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剣道

裏門に到着したところで先輩2人とは別れることになった。今日のお礼と明日またお願いしますと再度挨拶をし、帰路につく。

あーくんはなんだかちょっと疲れた顔をしている。・・・生徒会長だから忙しいんだね。


そういえば、今日は2人に悪いことしちゃったな。

せっかく私のことを心配して迎えに来てくれたのに、連絡もしないで待たせてしまった。きっと、余計に心配かけてしまったと思う。さっきも一度謝ったけれど、もう一回ちゃんとお詫びしたほうがいいよね。


「あ、あの・・・あーくん、はるちゃん。今日は心配かけちゃって本当にごめんね。わざわざ武道館まで来てくれたのに。2人ともほんとは忙しいよね。あの、大変だったら無理してお迎え来なくても大丈夫だからね?」


私の言葉に2人は顔を見合わせて目を丸くする。


「真珠紅、今日心配したのは確かだけど、別に迎えに行くのは大変じゃないし無理もしてないよ。」

「ああ。むしろ、俺たちが迎えに行きたいんだ。本当は常に一緒にいないと心配で心配で・・・。今日みたいに帰りが遅くなる時は事前に必ず連絡しなさい。」


あーくんの言葉に、はるちゃんが苦笑いをした。お父さん・・・と呟いた気がするけれど、きっと気のせいだろう。




「・・・・・真珠紅。」



自宅までの道のりも残り半分となった頃、あーくんの口から小さく名前を呼ばれた。あまりにも小さな声だったので一瞬聞き間違えかな?と思ったけれど、彼の目は真っ直ぐ私を捕らえていて、実際に呼ばれたんだと気づく。


「なぁに?」


なぜだか少し言いにくそうにしているあーくんに、私の方も緊張してしまう。はるちゃんはというと、あーくんの話す内容を知っているのか・・・心配そうな、切なそうな表情をしていた。


「あーくん、どうしたの?」


なかなか話し始めない彼に私の方が焦れてしまう。なんだか落ち着かない。妙な胸騒ぎを感じてもう一度聞き返してしまった。

あーくんは一度拳をギュッと握る。


「真珠紅・・・今度3人で遊園地に行こうって言っただろ?」

「うん。お休みの日に、私の合格祝いで連れてってくれるって言ってたよね。」

「ああ。・・・その日に話したいことがあるんだ。・・・真珠紅にとっても・・・・・・俺たち兄弟にとっても・・とても大切な話。・・・遊園地の帰りに少し時間をくれないか?もちろん、帰りはあまり遅くならないようにする。」


・・・。私たちにとって、大切な話?なんだろう。それは、絶対に聞かなきゃいけないことなのかな?どんな話なのかは分からないけれど・・・私は・・・・聞きたく・・ないな。


理由は分からない。けれど、自然とそう思った。怖くて、不安で気は進まない。

しかし、あーくんが真剣に話しているのに断わるわけにはいかなくて。


「うん。分かった。」


首を縦に振った。










真珠紅たちが遊園地の日について話していた少し前。裏門で水沢、日原と別れる寸前の時。

門から少し離れた木の側に、一つの人影があった。

その影は、強く握った拳をワナワナと震わせて嫉妬の炎に燃えていた。


「どうして・・・・・あの子ばかり!!」


いつもの雰囲気とはまるで違う表情のその人は、先輩たちに囲まれる真珠紅をジッと睨みつける。その口元からは歯をギリっと噛みしめる音が聞こえた。



   ********************



次の日。

今日こそはお隣さんのインターホンを押そうと思った。

昨日の夜にしっかりとアラームもセットしたし、授業の準備も終わらせておいた。朝寝坊しないように、お風呂出た後はすぐにベットに潜ったよ。


なのに・・・準備は完璧にしたのに!




い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いた・・い。




体中が痛くて動けない!!!



そう、ただいま絶賛筋肉痛です。


なるな~とは思ってた。思ってたけど!

ひどすぎる!

腕、太もも、ふくらはぎ、お腹、おしり!全て!全て痛いんです!!!


起床を知らせるアラームでちゃんと起きたけど、まずベットから起き上がれなかった。腹筋が悲鳴を上げていて上半身を起こすのが辛い。なんとか横に転がりながら起きたよ。


顔を洗うときは腕をあげるのがキツい。とくに歯磨きは細かい動きができなくて、両手で歯ブラシを持ってゆっくり磨いた。


次に制服に着替える時!

スカートを履くために足を上げたくても上がらない。仕方なくスカートを床スレスレまで下げて履いた。


昨日先輩たちに身体を揉みほぐすように言われたからお風呂でマッサージしたけどダメだった。日頃、どれだけ運動していないかが分かったよ・・。



ピンポーン



あぁ、今日もダメだったか・・・。

幼馴染みの来訪を知らせるチャイムが鳴り響き、がっくりと肩を落とした。



   ********************



ようやく歩き慣れてきた通学路なのに、今日はとても遠く感じる・・。筋肉痛め~!!


「し~ずく。大丈夫?」


私が変な歩き方をしているからだろう、はるちゃんが苦笑いで顔を覗きこんできた。大丈夫ではないけれど、ここは平気と答えよう。


「う、うん。大丈夫・・。」

「いや、絶対うそだよね?」


バレた。うん、まぁ、そうだよね。


「昨日の部活はそんなにキツかったのか?」


あーくんがまた心配そうな顔をして聞いてくる。眼鏡を中指でくいっとあげて、練習メニューの確認がどうとか、部長に一言とか、ぶつぶつと言っている。


聞かなかったことにしよう。




身体の奥に響くような痛みをごまかしながら、なんとか学園の正門に到着した。黒のロートアイアンの門をくぐり抜け、噴水の方角へ向かう。噴水の前には、今日も知っている顔があった。なんだか、朝はよく会う気がする。

噴水の前に立つ人物に気づき、あーくんがその人に向かって声をかけた。


「玖遠!」


呼ばれた玖遠先輩が、伏し目がちだった視線をこちらに・・・私に向けた。

一瞬だけ視線が交わった。・・・気がした。


「おはよう。」

「先輩、おはようございます!」


あーくんとはるちゃんが挨拶をしたので、私も2人の横でおはようございますと頭を下げた。すると、玖遠先輩はいつも通り小さな声で『あぁ。』とだけ返事をした。


どうして玖遠先輩は毎朝ここにいるんだろう。そんなにはやくあーくんに会いたいのかな??・・・教室で毎日会えるのに。やっぱりツンデレ?


不思議な気持ちでいっぱいだったけれど、私が先輩に質問できるわけでもなく、疑問はそのまま次回に持ち越しだ。

毎朝2、3分顔を合わせるだけで、言葉はほとんど交わさない。でも、毎日それが続くと、私も玖遠先輩と仲良しになったんじゃないかとか、そんな錯覚に陥る。

今日もきっと挨拶以外は何も話さずに別々の校舎に入ることになるんだろう。



「・・・如月。」



・・・。・・・うん?今、私に話しかけたような・・・。



「如月、今日は少し疲れているような顔をしている・・。なにかあったのか?」



!!?

やっぱり私に話しかけてた!しかも、表情で疲れてるのに気づくなんて・・私そんなに顔にでてた?

とにかくちゃんと返事しないと!


「えと、実は昨日はじめて部活の練習に参加して・・・それで・・・・・・き、筋肉痛になってしまった・・・・ん・・で・す。」


最後は段々声が小さくなってしまった。恥ずかしくて。

それでも玖遠先輩は笑わずに心配してくれた。今日も部活だろうとか、大丈夫なのかとか。ほんの少しだけあーくんみたいだ。さすが友達だね。


その後は昨日の部活でどんなことをやったとか、あーくんとはるちゃんを待たせてしまって心配かけちゃったとか、いろいろと話した。玖遠先輩は私の話を静かに聞いてくれて、時々相づちを打ってくれた。毎朝噴水の前で顔を合わせていたけど、こんなに話したのは初めてで楽しくて時間を忘れてしまう。

教室に入らなきゃいけない時間が近づいてから初めて夢中で話していたことに気づいた。玖遠先輩は聞き上手だ。


「真珠紅、そろそろ教室行こう。HR始まっちゃうよ。」

「うん。・・・それじゃ、あーくん、玖遠先輩・・・・また。」


少し気恥ずかしいけど、2人に小さく手を振って別れた。あーくんは笑顔で見送ってくれる。玖遠先輩は・・・無表情だけど、なんとなく優しい顔に見えた。








ポチャッ・・・・・・・・ポチャン


HRを知らせるチャイムが学園中に響き渡る。生徒たちは皆教室に入り、噴水の前には誰もいなくなった。


噴水の水音の中に微かに混じる異音。


それは、その時が近づいていることを知らせる為のものだと・・・真珠紅はまだ気づかない。


彼女はまだ・・・何も知らないから。




   ********************




よーし!今日は剣道だ!

放課後になり、部活に行く為に荷物をまとめる。まだ筋肉痛は残っているけれど、朝よりはだいぶマシになった。・・・笑うとお腹が痛くて涙出てくるけどね。


お弁当の時間は大変だった。日和ちゃんが私が筋肉痛で苦しんでるのを面白がって、わざと笑わせてきたからだ。冗談を言ったり、くすぐってきたりと、それはもう・・・とても痛かった。たくさん笑って楽しかったけど。


友達にまた明日ねと挨拶し、鞄を持って武道館の更衣室に向かう。昨日の薙刀では、不甲斐ない私のせいで園田さんに迷惑をかけちゃったから今日は頑張らないと!


そう思いながら更衣室へ入ると、今日も園田さんのほうが先に着いていた。

いつも早いな~と思いながら声をかける。


「園田さん、今日も早いね。」


私の声に気づいた彼女は、ゆっくりロッカーを閉めてこちらへ振り向く。


「如月さん、こんにちは。いつもHRが終わってからすぐに来ているから。私、部活も真面目に取り組みたいの。」


私もHR後はすぐにきているのだけれど・・・園田さんの方が足が速いのかもしれないね。

園田さんは何にでも真剣に取り組む努力家なんだと尊敬する。

私がロッカーに鞄を置いた時にはすでに着替え終わり、更衣室を出て行ってしまっていた。


昨日、私がストレッチで足を引っ張ったから少し怒ってるのかな?



   ********************



更衣室を出て道場へ向かっていると、途中で水沢部長と日原先輩と鉢合わせた。道場を挟んで反対側が男子更衣室になっているのだ。

ここは1年生の私から挨拶しないと!と思い急いで2人に駆け寄る。


「先輩!こんにちは。昨日は遅くまでありがとうございました。」


先輩たちが立ち止まり、私の挨拶に答えてくれる。


「如月さん、昨日はお疲れ様。今日は剣道の稽古だね。フフ・・楽しみ。」

「おぅ。お前昨日はちゃんと身体マッサージしたか?今日筋肉痛で動けねぇとかないだろうな?」


・・・水沢部長の笑顔はなんだか黒いし、日原先輩はやっぱり視線と口調が怖い!しかも、筋肉痛ってバレてる!


怖い先輩2人に囲まれながらドキドキして道場へ入る。

今日は水沢部長に指導してもらうし、昨日の日原先輩みたいに厳しくは・・・ないよね?








・・・・・・・・・甘かった。



ただ今剣道の素振りをしております。

今日は昨日の薙刀と違って、以外と早めに竹刀を持てた。準備運動の後は足裁きの練習を教えてもらって、園田さんと並んで練習した。

ちなみに今日は、森君と佐野君が日原先輩の薙刀だ。さっきチラッと見たけど、体幹トレーニングで佐野君がとても苦しそうな顔をしていた。・・・頑張れ、佐野君!


動きを覚えてきたところで水沢部長から声がかかり、竹刀を持って良いと許可が下りた。

今日は順調に進んでいることに安堵し、やったぁ!と喜んだ・・・・・・・・・・のも束の間。






そこから部長の鬼のような指導が続いているのである。


   



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