバッ、ズババッ、ズシャ!
キワミくんは、瞬く間に、虚無のカニたちを切り伏せていった。
「キワミくん凄いねえ」
「いえ、この包丁が凄すぎるのです、いったい何でできてるのですかこれは」
「よくわかんないけど、土座衛門さん、じゃなくてユーマさんが作った包丁だよ」
「なるほど、守護者の包丁でしたか、納得の切れ味ですね」
「それにしても、今回は肝が冷えたぜ」
「あんな化け物ガニはじめてみたべ……」
「うちもや、世の中には怖いもんもまだまだあるんやな」
「虚無は生き物ではないから毒も効かんしな」
「あ、ベススさんどこにいたべ」
「もちろん、戦力外なので、物陰に隠れていた、邪魔になるといけないからな」
「ちゃっかりしとるなあ……」
「とにかくみんな無事でよかった。ここはまだ虚無が出てきたりして危ないのかな」
「その心配はないよ、次元のゆがみは正しておいたから」
「あ、土座衛門さん、助かりました!でも会えないんですね」
「俺が目の前に現れるのは、それだけ危機だから会えない方が平和なんだよ」
「包丁に話しかけたら、会話できるんですか?」
「いや、今回リンクを繋いだだけだから、もうすぐお別れかな」
「そうなんですね……あの、使命が終わったら、いつでも浜辺に来ていいですからね!」
「ああ、その時が来るのを楽しみにしてるよ」
包丁の光は消えてしまった。
「いろいろあったけど炭酸泉のある洞窟は見つかってよかったかな?」
「そうだべな!」
「スリルありすぎやったけどな!」
「いきなり虚無はつらいよな」
「今日は炭酸泉が見つかったことと、虚無に出会ったことで、運のいい、悪いがバランス取れてる感じですかね」
「そういう平均化はいらないかなあ……」
わたしたちは炭酸泉の洞穴に目印を作って拠点へと帰っていくのであった。
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