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第5章「テネリミの弟子」【6】

 クワンとルジナは、まずビルトモスの部屋を訪ねた。


 これまでの事をガーディエフに話したいのでついてきて欲しいと彼女たちから告げられ、良い事だとビルトモスは快諾した。


 すぐに三人でガーディエフの部屋へ向かった。


「ずいぶんとやつれておるが、二人とも大丈夫なのか?」


 ようやく自室から外へ出てきたものの、

とても元気そうには思われなかった。


「ご心配をおかけしましたが、閉じこもっているだけでは何も始まらないと二人で話し合って、ガーディエフ様の元へ参りました」


「二人はソエレの件も受け止めて、それでも一歩踏み出そうと決めたようです。話を聞いてやってはいただけませんか」


「もちろんやぶさかではない。クワン、ルジナ、時間がかかっても良いから、思っている事を全て吐き出しなさい」




 それから彼女たちは、始めに自分たちの救出の為に兵を出してくれた事に礼を述べた。


 そして順を追って話し始める。


 タラテラの町から戻る途中で同行の兵を全て殺され、連行された事。


 エギロダの要塞では、ソエレも含めた三人が同じ部屋で監禁された事。


 そこで三人で挫けぬように手を取り合って、色々と話し合った事。


 一度は自分たちだけの力で脱出を試みた事。


 しかしそれが失敗に終わり、絶望感に襲われた事。


 その後、リャガたちが助けに来てくれていると知り、再び希望を見出せた事。


「そんな中、私たちは要塞から移動させられる事になったと聞き、どうなってしまうのだろうと不安に駆られました」


 そしてとうとう馬に乗せられ、要塞を出てしばらくの所でクワンもルジナも気を失ったのだとか。


 おそらくソエレもそうだっただろうと。




 彼らはガーディエフの部屋へ場所を移した。


「それで、お前たちはどうしたいのだ?」


「もう一度、ソエレに会いたいと思っています」


 クワンが答えた。


「今の私たちは、彼女なしではいられません」


 ルジナも。


 ふん、とビルトモスは鼻から息を吐いた。


「残念だが、その望みを叶えてやる事は我々には出来んぞ」


「分かっています」


「一国の本城に、兵五百で乗り込むのは自殺も同然。いやむしろ、こちらの方が襲われる可能性が大きい」


 三人のうち二人だけでも救い出せたのは大成功だと言わざるを得ない、ビルトモスはそう語った。


「もちろんです。これ以上皆さんを目的と違う事で危険に晒す訳にはいきません」


「そう言われると辛いよのう、ビルトモス?」


 ガーディエフは笑っていた。


 元より、バドニア国の呪術師だった三人を引き抜いたのは、この軍だからである。


「そうですな、無責任だと言えなくもありません」


 とはいえ、やはりコルス本城へ突撃などとは考えられない。


「何も、今すぐって話ではないのでしょう?」


 部屋に入ってきたのはテネリミである。




「おい、急に…」


「私もガーディエフ様にお話があったからここまで来たのよ。そしたら、久しぶりにクワンとルジナの声が聞こえてきて、嬉しくて突撃しちゃった」


「まあよい、こうして皆で集まるのも久しぶりだからな」


 テネリミの無礼をガーディエフは軽く流した。


「テネリミ、私たちは…」


 すると、テネリミは急に立ち止まってクワンとルジナに頭を下げて、皆を驚かせた。


「申し訳なかったわ。あなたたちをここまで連れてきたのは、全て私の考えだったのに、肝心な時に私は無力だった。ソエレを戻せなかったのは、私の慢心が原因よ」


 テネリミが謝っている。


 ビルトモスは目を見張った。


「だからソエレに関しては、私も放っておけないから、考えている事はあるの」


 ルジナも戸惑っている。


「だけど、今すぐは無理なの。準備を整えなくちゃ、話にならないから」


「一体、何をするつもりなのか?」


 ガーディエフの問いに、テネリミは笑顔になっていた。


「ヌウラを呪術師にします」


 というか、力の制御や使い方を覚えさせるつもりだと彼女は答えた。


「出来るのか、お前たちをいとも容易く気絶させるような力をヌウラは持っているのだぞ?」


「これは、やらなければならない事なんです。私たち自らを守る為にも」


 既にヌウラと話をしてきたとテネリミは明かした。

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