104話:酪農のススメ
べこ飼うだ~
異世界生活百六十九日目
種まきを終えて一晩が経った朝だ。
温泉拠点の洞穴は程よい温かさなので快適に眠れた。檜の香りもいいしね。
「さて!朝は何をしようかな……」
「メグミ!芽が出たで!」
「あ、サキミさん。って芽?早すぎない?」
「ここは寒さが厳しい時期が長いから、暖かいときは育ちがめちゃ早いんや」
「どれどれ」
洞穴から出て耕作地にむかう。確かにいろんな芽がもう生えている。驚きの早さだ。
「出た芽もかなりしっかりしとるから、収穫まで行けば期待できるで!」
「これもサキミさんの指導のおかげだね!」
「みんながきっちり働いてくれたおかげやで!」
作物の順調さを噛みしめながらふと地平線を見ると、
「ムー!ムー!」
何やら鳴き声が聞こえる。あの影はなんとなく牛のような……牛!?
「キワミくん!タラちゃん!マオさん!牛を捕まえに行こう!!」
「なんだべ?」
「ん?あれか?」
「大きそうですね」
わたしは全力ダッシュで、ムームー鳴く牛らしき生き物、(よし、この子は、今日から『ムームー牛』だ!)に近づいて行った。
「ムー!ムー!?」
ムームー牛は少しわたしに警戒しているようだ。
近くで見ると寒い土地に適応したのか毛がふさふさしていてかわいい感じがする。
一際おおきなムームー牛がわたしの前に現れた。もしかしたら群れのリーダーかもしれない。
「メグミ様、かなりの大きさです。危ないのでは?」
「牛さんを拠点の仲間に加えることは、とっても大きな意味があるから、引き下がらないよ!」
「ムー!」
おおきなムームー牛はわたしに突進してきた!
「メグミ!?」
ガシッ!
わたしはムームー牛の角をがっしりつかむとその場で突進を耐えた!
「センシくんの方がパワーがあるね!ムームー牛さん。わたしたちはあなたたちと敵対しに来たわけじゃないんです!仲良くしてくれないかな?」
「流石に言葉が通じない相手にそれは無茶では?」
「誠心誠意伝えれば、言葉の壁を超えることができるよ!」
ギシシシ
ムームー牛を押し返していく。
「ムー!!」
周りの牛たちが一斉に声を上げると、大きなムームー牛は力を弱めていった。
「ムー……」
わたしは力が比べが終わったのだと感じ角から手を離した。
「ムー!」
周囲をムームー牛たちが囲んでいく。
「ムー!ムー!」
小さなムームー牛がわたしに擦り寄ってきた。かわいい。
「これはもしや、力比べに勝った、メグミ様を群れのリーダーだと思っているのでは?」
「えぇ!?」
「なんか友好的な感じがするべ」
「もしかしたらメグミちゃんの気持ちが伝わったのかもな!ガハハ!」
「じゃあ、ムームー牛さん。わたしに付いてきてくれるかな?」
「ムー!」
わたしが拠点に向かって歩き出すと、ムームー牛たちも付いてきてくれた。
「なんや!そのデカい生き物たちは!」
「あ、サキミさん。この子たちはムームー牛、今度から拠点で一緒に暮らそうと思って」
「ここで飼うなら、ちゃんと隔離してや。作物の芽を食い荒らされてまうで!」
「うん、タラちゃん牧柵つくれないかな?」
「木材加工か?まあとりあえずでいいならパパっと作るぜ!」
「よろしくね!」
タラちゃんは針葉樹林までヒキャクくんたちと木材を採りに行った。すぐに牧柵も作られるだろう。
「これでよし、と」
「それでメグミ様このムームー牛は何に使うのですか?食べるのですか?」
「食べないよ!この子たちにはミルクを出してもらいたいんだ」
「ミルク……とは?」
「牛さんからとれる飲み物……かな?これが取れると、バターとかチーズとか、いろいろ作れるようになるんだよ」
「新しい食の材料というわけですか。それでどうやってとるんです?」
「えーとまず、メスのムームー牛を探して、あ、居たいた。それでこの部分をちょっと失礼して、優しくキュッとすると、今子供がいるから出ると思うんだけど」
ジョロッ。
「あ、でた。これがミルクだよ」
「なるほど」
「でも、何時もメグミが、搾るんだべか?」
「そこはみんなにも協力して貰って……でも、みんなの、ゴツゴツした、ハサミだと、ムームー牛さんが、痛がりそうだよ!」
「そうだべよなぁ」
「あ、そうだ、綿が取れたからモクさんを呼んで、ハサミミトンを作ってもらおう」
ペカーッ。
モクさんを召喚する。
「うわ、メグミの召喚か、我になんのようだ?」
「今からイメージを送るから、こういうミトンを、そこの綿を使って作って欲しいの!」
「ほほお、これはこれは、なかなか、なるほど、おもしろい。すぐ作ってやろう」
モクさんがミトンを凄い速度で作っている間に外でも牧柵が完成したようだった。
「ムームー牛たち、この柵を越えていかないでね」
「ムー!」
「ちゃんと伝わってるのかねえ……」
「きっと伝わってるよ!」
「メグミ~。ミトン一号が出来たぞ~」
「ありがとう、モクさん、じゃあマオさんちょっとつけてみて」
「え?俺だべ?わかったべ。なんかモニモニしてるべな」
「これならミルク絞りもできると思う!試してみて」
「どれ、失礼するべ」
「ムー」
ムニュッ。ジョバッ。
「搾れたべ!ムームー牛も怒ってないべな」
「うまくいったね!じゃあミトンを量産して毛ガニさんたちに配布しよう!」
「毛ガニたちがムームー牛係ということですね?」
「うん、マオさんたちは北にずっといるだろうし、ムームー牛も北の方が生活しやすいだろうから」
「またもや責任重大だべ!」
「明日は今日絞ったミルクでバターとか作れないか試してみよう!」
こうしてわたし達は、農業に続き、酪農にも手を広げていくのであった。
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