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猜疑心

気になっていたことを、思い切って2人に聞いてみようと思った。


あーくんとはるちゃんは・・・・誰なの?

ルーが私を守ってくれると言ったローレンスとベルデなの?

もしそうだとしたら・・・

今まで一緒にいて、どうして何も言ってくれなかったの?





私は・・・・・・・・誰なの?






「・・・あの、2人に聞きたいことがあるの。今、聞いてもいいかな?」


私の言葉に真っ直ぐ視線を向けてきたあーくんは、私が話し始めるよりも先に問いかけてきた。


「俺も聞きたいことがある。昨日、真珠紅の身体から青い光が溢れてきたように見えた。あれは・・・あの力はいつから使えるようになったんだ?」


青い・・・光?あぁ、イヤリングから出てきた盾のことだね。いつからって、そんなの昨日初めて使ったに決まってる。あんなに怖い目にあったのだって昨日が初めて。あーくんだってそんなこと分かってるでしょ?


「昨日が初めてだよ。」


質問されたからとりあえず簡潔に答えた。早く私も答えを知りたい。それなのに、またあーくんから質問してきた。


「どうやってあの力を使った?誰かに教えてもらったのか?」


・・・正直、答えるのが面倒だと思った。私の方が聞きたいこといっぱいあるのに。

私が黙っているのを見て、あーくんがもう一度問う。


「真珠紅?・・・説明できないのか?」


説明は難しいけど、できないわけじゃない。そうじゃなくて、先に私の質問に答えてほしいんだ。本当なら私から質問しなくても2人の方から私に伝えることがあるんじゃないの?だって、ルーがそう言っていた。私の守り役であるローレンスとベルデなら必ず自分達から伝えるはずだって。

王国のこととか、魔法のこと、敵のこととか・・・、スカーレットについて。私の全く知らない事を教えてくれるのが2人の役目なんじゃないの!?



・・・・・・・・・・・・・・ぁ。



「真珠紅?」


私が返事をしないことに焦れたのか、あーくんが何度も私の名前を呼ぶ。それでも私は返事をしない。


・・・いや、できないのだ。

ある一つの考えが浮かんだから。

絶対にそうだとは言い切れないけれど、違うとも言えない。まさか、そんな、と頭の中でグルグル考えている間に唇が重くなってきて返事が出来ないでいた。




2人はローレンスとベルデではないかもしれない。




ルーが2人を警戒しろって言ってた。玖遠先輩にも使い魔の影が見えていた。そして、何よりあーくんとはるちゃんは私に何も話してくれない。私に聞いてくるばかりだ。


もしも2人が守り役じゃなかったら?


どうして私の紅い瞳が見えるの?どうしてあちらの世界のことを知っているの?どうして使い魔の影が見えるの?魔法が見えるの?


あーくんは、はるちゃんは・・・・・・敵なの?


小さいときからずっと一緒にいて、いつも助けてくれた幼馴染み。今までは2人のことを一度も疑ったことは無かった。でも今は・・・・2人に対して小さな猜疑心が生まれてしまっていた。


「・・・・・それって今話さなくちゃいけない?」


あーくんの質問に対して返した言葉はそれだった。今はこれ以上2人と話さないほうがいいと思ったから。昨日の出来事があまりにも衝撃的で私自身もついていけていない。しかも、大切な人たちに対して疑問が出来てしまった。このまま話していたら、きっと爆発してしまう。


もう一度ルーと話そう。そして情報をしっかり整理しなくちゃ。彼は私の疑問にちゃんと答えてくれる。今はまだあーくんとはるちゃんに詳しく話さないほうがいい。・・・もしかしたら、昨日襲ってきた使い魔の仲間かもしれない。


   もう今は誰も信じられない。


心の中でそう呟いた途端、頭がスーっと冷えていく感覚がした。


「真珠紅、どうしたの?体調悪いの?」


質問にきちんと答えず下を向く私を心配してはるちゃんが顔を覗きこんでくる。はるちゃんはいつも優しい。どんな時でも私のことを心配してくれる。

でもダメ。今はそのはるちゃんの優しさにもイライラしてしまう。一度フーっと息を吐き、顔を少しだけ上げて返事をした。


「やっぱり少し疲れているみたい。・・・だから、今日はもう帰ってほしい。」


大丈夫?と私の頬に手を添え心配そうな表情のはるちゃんと目を合わせられずまた下を向いた。

速く、速く帰って。今はこれ以上2人といたくない。

その願いが通じたのか、はるちゃんがゆっくりと立ち上がった。


「兄さん、真珠紅は疲れてるみたいだから今日はもう帰ろう。真珠紅、ゆっくり休んでね。話はまた今度聞くからね。あっ、そういえば遊園地行くの今度の土曜日だよ!それまでに体調戻さないとね!」


はるちゃんが気を遣ってくれているのが分かった。表情はまだ心配そうなのに、その口調は明るく私を元気づけようとしてくれているんだ。・・・ごめんね。せっかく来てくれたのに。


「遥、待て。まだ真珠紅に答えてもらっていない。真珠紅、もう一度聞くよ。どうやってあの力を使ったんだ?」


・・・っ。

せっかくはるちゃんが帰ろうとしてくれてたのに・・。

あーくんは私から何が聞きたいの?


「・・・それは、今は言えないよ。」


だって、あーくんが敵かもしれないから。今は言えなくてもしょうがないでしょ?


「何故言えない?」


あーくんが何も話してくれないからだよ。何も教えてくれないのに私にばかり聞いてくるじゃん。


「・・・言えないの。言いたくない。」

「っ真珠紅!!」




ビクッ!!?





え・・・・、あーくんに・・・怒鳴られた・・?

一瞬何が起きたのか分からなかった。いつも穏やかなあーくんが声を荒げるところを見たことがない。私に、怒ったの?なんで?


「ちょっ!?兄さん!?」


はるちゃんもあーくんが怒鳴ったことに驚き私の前に手を伸ばして壁をつくる。はるちゃんの背中からそっとあーくんを窺うと、普段あまり見たことがないような険しい表情をしていた。

私が聞かれたことに答えないから怒ってるんだ。どうしてそんなに必死に聞いてくるの?私はまだ一つも質問できてないよ。私が先に聞きたいことがあるって言ったのに。

それに、昨日の魔法について聞き出してどうするの?・・・まさか、誰かに・・報告・・するとかじゃないよね・・・。


猜疑心が不安となって押し寄せてくる。今までずっと信頼していた人なのに・・・。1つ疑問が浮かぶとそこから派生してどんどん広がってくるようだ。


あーくんが守り役じゃないなら、はるちゃんも違う。じゃあ、本当の守り役は玖遠先輩?先輩とは最近出会ったばかりでまだそんなに話したことはない。もしかしたら先輩がローレンスかベルデで、私に王国のことを話す機会を窺っているかもしれない。

それならなおさら2人には詳しいことを話さない方がいい。ルーが言っていたとおり警戒して距離を置くべきだ。


「・・・あーくんには・・・・言わない。もう、帰って。もう・・・今は話したくない。」

「・・・っ。」


あーくんの険しくて怖い表情が、私の言葉で徐々に悲しそうな顔に変わったのが分かった。でも、もう自分を止められなくて・・・・


「あーくんは自分が知りたいことばかり聞いてきて、私の話は1つも聞いてくれないじゃない!今やっと分かった!昔から心配性で過保護だと思ってたけど、それって優しさでやってるんじゃないよね?本当は私を心配してるんじゃなくて監視してるんでしょっ!?束縛されているみたいでずっと息苦しかった!」


うそ。そんなこと一度も思ったことなんてない。でも、口から勝手に言葉が出てきちゃうの。本当はこんなこと言いたくなかった。抑えられない。やだっ!助けて・・。


「今だってそうじゃない。私のことを心配してるんだったらまず私の話を聞いてよ!私だって分からないことばかりで・・・・怖くて・・不安で・・・・もうどうしたらいいか分からないんだからっ!!!」


速く帰って!この部屋から・・・私の前から離れて!

そうじゃなきゃ・・・もっと2人を傷つけてしまう。速く・・・。


「し・・・しず・・く。・・・・・・すまない。そうじゃないんだ・・・。俺は・・・・」

「もういいからっ!帰って!!2人とも出てってよっ!!」


あーくんが何か言おうとしていたけれど、もうそれどころではない。自分がぶつけてしまった酷い言葉に後悔し、恥ずかしく、このまま消えてしまいたかった・・。


あぁ、私はいつも自分のことばかり。我が儘で、意気地が無くて、いつも人任せ。頑張れば、努力すれば交われると思ってたのに・・・人に頼ってばかりで全然成長していない。ダメなんだ。きっと、私はこのまま交われない。




少しの沈黙が落ちる。

最初に口を開いたのははるちゃんだった。


「真珠紅、疲れているのに突然来ちゃってごめんね。もう俺たちは帰るから。」

「・・・・。」


何も答えられずに黙り込んでしまった。それでもはるちゃんは気にする様子もなく言葉を続ける。


「あ、さっきも言った通り、土曜日の遊園地は絶対行くからちゃんと予定空けといてよね!」


兄さん行くよと言いながらあーくんの腕を引く様子を眺めた。あーくんは焦点が定まらないまま腕を引かれ立ち上がる。きっと私の言葉に傷ついたんだ。すぐに謝りたかったけれど、今はもう2人と目を合わすことさえ躊躇ってしまう。それくらい・・・・酷いことを言ってしまった。


部屋のドアがはるちゃんの手によって開かれ2人が出て行こうとした瞬間、あーくんがこちらを振り向いた気配を感じた。けれど、私は下を向いたまま気づかないふりをした。


「真珠紅、またね。月曜日に迎えに来るね。」


そう言い残し、はるちゃんが静かにドアを閉めた。階段を降りる足音を聞きながら私はふと考える。

次に会う月曜日の朝、私はどんな顔して2人に会えばいいのか。それまでに疑問はなくなるのだろうか。・・・いや、無理だろう。ローレンスとベルデが見つかってもきっと不安は消えない。これから先は今までと同じようにはいかない。そう予感した。


ガチャ・・・バタン


玄関扉が閉まり、家の中がシンと静まりかえった。今、家の中には誰もいない。私一人きりだ。2人が

出て行ったことで一気に孤独感が押し寄せた。それをごまかすように、これからどうすればいいのか、ローレンスとベルデを見つける方法はないのかを考える。・・・・・・いや、いっそもう関わらない方がいいのではないか。ルーとも連絡を取らず、紅い瞳も他の人に見えていないなら気にしなければいい。そうすればあーくんとはるちゃんとも今まで通り仲良くいられる。クラスの友達と遊んで、部活を頑張って、毎日楽しく過ごせる。




・・・・。でも、また何かが襲ってきたら?次は逃げ切れるかな。昨日みたいに盾を使って追い払えるかな。次はもっと強い使い魔が来るかもしれない。逃げ切れずに捕まってしまうかも。



怖い。



どうやって自分を守ればいい?敵に見つからないようにするにはどうすればいいの?

守り役の2人なら私を守ってくれるの?どこにいるの?


やっぱり、あーくんとはるちゃんが守り役ならよかったな・・・・・。


たぶん2人にはなにか秘密があるはずだ。そうじゃなかったら紅い瞳も使い魔の影も、魔法も見えないらしいし。敵なのか、味方なのか・・・・それだけでも知りたかった。どうしてさっきはあんなに感情的になってしまったのだろう。ちゃんとあーくんの質問に答えていれば・・・、ちゃんと私からも質問していれば答えを知れたはずなのに。ただただ、2人を傷つけただけだ。




「月曜日、2人に謝ろう。」


謝って、ちゃんと話をしよう。たとえ2人が守り役ではなかったとしても、今までは私の側にいて守ってくれた。ずっと優しく接してくれた。それは事実なのだから。


許して、くれるかな?


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