100話:再び北へ
飛脚クール便。
異世界生活百六十七日目
北部の探索を一時断念してから、ちょうど3か月がたった。
浜辺は常夏だから、季節の移り変わりはよくわからない。
ちょっと変わったところと言えば、海苔の養殖網に海苔がびっしり付いてきたぐらいだ。
季節の違いはよくわからないが、3か月たったので北部へ向かう時が来たのだ!
勢いよく浜辺に向かい、勝さんを召喚!……しようとした時。
ズゴゴゴゴ。
「やあ!メグミちゃん、3か月たったから、呼ばれそうな気がして来たよ!」
「先回りされた!勝さん細かい時間感覚あったんですね……」
「メグミちゃんそれは、長生き生物へのハラスメントだよ~、俺は今でも365日24時間で行動してるんだよ」
「絶対、嘘ですよね」
「あ、バレた?でも今回はちゃんと数えていたのさ」
「勝!何しに来やがった!」
ズシズシと徹くんもやってくる、二人が揃うと海が狭く感じる。
「何しに来たって、メグミちゃんを北部に送らないといけない頃だから、来ただけだよ」
「もうそんな時期か、キワミくんたちも、きちんと運んでくれよ」
「それはもちろんさ、北部の開拓の主力は、現地の毛ガニもいるとはいえ、ズワイガニと、タラバガニたちだからね」
「じゃあ、勝さん、温泉拠点までよろしくお願いしますね」
「超特急で送ってあげるよ。でも北部を開拓したとして、毎回俺が輸送を担うわけにはいかないだろ?」
「なんだ、勝!毎回メグミを送るのがいやなのか?」
「嫌じゃないけど、世界のパワーバランスというものがあってね徹くん。東を留守にするとあまりよろしくない。ここで運送屋だけをやってるわけにはいかないのさ。まあそこで解決策を既に練ってあるのが、できる男の俺ってわけさ」
「なんだそれ!」
勝さんの殻がウイーンと開いて中から立派なヤドカリたちが降りてきた。
【オカヤドカリ】
・オカヤドカリ科。海岸近くの陸上での生活に適応したヤドカリの総称。
・熱帯・亜熱帯の海岸林などに生息し、夜になると食べ物や新しい貝殻を探して活動する。
・食用ではない。日本では天然記念物に指定されており、許可なく捕獲することは禁止されている。
カニペディアが種類を教えてくれる。シキブさんとかの仲間なのかな?
シキブさんもそうだったけどオカのヤドカリさんは希少なんだねえ。
「ここが任務地ですか?」
「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。ここが出発場所で、北の拠点と往復して荷物を運ぶことになる」
「なるほど了解しました。どのようなものを運ぶのでしょうか?」
「大豆とか、小麦とか植物が中心だよ」
「ふむふむ、比較的軽量の物ですね、自分たちは寒さに強くないのですが、北部の運送への対策はありますか?」
「コメちゃんズが温めることができるから、一匹ずつ連れていけば大丈夫じゃないかな」
「ほお、そのような能力のカニがいるのですか。それは凄いですね」
「まあね、ここのカニたちは、みんな進化してるのさ」
「自分たちもここで任務に就けば、進化できるのでしょうか?」
「メグミちゃんのそばで働けば、進化するんじゃないかな?寒さに強くなったりとか」
「それは素晴らしいですね!自分たちもより強い種になれる!」
「と、まあこんな感じでオカヤドカリくんたちに、北部の輸送ルートを担当してもらおうと思うんだけど、どうかな?」
「え?いいんですか?」
「本人たちは納得してるから大丈夫だよ」
「えーっと、じゃあオカヤドカリさんだから、オカちゃんはもう居るし、うーん、ヒキャクくんにしよう!」
「ヒキャクくんとは何なのですか?」
「あなたにつけた名前だよ!嫌だったかな?」
「自分の個体名称でしたか!いえ!嫌ではありません!これからヒキャクくんとして任務に就かせていただきます!」
「よろしくね!ヒキャクくん!」
こうして北へ向かう前に新しい仲間が増えたのであった。
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