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3人目

はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・っ。




真っ暗なトンネルを走る。

出口が見えない。

あとどのくらい?あと何歩前に進めば終わるの?

早く!早く逃げなきゃ!

また追いつかれてしまう。


はぁ・・・・・っはぁ、はぁ・・・・・。


・・・あ!

光が見えてきた!やっと、ここから抜けられる・・。

もう少し・・・・・あと、少し・・・・。


光に向かって走って行くと、あることに気づいてしまう。

光が・・・・・出口が、どんどん小さくなっている・・・!?


あぁっ!ダメ!間に合わない・・・。

お願いっ!待って!!・・・・・・お願い!!!!


長い間ずっと走り続けていた為、足がもつれて転びそうになる。それでもなんとか堪えて走り続けた。

出口に向かって・・・。


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・。


すぐそこに光が見えるはずなのに!もう少しで出口に辿り着くはずなのにっ!!

・・・届かない。

あと少しなのに。


その間にも光はどんどん小さくなっていき・・・・そして・・・・・・・消えた。






嫌っ!!ダメ・・・。お願い・・。

誰か・・・・助けて!誰か・・・お願い・・・!!








「ルーーーッ!!!!」




がばっ!


「・・・・・・?」


先程まで真っ暗なトンネルの中を走っていたと思ったのだけれど・・。ここは・・・・、私の部屋だ。

いつものベットに、いつもの枕。膝にはお気に入りの柔らかい毛布が掛かっていた。

窓の外を見ると、暗闇ではなくキラキラと朝日が差し込んでいる。


ゆ・・・め?


・・・っ


急に起き上がったせいか、頭がクラクラする。

あれ?私・・・どうやって家に帰ってきたんだっけ?確か、あーくんと玖遠先輩と一緒に帰っていた気がするのだけど。・・・近道だから公園を通って・・・そして・・・・・。


・・・・っ!


そうだ・・・。黒い・・・鳥。

自分の頬にそっと触れるとピリッとした痛みが広がる。しかし、そこには昨日と違って絆創膏が貼られていた。

鳥の大群に襲われそうになったとき、イヤリングから光が広がった。その光が盾になって私とあーくんと先輩を守ってくれた。きっと、ルーが守ってくれたんだ。


そういえば、イヤリングは!?


急いで首から下げているはずのイヤリングに手を伸ばす。が、胸元には何もなく自身の肌に触れるだけだった。


ない!?どこ!?


辺りを見回すと、サイドテーブルの上で朝日を浴びてキラリと光るイヤリングが目に入った。


よかった・・・・。


昨日、己を助けてくれたイヤリングが見つかったことにほっと息を吐く。そしてその虹色に光る石に触れると、まだ1度しか会ったことのない彼へ呼びかけた。


「ルー、聞こえる?」


未だにこれで会話が出来ることに慣れていないけれど、今はとにかく彼と話がしたかった。

ルーファス・オンディーヌと。


『真珠紅様、おはようございます。』


爽やかに返された挨拶になんだか安心してしまった。彼は味方だと分かったから。

先ずは昨日のことを聞かなければとイヤリングを両手で握りしめルーに問いかけた。昨日襲ってきた黒い鳥は何だったのか。どうして私に攻撃してきたのか。イヤリングから溢れ出した光はルーの力なのか。関係のないあーくんと玖遠先輩に見られてしまったけど、大丈夫なのか。

思いつく限りの疑問を全てルーへぶつけた。最近、あり得ないことが起こりすぎて頭がパンクしてしまいそうだ。今、こうしてルーと話しているのだってあり得ないことの一つだ。


私の疑問を静かに聞いていたルーは、私の言葉が途切れたのを確認してから語り出した。最初に教えてくれたのは黒い鳥について。あれはエターミス王国に攻め込んできた敵対勢力の使い魔・・・の影だそうだ。私が覚醒したのを察知した敵がこの世界に送り込んできたらしい。正直、敵とか使い魔とか言われてもピンとこない。ただ、確実に私のことを狙って攻撃してきたのだと分かりブルっと身体が震えた。


『ただ、敵側も真珠紅様のいらっしゃる世界に干渉するにはかなりの魔力が必要になります。そう頻繁に攻撃してくることは不可能でしょう。魔力が回復するのに少なくとも1週間ほどはかかるかと。』


ってことは、1週間したらまた攻撃してくるってこと?そんなの無理だよ。昨日みたいに大群で来られたら次は助かるかどうか分からない。


『大丈夫です。昨日攻撃を防いだ盾を覚えていますか?』


ルーにそう聞かれて、鳥の大群が迫ってきたときのことを思い出す。無意識にルーに助けてって叫んだ瞬間、イヤリングから青い光が溢れ出してきたのだ。その光が私たちを包み込んで守ってくれた。あれはきっとルーの力だ。


「あれは、ルーの力でしょう?次も助けてって言ったら守ってくれるの?」


イヤリングに呼びかけたら必ず守ってくれるのだろうか。さっきこっちの世界に干渉するには魔力がたくさん必要みたいなことを言っていたけれど、ルーは昨日の盾の為に魔力をたくさん消費してしまったのではないだろうか。

疑問が不安となり、またその不安が次の不安を生み出す。心の中がどんどん不安と恐怖で満たされていくようだ。私には力が無い。知恵も能力も・・・何もない。誰かに守って貰わなければ何もできない・・。

今、私を守ってくれるのはルーだ。次も彼が魔法で守ってくれるかもしれない。・・・でも、その次は?何度敵が襲ってくるの?毎回ルーが守ってくれるの?ルーの魔力はなくならない?


私に・・・ルーがたくさんの魔力を使って守るだけの価値があるの?


そもそも、どうして私を襲ってくるのだろうか?転生前は王族だったかもしれないけれど、今は平凡な一般市民だ。何も持っていないし、何も知らない。守る価値もなければ、襲う価値もない。私なんかに時間と魔力を使う意味ってなんだろう。





『昨日の光の盾は真珠紅様のお力によるものです。』





・・・・・・・え?


『使い魔に襲われそうになった時、私に助けを求めてくださいました。しかし、私は先日魔力を消耗してしまい今はまだ回復していません。昨日は耳飾りに元々溜めていた魔力を使い、使い魔を弾き飛ばそうとしただけなのです。その隙に安全な場所へ逃げて頂こうと思いました。使い魔の影は召還された場所からあまり遠く離れるとその形を保てずに消えてしまいますから。』


そこでルーは一旦言葉を切った。そして数秒後、誇らしそうに話し出す。


『しかし、真珠紅様のお力により、私が耳飾りに込めていた魔力が強化されたのです。王族である貴方様の神聖力を乗せた魔力が盾となり使い魔の影をその神力で浄化されました。・・・あぁっ!なんと素晴らしいお力でしょう!私も実際にこの目で拝見したかった!!』


うん?

な、なんだかルーのキャラが一瞬変わったような・・・。気のせいかな・・・?声だけじゃよく分からないや。

それよりも、昨日私たちを守ってくれた盾が・・・私の力?信じられない。私は必死にルーに助けを求めただけだ。あーくんと玖遠先輩が傷つくのは嫌だと、大切な人を守って欲しいと。


でも・・・・、私が守れたのだとしたら・・・嬉しい。とても。

私にも誰かを守れる力がある?守られるだけじゃない。私も役に立てるのかもしれない。そう思うと、なんだか胸の奥からポカポカと暖かくなってくるような気がした。



『また、真珠紅様を襲った理由については・・・貴方様がスカーレット姫だからでしょう。エターミス王家に引き継がれるお力を狙ったのだと思われます。それについては次にお会いした時に詳しく説明致しましょう。』


それよりも・・・・とルーが話を続ける。


『真珠紅様と一緒に居られた2人が気になります。』

「あーくんと玖遠先輩のこと?」

『えぇ、お一人は先日もお話されていた幼馴染みという方ですよね?ならばもう一人は・・?』


そういえば、幼馴染みのあーくんとはるちゃんについては白い空間に呼び出された後、初めてイヤリングでルーと会話した時に話していたよね。


「玖遠先輩はあーくんの友達だよ。私とは最近知り合ったの。まだ挨拶するくらいの関係だけど・・。」


玖遠先輩について簡単に説明すると、ルーは何か考え込んでいるようでしばらく無言になる。何かおかしなこと言ったかな?昨日はたまたま一緒に帰ることになって私のせいで危険に巻き込んでしまった。先輩にとっては災難でしかないよね。


『幼馴染みの方と・・・・・・そのご友人には使い魔の影が見えていたのですか?』






・・・・・・・・・あっ。

そうだ。この世界の普通の人、つまり魔力を持っていない人には私の瞳が紅いのも、もちろん魔法も見えないはずだ。それならば使い魔も見えない・・・はず。でも、玖遠先輩には見えていた。見えていて、私を守ろうとしてくれていた。もちろんあーくんもだ。つまり、2人には魔法が見える。ルーがいる世界の住人かもしれないということだ。


「な、なんで!?」


あーくんとはるちゃんの2人がルーが言っていたローレンスとベルデかもしれないと思っていた。小さい頃から一緒にいて、ずっと私を守ってくれていた大切な幼馴染み。


じゃあ、先輩は?


3人目の魔法が見える人が現れてしまった。誰か1人は・・・敵かもしれないということだ。


「守り役は本当に2人だけなの?」


もしかしたらルーが1人伝え忘れているのかもしれない。


『えぇ。スカーレット姫様の守り役はローレンスとベルデ以外には存在致しません。』


はっきりと告げられた言葉にそれ以上言い返せなくなる。3人のうち誰か1人は敵かもしれない。でも、昨日は2人とも私を守ろうとしてくれていた。・・ということは、あの場にいなかったはるちゃん?いや、それは絶対にあり得ない。


『真珠紅様、引き続き警戒をしてください。そして守り役の2人を探すのです。』

「・・・どうやって探せばいいの?ローレンスとベルデは私みたいに瞳の色が変わったりするの?」

『いえ、宝石眼を持つのは王族のみです。守り役と出会えていれば、必ず彼らから告げるはずです。』


探す手段がないと訴えたけれど、ルーから具体的な方法は得られなかった。ローレンスとベルデの髪や瞳の色は聞いたけれど、それも異世界に転生したことにより変わっているだろうと。私も全然違うしね。





ピンポーン





一通りの答え合わせが終わったところで玄関のチャイムが鳴った。きっとお母さんが対応するだろうと思い、私はベットでじっと耳を澄ませた。

しかし、玄関が開く様子もなく、ただただ時間だけが過ぎる。

あれ?誰もいないのかな。

両親の不在を確信したところでもう一度インターホンが鳴った。


「ルー、誰か来たみたいだから今日はもう切るね。」


まるで携帯電話で話している感覚でルーに別れを告げた。最後にルーからの耳飾りはずっと持っていてという言葉を聞き、虹色の石から手を放した。





ベットから離れ、急いで階段を駆け下りる。その間にもう一度ピンポーンと鳴り、その場で聞こえるか分からないけど『はーい!』と返事をした。

玄関扉を開けるとそこには・・・あーくんとはるちゃんがいた。



   ********************



2人に私の部屋に上がってもらった。2階に来る前にリビングを覗いてみたけれど、やっぱり両親は出かけているようだ。とりあえず、冷蔵庫から麦茶を出し、コップと共にトレイに乗せ運ぶ。

さっき玄関であーくんとはるちゃんを見た時は一瞬、学校に行く時間!?・・・と焦ったけれど、今日は土曜日でお休みだ。きっと昨日のことを話しにここまで来たのだろうと思う。私も昨日のことで聞きたいことがあったからちょうど良かった。


机の上に麦茶を置いて2人にどうぞと声をかけた。ありがとうと小さな返事が返ってきて、それと同時にはるちゃんがコクっと一口麦茶を飲む。

今日はあーくんがハートの座布団に座っている。私もさっきまでいたベットに腰掛け、2人からの言葉を待った。


けれど、2人からはなかなか声が上がらず、コップに入った麦茶の水面をずっと見つめているだけだ。仕方がないので私から声をかけることにした。きっとあーくんから昨日のことは聞いているだろうと思ったので、先ずははるちゃんに話かけてみた。


「はるちゃん、昨日のこと・・・あーくんから聞いたよね?」


私が話しかけたことで麦茶の水面を見つめてたはるちゃんが顔を上げる。

眉をキュッと寄せながら心配そうな表情で返事が返ってきた。


「うん。真珠紅・・・怖かったよね。俺もその場にいれば絶対に真珠紅を守ったのに・・。」


無事だったから大丈夫だよと返し、その後あーくんを見た。確認したいことがある。まずは・・・


「昨日はあーくんがここまで私を運んでくれたの?」

「・・・あぁ、おばさんたちには部活で疲れて貧血を起こしたと説明しておいた。玖遠と2人で部屋まで運んですぐに帰ったよ。」


えっ!?玖遠先輩も私の部屋まで来たの!?全然片付いていないのに恥ずかしい・・。

でも、今はそんなことよりもっと聞きたいことがあった。ルーは彼らの方から名乗り出るだろうって言っていたけれど、ずっとモヤモヤしているくらいなら私から聞いてしまおうと思う。

もう来週の土曜日まで待つこともできない。

来週の土曜日、3人で遊園地に行こうと約束している。1週間後だ。それまで待てない。1週間経ったら敵の魔力が回復してまた襲ってくるかもしれないのだ。その前に確認しないと・・。


「・・・あの、2人に聞きたいことがあるの。今、聞いてもいいかな?」


はるちゃんがあーくんへ顔を向け、その表情を読み取る。あーくんは目ををギュッと閉じ、そして次に開いた時には真っ直ぐに私を見つめていた。


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