部活見学
放課後
薫ちゃんと部活見学に行くことになったので一応はるちゃんには報告しておいた。
HRが終わり担任の先生が教室から出て行くのと同時に薫ちゃんが私の席まで近づいてくる。急いで荷物をまとめ立ち上がると
「真珠紅!最初に何部に行く?」
「まずは弓道部かな。そのあと剣道部と空手部に行こう。」
「オッケー、じゃあ弓道場だね。たしか中等部校舎の裏側に道場が集まってたよね?」
薫ちゃんが部活動紹介の冊子を取り出して学園内の配置図を確認する。弓道部や剣道部などが使う道場は中等部と高等部の裏にある武道館に集中しているようだ。2階建ての建物には1階を柔道部と空手部、2階を剣道部、そして1階の外に面した位置に弓道場がある。なので今日は武道館に向かえば目的の部活が全て見学できることになるのだ。
教室を出て昇降口に行くと、これから部活動見学に行くであろう1年生が沢山いた。みんな何部に行くのかなとか、友達同士で一緒に入部するのかなとか、そんなことを考えながら靴を履き替えた。
武道館までの道は学園内といっても少し距離があった。学内マップを見た時から少し予想はついてたんだけどね。
まず中等部と高等部の間を通って校舎の裏側まで行く。するとそこには立派な裏庭があって、たくさんの花壇がある。季節の花々が等間隔で植えられていてとても美しい。今は春なのでパンジーやマリーゴールド、チューリップなどが咲き誇っていた。
花壇を抜けると今度はレンガ舗装された小道が見えてきた。両サイドにはまだギュッと閉じた蕾がついた薔薇らしき植物が生い茂っている。奥の方を見ると薔薇のツルが絡まった大きなアーチも見えた。
学内なのにすごい・・・。西洋の館のお庭に迷い込んだみたい。
小さい頃に読んだ絵本の挿絵で見た薔薇のお庭を思い出していると、隣で薫ちゃんが呟いた。
「この道で合ってるよね?えっ、てかここ学園内だよね?どっかの屋敷に迷い込んだ!?」
私と同じことを考えていたようで少し可笑しくなる。フフっと笑いながら薫ちゃんに返事をした。
「多分合ってると思うよ。さっき花壇の所で武道館への矢印の看板があったから。」
そう言ったけれど、一応2人で学内マップをもう一度確認した。やはりこの道で合っているようだ。気を取り直して薔薇の小道を並んで進んだ。アーチをくぐり抜けると、今度は白い東屋とベンチがあった。
す、すごい。本当にどこかのお屋敷みたい・・・。
薫ちゃんは東屋を見上げながら口をポカンと開けている。ついつい立ち止まって東屋を見学してしまいハッとした。
「か、薫ちゃん!とりあえず武道館に行かないと部活見学の時間が終わっちゃうよ!」
「あ、ごめん。非現実的な景色に意識を持っていかれてたよ。たしかこの薔薇園を抜けて少し歩くと武道館だったよね?」
東屋の先に視線を向けると、先程通ったアーチと同じものが建っていた。きっとそこを通れば武道館にたどり着くと思い、2人で少しだけ早歩きして2つ目のアーチをくぐり抜ける。アーチの先には薔薇の小道と色とりどりの花が植えられた花壇が広がっていた。まるで今通ってきた道を戻っているような感覚に辺りをキョロキョロしてしまう。
薫ちゃんも同じことを思っているようだ。首を傾げたり、後ろを振り向いたりしながら歩いている。
「あっ!あったよ、武道館!!」
やっと辿り着いた目的地を見て、2人で顔を見合わせた。
「まずは弓道部だよね。えっと・・・この廊下をずっと真っ直ぐ進んだ突き当たりに弓道場があるみたいだよ。真珠紅、行こう!」
館内の案内図を確認してくれた薫ちゃんに連れられて廊下を進むと
バン!!ドタン!
左側の道場の方からすごく大きな音が響いてきた。扉が開いていたのでそっと中を覗くと、柔道部が受け身の練習をしていた。
「真珠紅、こっち来て!こっち側の道場で空手部が練習してるよ。先に少し見て行こう。」
薫ちゃんが反対側の扉を覗きながら手招きする。隣まで行き中を確認すると・・・
大きな・・とても大きな男の人たちが組手をしていた。
1人が相手の顔面めがけて突きを繰り出すと、もう一方はそれを片手で払い、腰を捻って上段回し蹴りを披露する。
ひぁっっ!
自分に向けて技が出されているわけではないのに、思わず変な声がでてしまった。回し蹴りは相手の顔側面ギリギリの所で止まり、同時に「一本!」と審判の声があがる。
あまりの迫力に心臓がバクバクしている気がする・・。
道場内を見渡すと、壁際に新入生の見学者たちが一列に並んで組手の様子を見ていた。そこでふとある事に気がついた。いや、さっきから気づいていた。
全員男子だ・・・・・・・
練習をしている先輩たちも男子。見学をしている同級生たちも男子。みんな男子!あっちもこっちも男子!男子!男子!
女子が一人もいない!!?
ムリムリムリ
やっとあーくんとはるちゃん以外に話せる友達ができたところなのに・・いきなり男子だらけの部活とか・・・
怖い怖い怖い。怖すぎる!!!
自分のヘタレ加減に嫌気がさしながらも、どうしてもこの中に飛び込む勇気が持てなかった。
少し涙目になりながら薫ちゃんの方をむいて顔をフルフルと振った。薫ちゃんは察してくれたようで苦笑いしながら頬を指先で掻く。
「次、行こっか?」
その言葉に先程横に振っていた顔を今度は思い切り縦に振った。




