再会
お兄ちゃん現代に転生です。
「綾人、そろそろ病院行こうか。」
積み木で1人遊びをしていると、お父さんが声をかけてきた。今日は僕の弟が生まれる日だ。
お母さんは昨日から病院に入院している。僕は積み木を片付けると、上着を着てメガネをくいっと中指で上げる。
「準備できたよ。早く行こう。」
今日からお兄ちゃんになるのだ。
兄弟ができる喜びと一緒に、お兄ちゃんらしくしっかりせねばという気持ちでドキドキする。
今まではお母さんに履かせてもらっていた靴を、今日は頑張って自分で履いた。ビリビリと音を立てて剥がされるマジックテープがチクチクと指に刺さる。
どうにか靴を履き終わると、お父さんが差し出した手をギュッと掴む。
「綾人もお兄ちゃんだな。」
お父さんの発した言葉に拳をグッと握る。
そう、お兄ちゃんになったら弟を守らなくちゃいけないんだ。僕は必ず守るって約束したから。
・・・・・あれ?誰に約束したんだっけ?
病院に着くと早足でお母さんの病室に向かった。
昨日の朝ぶりに見るお母さんの顔にフッと力が抜ける。
「お母さん。」
「綾人、来てくれたのね。もうすぐ分娩室に行くところなの。その前に綾人の顔見れてうれしい。」
お母さんの言葉に目の奥がグッと熱くなる。
泣いちゃダメだ。お兄ちゃんになるんだから。
分娩室に入るお母さんを見送ると、廊下のベンチにお父さんと座った。
いつもはイスに座ってじっとしているのが苦手なのに、今日はすごくすごく長い時間イスに座っていられた。お父さんの手を握っている僕の指先は、力の入りすぎで少し白くなっている。
どれくらいの時間が経ったのか分からないけれど、座っている僕らの前に看護師さんが来た。
「もう生まれるので、中へどうぞ。」
中へ入ると、お母さんが顔を歪め「んーーっ」と声を出していた。
何度かその声を聞いた後「ほぎゃぁ、ぁぁー」と泣き声が聞こえた。
「生まれました!元気な男の子ですよ!」
助産師さんが赤ちゃんをお母さんのお腹の上に乗せて顔を見せてくれた。
その瞬間、サァーっと何かが頭の中ではじけた。
『僕らが必ず姫を守ります!』
そうだ。僕は弟と、ベルデと一緒に姫を守ると誓った!どうして忘れていたのだろう。あの誓いを。父様と母様との約束を。
元気よく泣く弟に負けないくらいの大きな声で僕は泣き叫んだ。
「・・ルデ・・っ、ベルデ!」
そんな僕の頭の上にお父さんの掌が乗る。
「綾人、お兄ちゃんになったな。」
泣きながら呼んだかつての弟の名前に気づかず、お父さんは僕の頭をぽんぽんと撫でてくれる。
「ふぅっ、・・ひっく・・」
弟が生まれた喜びや前世の記憶がごちゃ混ぜになってボロボロと涙が溢れてくる。
なかなか止まらない涙を拭うと頭の中に声が響いてきた。
『兄様。』
あぁ、ベルデ。君はちゃんと記憶が残っているんだね。
僕たち兄弟は、前世でもこうやって言葉を発さずに会話をしていた。王家に仕えるバナッシュ家の能力である。弟と再会出来たことで、その能力も目覚めたようだ。
ぐちゃぐちゃになった顔はそのままに、僕は弟の方へ近づきニコっと微笑む。
「はじめましてっ。僕の・・、僕のところに来てくれて・・・ありがとう。君のお兄ちゃんだよ。」
まだ涙は止まらないし、顔はひきつるけれど、僕は一生懸命弟に声をかけた。また僕の弟になってくれた彼に、記憶を蘇らせてくれた彼にもう一度誓う。
「僕が、必ず守ってみせる。」
弟との再会。お兄ちゃん大号泣です。




