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第7章「フリエダクの葛藤」【9】

 明後日フリエダクは、マクミンの暮らすガルボーデンの森へ出立するのだとか。


 次女への土産選びに余念が無いので、手が離せないとかなんとか。


 下手をすれば大事になっていた可能性だってあるというのに。


「それもそうね。少し休んだら、予定通り公務に戻ります」


 そんな父親の状況を耳にしても、ユーメシアはすんなりと受け入れたのだ。


「少しくらいは腹の中をぶちまけたって、罰は当たりませんよ?」


「そんなもの無いってば」


 ユーメシアは笑い飛ばした。


 第一王女であり次期国王である彼女は、内に秘める事が増えつつあった。


 それを知っているインバイは、襲われた事よりもその方が心配であった。




 明後日、予定通りに国王フリエダクはガルボーデンの森へ向かった。


 ユーメシアもいつも通りに公務へと。


 彼女が訪れる場所には、国民が大挙して押し寄せてくる。


 第一王女を一目見ようと市外から駆け付ける者までいる。


 見物用に設営された場所はそんな人々で溢れ返り、その熱気を彼女も喜んで受け止めていた。


 ところが、その日は違っていた。


 見物用の場所は六割ほどしか埋まっていなかったのだ。


 隙間が目立つ。


 これには主催者の方が顔を青くしていた。


「こ、告知が十分では無かったかも知れません…!」


「気になさらないで。こういう事だってあります。皆も仕事で忙しいとか、色々あるはずですから」


 実際ユーメシアは気にしていなかった。


 たまにはこんな時もあるのは事実だからだ。


 だが、これは今回だけではなかった。


 次の公務でも、またその次でも、国民の姿が減っていた。


 半分を切り、三割を切ると、会場はガラガラという印象を与えた。


 当然、盛り上がりに欠けていた。


 尚且つ、ユーメシアが目の前にいるというのに、途中で退席して帰ってしまう者までぽつぽつと現れた。


 そんな者たちを無理矢理引き留める訳にもいかず、最後まで残っている者はとうとう二割程になってしまった。


 それが何日も続くと、第一王女の求心力の低下を囁く声もこそこそと。




 諜報員のキューボがおかしな噂を耳にしたのは、それからさらに数日経ってからであった。


 レジョメコウ城の廊下で、侍女インバイからこっそりと聞かされたのだ。


「“マクミン姫が次期国王″だと⁈」


 家庭を持ち、後継ぎまでその身に宿しているマクミンこそが次の国王に選ばれるのではないか。


 そんな噂が首都ジョゼイタを猛烈な勢いで拡散されているのだとか。


「そんなデマが流れているだなんて、全く知らなかった」


「“噂集め″ならマクミン様の方が諜報部より何枚も上手だからねえ」


 マクミンがいたらあっという間にその情報も入手していただろうにと、キューボはからかわれた。


「最近ユーメシア様の公務に訪れる見物客が激減しているのは、それが原因なのか?」


「さあねえ、それだけとは限らないんじゃないかしら。告知が上手くいってないとか、姫様の言う通りに皆が忙しいとか」


「これは本腰を入れて調べねばならんな」


 キューボはインバイに顔を寄せ、囁くようにこう言った。


「もしもこれに奴が絡んでいるのであれば、お前さんが聞いたのも空耳ではなかったという事になるな」


「信じてなかったのかい、失礼な男だね。まあいい。さあ、時間がないかも知れないんだよ、早急に動きな」




 ユーメシアの元に人々がごった返す、それが遠い昔のように、人の集まりは悪い日が更に何日も続いた。


 例の噂はともかく、この現実に対しては本城でも重く見ていた。


 ユーメシアを公務から外しても良いのではないかという意見が出ていた。


 もちろん彼女のいない所で。


「せっかくユーメシア様がいらっしゃっているというのに人が集まらないでは、ユーメシア様も面白くないだろう」


「主催者側もがっかりだろうしな」


「どうなのだ、ユーメシア様は落ち込んでおられるのではないか?」


「いえ、ユーメシア様からはどのような愚痴もこぼれていないようですが…」


 ただ、変化はあった。


 ユーメシアが公務の会場を訪れるのが、少しずつ遅れるようになっていたのだ。


 流石に突然休んだりはしないが、彼女が気乗りしていないのは側から見ても明らかであった。

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