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第5章「テネリミの弟子」【7】

「ヌウラにはまず、力の制御を覚えてもらわなくちゃと思ってるの」


 呪術師としての力を持つ者としては、至極真っ当な希望であった。


 このままヌウラを野放しにしておいたら、彼女が力を解放する度に、気を失ってしまう。


 もしかしたら、更に酷い状況になるかもしれないとテネリミは言う。


 だから“呪術師”という職業でなくとも、その力を持つ者は全て含まれる。


「しかし、そんな事が出来るのか?」


 リャガから聞いた話では、呪術師の力を通さない盾をコルス兵は持っていたが、その盾を破壊したのはヌウラだという。


「やりましょう、私も手伝います」


 クワンが手を挙げた。


「私も。これはやらなくちゃいけない事だわ」


 ルジナも同意してくれた。


「嬉しいわ」


 テネリミはあらためて二人と目を合わせた。


「あなたたちが部屋から出てきてくれて。ちゃんと自分の意思で立ち直ろうとしているのよね」


「意気込みだけはあるのだけれど、果たしてどうかしら」


「大いに結構だわ。それがなくちゃ始まらないもの」


 三人のやり取りを見ていたビルトモスは、ようやく彼女らの気持ちが通い合ったように感じていた。


「ガーディエフ様。いかがでしょう、ヌウラの事を私たちに任せていただけませんか?」


「私に反対する理由はないよ。ヌウラが“大人の呪術師”になれるよう、指導をしてやってくれ。必要ならば手を貸そう」


 ガーディエフが快諾したとあれば、ビルトモスもこの目論見が成功するよう、建設的な意見を出さなければならない。


「第三者の意見を取り入れるのも大事だと思うがね。例えば、リャガなんて適任じゃないか?」




 ひとしきりビルトモスから説明を受けたリャガは、二つ返事で引き受けた。


 リャガはあくまで冷静だったと、ツヴォネディもエギロダの要塞での彼の働きを評価していた。


 呪術師ではないが呪術師の力は持っているシャラディーとの接触もあり、リャガは呪術師の力というものを受け入れる側だという事も重要だった。


 彼に同行していたケベスなどは、冷静さに欠ける部分もあり、更には呪術師への偏見がないとは言い切れないのだ。


「私でよければ、いくらでも協力いたします」


 後はミジャルである。


「彼はヌウラと一番付き合いが長いし、彼女もミジャルを信頼しているから、協力してもらわないと困るわね」


 テネリミはそう漏らす。


 そんな訳で、ガーディエフも一肌脱ぐ事になった。




 翌日、ミジャルはガーディエフとビルトモスに挟まれ、長い時間の説得を続けられた。


 テネリミからその話を聞いた時は、正直あまり乗り気ではなかったのだが、こうなると断るだけの理由を見失ってしまう。


「分かりました。私からもヌウラに話してみます」


 そう、これで周囲は固まった。


 残るはヌウラ本人の意思だけなのだ。




 それから数日後、ヌウラの部屋でミジャルは二人で話す事にした。


 もちろん、ヌウラが呪術師になるかどうかの意思確認である。


 とはいえ、


「やらない」


 なんて答えでは困る。


 かといって、強制する訳にもいかない。


 非常に難しいのだが、とにかくミジャルはヌウラと対面する。




「やってもいいよ」


 あっけないものだった。


 構えていたミジャルが拍子抜けで言葉を失うほどに。


 彼女自身、この数日でずっと考えていたようなのだ。


「私が呪術師になったら、ソエレを助けに行けると思ったの」


 まだヌウラには、彼女自身の強大な力について話していないのだ。


 呪術師になれる力はあるはずだ程度の希望的観測を述べただけ。


「お母さんみたいに誰からも信頼されるようになるには時間がかかるかもしれないけど、いつかなってみたい」


 ソエレを助けたいという思い。


「お母さんは賛成してくれるかどうか分からないけど、お父さんはきっと応援してくれるわ」


 亡くなった両親への思い。


 彼女も生まれてから十四、五年経っているのだから、自分で考えて決める事が出来る。


「いいじゃないか。ヌウラの願いが叶うように、俺も応援するよ」


 結局は何も出来なかったミジャルではあるが、なんだかホッとした。


「ありがとう。ミジャルだったから、こんな風に話せたのかも」


 うん、大人になった。

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