表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/107

第10章「白昼堂々」【5】

 こちらが動けば本当にウリケは斬ってくる、それだけが脳裏をよぎる。


「今は冗談抜きで時間がないから。またね、エルス」


 そして瞬く間にエルスの脇をすり抜けて、ウリケは玄関の方へと消えていく。


 エルスはただ唖然と見送ってしまった。


「何をボサッとしてるの⁈」


 足の傷口を押さえながらタムタムが叫んだ。


「タムタムさん、大丈夫ですか…」


 近寄ろうとするエルスを、彼女は手で制した。


「いいから、こんなので死んだりしないから。それより、アイツを追ってよ」


「でも…」


「フガンの息子まで殺されちゃうって!」


 学校、とウリケは言っていた。


「学校って、どこですか?」


 アミネの通っていた大学なら知っているが、それ以外の学校なと知らない。


「この家の西の通りを南へまっすぐ。茶色の大きな建物が見えてくるから、それが学校!」


 タムタムの声にバシッと弾かれたように、エルスは踵を返してウリケの後を追った。


 ニルマの笑顔が脳裏に浮かぶ。


 彼は母親を失った。


 マニーサの姿が焼き付いて離れない。


 これ以上あんな光景は見たくない。


 止めなければ、エルスは必死に駆けていった。






「ハーネル!」


 ドリムザンの突きの勢いに、ハーネルの足が床から浮いた。


 彼の背中まで貫いた刃は、凶々しい輝きを放つ。


 ドリムザンはハーネルの身体に足をかけた。


 そして足を伸ばして固定する。


 ドリムザンは自らの剣をハーネルの身体から引き抜き、すぐさまネミリオの方へ振り返る。


 ハーネルは何の抵抗もなく床に打ち付けられ、無惨に転がった。


 その顔に生気は感じられない。


「残念だったな」




 ドリムザンが口を開く。


「お前らもフガンを狙っているようだが、どうやら戦力差がありすぎるようだ」


 フードを頭から被っている故に視界は遮られている。


 左の壁の辺りで戦っているザップルも、奥にいるゼオンも、苦戦を強いられているようだ。


 これほどまでの猛者揃いだとは考えていなかった。


 その誤算のせいで、ハーネルを失った。


 どうすれば良いのか。


「俺たちの目的も確かにフガンだが、あんたらとは意味合いがまるで違う」


「ふん、どう違うと?」


「あんたらはフガンを金儲けの“物”としか考えていないだろうが、俺たちはそんなあんたらからフガンを守る為にここに来たんだ」


「フガンを…守る?」


 どういう事なのか真意を計りかねるドリムザンであった。


「俺たちは賞金稼ぎを敵だと思ってる。あんたらの好きにはさせない」


 戦力が足りない。


 せめて頭数だけでも。


 タムタムはまだ戻らないのか。


「はあ、なるほどねえ」


「それはこの状況だって変わらない」


「いいねえ、見上げた心意気だ。そういう連中を見るのは、好きだぜ」


 いざとなったらマントを脱ぎ捨てる事も厭わない。


 自分の命が懸かっているというのに、身体の事など言ってられない。


「だがそういった心意気を抱えたまま死んでいく奴を見るのも、悪くないんだよな」




 ゼオンは相変わらずクルーフに押されっぱなしであった。


 剣を二本持っているから有利だとか、一本だから不利だとか、それはまるで通用しない戦況なのだ。


 クルーフの一振りは、ゼオンの剣を二本とも弾き飛ばす。


 その上でもう一度撃ち込んでくるのだから、ゼオンは下がるしかない。


 物理的にも後退しているゼオンは、既に奥の部屋を背負う所まで来ていた。


 奥にはアミネがいると思い込んでいる。


 たとえ強敵でも、ここは死守せねばならないと。




 しつこいなあ、とクルーフはクルーフでゼオンの事を嫌がっていた。


 二刀流を相手にのも初めてである。


 一本だけに気を取られていては、もう片方の剣にやられてしまう。


 相手は自分よりも身体が大きく、筋肉もムキムキを誇っている。


 どちらかと言えばドリムザン寄りだ。


 腕力はかなり強く、こちらの速さにも対応してくる。


 しかし感心してばかりもいられない。


 コイツを退けて、奥の部屋にいるフガンを捕らえなくてはならないのだ。




 ゼオンはこれまでザムニワ剣術道場で、何十人何百人を相手に試合をしてきた。


 中には強いと思う相手も出てきたが、それでもゼオンは勝っていた。


 ここまででの強さではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ