2 ハリス老婆視点
「アンタ、捨て子なのかい」
険しい顔で老婆は尋ねた。目の前にいるこの子は首を横に振ったが、老婆は分かっていた。この子はまだ幼い。母親が目を離してはいけない時期だろう。そんな年齢の子が深夜死の森と呼ばれる中間地区に泣きながらいるならこうとしか考えられないだろう。大方、迎えに来るからなんて言われて捨てられたのだろうそれならば母親に捨てられた感覚が無くてもおかしくない。
先程まで泣いてた幼子は泣き収まったのか赤い鼻を擦りながら、温めたチョコミルクを飲んでいる。
さて、どうしたものか。
このまま人助けをしてやる義務は無い。なんせ死の森。人の行方不明なんて日常茶飯、人権や法律などこの森には存在しない。が、見捨てるには幼すぎる明日にでもこのこの死体をみたとしたら、虫の居所が悪い。
はぁ、と本日二度目のため息をつく。
まさかこんな事になるとは、思いもしていなかった。人と最小限の関わりしか持たなかった老婆にとってこの出会いは奇怪であろう。老婆は周りから見るとだいぶ変わっているのだろう。本人も自覚があったし、訂正なんてせずともそれで良かった。街には半月に1回ポーションを売りに行くだけだった。そんな自分が目の前でちびちびと飲み物を飲んでるガキを、だなんて、ねぇ。
「アンタ、親が迎えくるまでここに居な」
「え…でも…そんな(地獄か天国の)迎えって時間かかるんですか?」
「あぁ…かかるさ」
「そうなんですね、わかりました。ありがとうございます」
眩しい笑顔で言われ心がチクリとした。アンタの母親は、迎えに来ない方が高いだろう。多少の申し訳なさを感じながらも、私も人生が長くない、この子がなるべく一人で生きられるように自分の知恵や知識を教えてあげなければと心に決めたのであった。