蒼穹と鷲
僕の名前は小野啓介。通信制のA高校に通っている平凡な高校1年生。
「だったはずだった」……二か月前の四月までは。
僕は以前までこれといった目標がなくて、成績は平凡、運動神経も人並み程度。
僕は人よりとても飽き性で、小学生の頃からピアノ教室や絵画教室に通っていたが、どれも1年も続かずに、辞めていた。
一番早い時は一ヶ月もしない内に、辞めていた。
今でも母が時間寸前に、申し訳なさそうに教室に連絡を入れていたのを覚えている。
僕が習い事の時間になると、いつも泣き喚いて行きたくないとわがままを言っていたからだ。
中2の秋頃に、親にあるバンドのライブに連れて行かれた。
正直あまり音楽は知らなかったので、漠然と聴いていたが、メンバーがみんな楽しそうにライブをしていたのが、強烈に印象に残った。
会場が観客の熱気で包まれる中、汗をかきながらも、演奏しているのを見て彼らが全力で楽しんでやっていることが僕に伝わってきた。
学校では部活や習い事を自分から楽しそうにやっている人はあまりいなかったので、自分から楽しんでやっている様が新鮮だった。
今思えばそれが自分の中で、夢を追う人を羨ましく思うようになったきっかけだったのかもしれない。
その頃から彼らの背中がとても輝いて見えるようになった。
同時に(ああ、自分はあんな風にはなれないな…)なんて達観が心の中に生まれた。
とにかく僕は何かに熱中したかった。そうすれば心に棲みつくこの空虚感を満たせると思ったから。
——そんな僕に、転機が訪れた。
第一話
2025/10/13 16:40