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しばしの休息

「……今日もいい天気だね」

 太陽が昇り始めた空は白っぽくなり、さえぎる雲も少ない為とても眩しい。

「お日様の光で消滅しそう……。めがー、めがー」

「目が痛いなら、家の中で少し休んだらどうだ? 出発までもう少し時間があるだろ」

「あ、本当に目が痛いわけじゃなくて、これは異世界のお約束なのよ」

 お日様で消滅というのはアンデッドみたいに死にかけているという言葉なのだろうか? 異世界のお約束はよくわからないなぁと思いつつ、ルナが目を押さえている姿を見る。

 徹夜で魔法が使えるようになったルナのテンションは妙に高い。ハイになっているのかもしれないが、こういう時は大抵体は疲れているものだ。 


「でも少しだけ仮眠をとっておいた方がいいかも。魔物退治で判断ミスするわけにはいかないし、魔力の回復もしないとだから」

 いくら癒しの魔法を使い続けても、やはり人間の体は休息が必要ということだろう。本来はこんなに頻回に癒しの魔法を使うことはない。

「寝ると魔力は回復するの?」

「うーん。寝れば回復するというより、寝た方が回復しやすいぐらいかな」

 寝てなくても魔力は体内で作られていく。でも寝て起きると魔力枯渇が改善しているのだから、やはり寝た方が回復はしやすい気がする。もしくは寝てた方が必要以上の魔力を使わずに済むからかもしれない。

「でも魔力だけでなく、体力も温存しておかないといくら癒しの魔法を何度もかけてもルナは辛くなると思うよ」

「確かに徹夜の所為で、戦闘中に貧血起こしてたら洒落にならないものね」

 私たちは癒しの魔法の所為で妙に調子のいい体で、朝日ですでに明るくなった道を帰る。まだ早朝なので外に人は出ていなかったが、早い人はそろそろ起床を始めるだろう。

 

「えっと、ルナは私のベッドで寝てもらうとして、セオは――」

「俺は診療所で仮眠をとってくるわ」

「えっ。でも、診療所だとゆっくり寝られないかもしれないわよ?」

 今診療所にいるのは誰か分からないが、祖父の朝は早い。ごそごそと薬の補充作業などしている可能性がある。

「神に誓って、同じ部屋で泊まっても何もする気はないけれど、クラーク先生の信頼を得るためにはそのあたりきっちりした方がいいしな」

 何もしない……じいちゃんの信頼……。

 その理由に思い当たって、私は慌てた。

「いや、でもセオは変なことしないでしょ?」

「しないけど、周りからの見え方は違う。差し迫った危険があって、命を守るためなら一緒の部屋でも寝るけど、そうでないなら俺は周りからもちゃんと祝福されるようにしたいし」

 周りからも祝福という言葉に頭から湯気が出そうだ。恥ずかしくて仕方がない。


「ただ、ルナ様のことは頼むな。本当は寝ずの番をした方がいいんだろうけど、これまでの移動分の疲れを考えると、少し仮眠をとっておきたい」

「うん。了解。店の中には魔物が入り込みにくい仕組みになっているから大丈夫よ」

 セオと別れ、私は自分の部屋にルナを案内する。

「ルナさんは私のベッドを使って」

「えっ。私がベッドで寝るとアメリアちゃんはどこで寝るの?」

「床で寝るつもりだけど? 人がいると眠れないなら、私は一階のソファーで仮眠をとるけど」

「えっ。宿主の場所をとる気はないわよ。私こそ床とかソファーで十分よ」

 慌てた様子のルナに私はくすりと笑う。

 ルナは聖女らしくない聖女だなと思う。普通の聖女なら勧められたベッドを断ることなんてまずない。聖女にとっては与えられて当たり前なのだ。


「私の方が丈夫だし、今日の浄化の主役はルナさんなんだからそこを使って。床だと気になるなら、一階で寝るわ。よっぽどこの家で魔物に襲われることはないと思うけど、怖いとかあればルナが寝るまではここにいるけどどうする?」

「図太いから寝れないとかはないけど……」

「なら寝てくれる? 私はまだアルフィーとやり取りしないとだから」

 深夜にアルフィーから届いた質問に対する答えと素材を送っておいたけれど、どうなっているだろう。魔道具ができたかどうかで、今日の動きが変わる。


「アメリアちゃんこそ、寝ないと駄目よ。それに魔力だって、アメリアちゃんも練習でかなり使ったんじゃないの?」

「私は魔力過多だから、そのあたりは大丈夫だよ」

 昔枯渇しかけた時は、特殊なことをしようとした時だけだ。普通に訓練するぐらいならよっぽど枯渇はしない。

「そういえば、魔力量って増やしたりできるものなの?」

「生まれた時から変わらないと言われているけど、実際は成長分だけ若干の増加があると思うわ。でも極端に増えるわけではないの。あと、生まれ持った属性も増減できないわ」

「そういうのって、遺伝なの?」

「いでん?」

「えっと。うーん。親の属性と子供は同じだったりする?」

 聞きなれない言葉を聞き返すと、ルナは別の言葉に言い直した。


「その場合が多いわね。でも聖女に関してはそうとはいえないから……」

 魔力過多は受け継ぎやすいけれど、属性に関しては分からない部分も多い。でも私の父が魔力過多、属性過多なのを私は受け継いでいる。

「聖女だけ別なの?」

「例えば男性で、光属性だけを持っている人っていないの。光属性を単一で持っているのは女性だけ。だから聖女って呼ばれるのよ。男性で光属性を持つ人は、一番多い形が闇属性との二つを持つパターンね。例えばアルフィーみたいな……」

 ふとアルフィーの親は誰だろうと思って嫌な想像が浮かんだ。

 孤児として育ったアルフィーだけれど、もしかして聖女が産んだ子供って可能性はないよね? ぞぞぞぞっと背筋冷えて首を振った。性別が女でなかったから捨てたなんてあってほしくない。

 

「とにかく、親と似る可能性は高いけれど絶対ではないという感じかしら。聖女が生まれたこともない普通の一般家庭からポンと生まれたりもするし。だから出生後の検査がある」

 この法則が分かったら、聖女の数をもっと増やせるような動きがありそうだ。ありそうだけど、それはまるで家畜のようではないかとチラッと不敬な考えがうかんでしまう。

「そういうものなのね」

「ええ。私と父は魔力量と属性が過多だけど、祖父はそこまでではないし。多い方ではあるけど」

 魔術師になるなら三種は属性が欲しいところなのだから、魔術師になる人間は過多と言える。普通の人は一つか二つだ。

「へぇ」

「とりあえず、色々知りたいだろうけど、今はここまでにしよう。じゃあ、ゆっくり休んで。あっ。部屋にある魔道具は危ないものもあるから、触らないでね」

 ここに居たらいつまでもおしゃべりしてしまいそうだ。

 私はささっと部屋を使う上での注意を話すと部屋を出た。

 聖女の魔法のおかげか疲れは感じていないけれど、戦闘中に反動がきたら怖い。


 階段を降り、一階の仕事場に置かれた魔法陣を確認すれば、ごっちゃりと色々届いていた。

「うわ。本当に完成させてくれたんだ」

 布袋の中には箱型のものがたくさん入っている。これらが多分音を拾って拡張してくれる魔道具だろう。

 どう使うのだろう?

 私は一緒に届いている手紙の封を切った。

「……そっか。そうなっちゃったのか」

 アルフィーからの手紙は使い方と、今後は魔法を使わずに遠くに音を送る魔道具を作りあげるという、錬金術師からの声明が入っていた。どうやら時間がなさ過ぎて研究ができず、魔法で補助をしなければ使えないというのがすごく悔しいらしい。

 異界のホウソウという技術が知りたいから、今度時間がある時に教えてほしいのと、風の属性を持っていないからそちら系の魔法も色々教えてほしいと書かれている。後半は私でできることなら相談に乗れるけど、前半はルナにお願いするしかないだろう。


 実際に使えるかは、後で試してみよう。こんな早朝に大きな音を出したら近所迷惑だ。

「でも、本当にできたんだ」

 昨日の夜に頼んだから、昨日の今日では無理だともどこかで思っていた。錬金術はそんな簡単なものではない。

 でもできた。

 できたというよりは、できるようにしてくれたのだ。


「後は私が魔法を成功させるだけ……」

 ルナの光の壁もできるようになったし、残る問題は私だけだ。

 そして……そこをクリアしたら、魔物化した人の保護は絶対やることになる。

 どれだけの人がいるのか、全く想像できない。すでに禍が発生してから四日。いない可能性もある。

 でもいた場合は……。

 胃がきりっと痛むのを感じながら、私はソファーに横になる。

 やると決めて、皆を巻き込んだのだから、弱音を吐いている場合ではない。私は不安をすべて飲み込み、少しでも休むために強く目を閉じた。

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