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畑仕事が一段落して、ベルベルトさんを自宅に招き入れた後2人で腰をかけて少し世間話する事にした。
この一週間冷戦状態はつづいていることだったり彼がしばらくお休みを頂いたとか様々な話をした。
「いやーでもベルベルトさんの怪我良くなってよかったですよ。正直自作のポーションで治るか不安の重症でしたもん。」
「あぁ、その事なんだがお前のポーションはあまり人前に出さない方がいい」
「…もうしかして、後遺症とか残りました!?すみません、今、新しい薬を」
「その逆で、全く傷が残らないんだ。何も無かったかのように。ポーションとは本来治癒力を高め直すだけであって傷跡まで治す代物じゃないのは分かっている。そのような高レベルのポーションみたことがない。だからまずいんだ」
ベルベルトさんの綺麗な体に傷が残らなくてよかった、と安堵したのと共に疑問が浮かぶ。
「…それの何がまずいんですか?」
「前に王国と帝国が一触即発だっていっただろ、そんなポーションだしてみろ。戦争に悪用されるぞ」
「ぁ、」
助言をくれるベルベルトさんは苦虫を噛み潰したようだった。全く考えてなかったが今までとは違って戦争が起きるかもしれないってことは、回復薬の需要は高まることも安易に予想出来る。造り手はどうなるかはわからないが、遠い国では強制労働させる為に1箇所に集められて労働させられてるとも聞くし、そんな中このポーションを出すのは、危険、なのかもしれない。
「今まで森林付近の街で高位ポーションの話は出ていたが、まさかその造り手がお前だとはな、逆にあの晩お前に出会ってなかったら俺の命は無かったのかもな」
「…あんまり自覚がなかったんですが、昔から錬金学だけは祖母に褒められていて、祖母が泉下の客になっても既存のレシピを改良する研究したんでそれなりにはいい物を作ってたんですが、それ程までとは、うぅ気をつけます」
「あぁ、そうした方がいいだろう。すまない、お節介だっただろうか」
「あ!いえ!凄く助かります、」
そうか、と微笑んだベルベルトさんはもう温くなってるだろう紅茶を口に含んでる。窓からの自然光の相乗効果のせいなのか心做しか輝いて見える。ーうっ眩しすぎる!(顔が)
紅茶を片付けにベルベルトさんは長い足でスタスタと台所に向かっていく。細やかな気遣いできるし、モテそうだなベルベルトさん。
「おい、」
「…この、山積みの、皿はなんだ?」
ギギ…ギと効果音がつきそうな振り向き方をした彼の目は…死んでた。
あ、そっか、そーいえば後でやろうと思ってたな。最近、研究に没頭してたし後回しにしがちだったな、でもなんであんなあの人キレてるんだ?
「後回しにしてて、すみません適当なとこ置いといてください!」
「まて、まさか、…この状態で何日目なんだ」
「んーベルベルトさんがいた時にやったので1週間は洗ってないですねーアハハ」
「…壊滅的すぎる」
「え?」
「この前から思ってたんだが危機感やら生活能力が壊滅ですぎるだろ、!そもそも女の子なんだから一人で森で暮らしてるのが大問題だし、寒い時期なのに露出の高い服を着たり、なんなら家に平気で男を入れる!何かあったらどうするんだ。」
ベルベルトさんの眉間の彫りが深くなる。気の毒になりそうなぐらいげっそりしてる。でも、ここまで怒られる筋合いなんてないし私も反論したくなってくる。
「だいたいー君は、」
「でも、ベルベルトさんはそんな事しないじゃないですか」
「は?2日しかあってないんだぞ」
「いや、ベルベルトさん、優しいし確かに短い付き合いですけどそんな事しない人だなって思ってて、へへ」
「ッ、」
そのままベルベルトさんはそっぽを向いて動かなくなってしまった。この子はアホなのか、なんて呟きが聞こえてくる。褒めたと思うのに失礼な。