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薙刀

昨日のあれはなんだったのか・・・。いくら考えても分からない。

夜、眠るのが怖くてなかなか寝付けないでいた。夢にも出てきそうで。

はるちゃんもすごく心配してしていたし、たぶんこの件はあーくんにも伝わると思う。

明日からは登下校で2人のどちらかが一緒にいてくれるって言ってたけど、それでもやっぱり不安だ。今日は私が狙われたけれど、次ははるちゃんかもしれないし、もしかしたらあーくんかも。

何が目的なのか、あれは人なのか、どこに連れて行こうとしたのか・・・。

分からないことだらけで・・・怖い。




それでも朝は来るから、今日も学園へ行く準備をする。

今日はいつもよりも早く起きて準備が終わってしまった。昨日よく眠れなかったからね。

次こそ私がインターホンを押すという野望がこんな形で叶いそうだ。

時計を確認するとまだ7時である。最後の身だしなみチェックで鏡の前に立つ。

いつも通りだ。どこもおかしな所はない。いつも通り・・・紅い・・瞳。

目を閉じ、大きく息をする。ゆっくりと吐き出し目を開く。よし!大丈夫。


階段を降りて玄関へ向かう。まだインターホンは鳴っていない。今日こそ私が2人を迎えに行けるということに、少しだけワクワクする。行ってきます!とお母さんに声をかけ、勢いよく扉を開けた。




「えっ!!なんで!?」


玄関の前にはあーくんとはるちゃんが立っていた。


「あれ?真珠紅、今日は早いね!」

「めずらしいな、昨日眠れなかったのか?」


あーくんが優しく問いかけ、私の目元に触れる。眉を下げて、とても心配しているような表情だ。

・・・やっぱり昨日のことはるちゃんに聞いたんだね。


「今日こそ私がインターホン押せると思ったのに~!どうして2人ともこんなに早いの?」


あーくんの質問には答えず、意識して明るい声をだした。

そうしないと・・恐怖と不安で震えてしまいそうだから。

私の問いかけに2人が顔を見合わせる。


「俺たちはいつも7時20分より少し前に真珠紅の家について、時間までインターホン押さないで待ってるんだよ。あんまり早く押すと、真珠紅焦るだろ?」

「そんなにうちのインターホンを押したいなら、明日は家で待ってようか?」


あーくんが意地悪く笑いながら提案する。それじゃあ全然意味ないじゃん!!私が悔しさで頬をプクっと膨らますと、2人が声を出して笑った。



   ********************



学園に到着し、いつも通り授業を受ける。今は体育の授業で、短距離を走る順番を待っているところだ。友達はみんな走り終わって100メートル先にいるので、ひとりぼっち。暇なので、朝のことを考える。


朝、噴水の前であーくんと別れる時、今日はあーくんとはるちゃんの2人とも一緒に帰ってくれると言っていた。武道館まで迎えに来てくれるそうなので、お言葉に甘えることにした。忙しいのにごめんねって謝ったら、生徒会も部活も終わる時間は変わらないから大丈夫だと言ってくれた。ほんと優しい。


一人でいろいろと考えていたら、私が走る順番が回ってきた。スターティングブロックに足をかけ、前を見据える。走るのは少しだけ得意だ。風が流れる感じが気持ちいいし、何も考えずにただ前に進めばいい。逆に運動で苦手なのは球技。特にチームワークが大事なバレーとかバスケは全然ダメ。自分がどう動けばいいのか分からないし、誰かの邪魔になったらどうしようって心配になって動けなくなってしまう。小学生の時はそれでチームのみんなから白い目で見られた。ちゃんとボール取りに言ってよって何度も注意された気がする。


スタートの合図があり、一気に駆け出す。前屈みの体勢からだんだんと頭の位置が高くなった。半分くらい走ったところで周りの空気が変わった。

いつもは風を切って走る感じなのに、今日は何だか違う。空気が身体を包み込んで、後ろから押してくれる感じがした。速く、速く、いつもよりも速く。あっという間にゴールにたどり着いていた。


「真珠紅!すごい速かったよ!!」

「やば、クラスで一番のタイムだって!」

「陸上やってたんだっけ?」


ゴールに着いた途端、みんなが口々に褒めてくれた。陸上部の日和ちゃんもビックリしたようで私の肩に手を置いて、すごい!って言ってくれた。


「今日はなんだか調子が良かったみたい。すごく身体が軽かったの。なんでだろ?」


首を傾げ考える。どっちかっていうと、今日は寝不足で身体が重いと思ってたのに。走ってる時だけフワッと軽くなった気がする。


「真珠紅!陸上部入ろう!!」

「えっ!?無理だよぉ!私、今日から本格的に部活始まるんだよ。」

「じゃあ、兼部ってことで。」


冗談交じりの提案に思わず笑ってしまった。友達がいるってやっぱり楽しいな。








「・・・真珠紅・・。」


綾人は高等部の教室の窓から運動場を見ていた。そこには小さい頃からずっと一緒にいる大事な幼馴染みの姿がある。さっき真珠紅が走っていた時、確かに瞳の色が変わっていた。深い深い紅色に・・・。

瞳が変わった瞬間、彼女の周りの空気も変わった。いや、彼女が風を操っているようだった・・・。


もう、近いのかもしれない・・・。

父様、母様。

きっと、もうすぐです・・。


ずっと待ちわびている瞬間でもあるが、まだ来て欲しくない。この穏やかな時間が消えてしまうかもしれないという焦燥感に唇を噛む。抗えないと分かっていても、どうしても考えてしまう。

ずっと、このままであれば・・・。


しかし、約束した。父様と。母様と。

分かっている・・。



   ********************



放課後です。放課後は部活の時間です!

HRを終えて武道館へ向かう。今日は薙刀の稽古だ。確か薙刀は副部長が中心になって教えてくれるはず。

まだ一度も話したことないから緊張するな・・・。

武道館に到着し、女子更衣室へ入った。部活は基本、袴で行う。しかし1年生はまだ注文していないので、今日はジャージだ。来週くらいにみんなでまとめて注文するらしい。


中にはすでに園田さんがいた。入ってきた私と目が合った・・・気がしたけれど、すぐにそらされたような・・・?気のせいかな・・。

気づかなかったのだと思い声をかけた。


「こんにちは、園田さん。はやいね!」


すでにジャージに着替え終わっている園田さんは、ロッカーの扉をゆっくり閉めてからこちらへ向いてくれた。


「こんにちは。如月さんもはやくしないと、部活始まっちゃうよ。」


ニコリと笑顔でそう言ってくれる園田さんにお礼を言い、急いで着替えることにした。彼女は先に道場へ向かうようだ。

・・・一緒に行きたかったな。

練習初日なので、一人で道場に入るのが心細い。でも、私のせいで園田さんまで遅くなったらわるいよね。




ジャージに着替え、道場のドアを開ける。すると、もう1年生は全員来ていた。

あぁ、最後になっちゃた・・・。

まだ稽古開始の時間ではないけれど、なんとなく最後になるのがイヤだった。


時間になると、水沢部長が集合の合図をかける。2、3年生にいつも通りの準備運動を行うよう指示が飛ぶ。


「「はい!」」


先輩方は大きな声で返事をすると、ぶつからないように広がって各々準備運動を始めた。


「1年生は僕が教えるからこっちに集まって。」

「「はい!」」


私もみんなに合わせて大きい声で返事をする。

なんか・・・運動部って感じだ!





・・・・・・・・・き、きつい・・・・・。

まだ準備運動なのに・・・・それがとてもきつい・・・・・・・。

今まで自分を甘やかしてきたのを思い知る。最初は軽いストレッチだった。これなら大丈夫そうだ!・・・と思ったのも束の間、腹筋、背筋、腕立て伏せ。そして今はスクワットに取り組んでいる。普段使わない筋肉が刺激を受けてピクピクしているのが分かる。これは絶対に全身筋肉痛コースだ!

あ、あと3回・・・・2回・・・・・・・1回・・・・・・・終わった!!

やりきった感いっぱいで周りを見渡す。みんなはもうとっくに終わって一息ついている所だ。すぐに稽古がはじまるらしい・・・。


「フフ。」


1年生の様子を見守っていた水沢部長と目が合った。・・・そして私を見て・・笑った!絶対!!どんくさい子だと思われてるに違いない。むぅ。


「お疲れ様。ここまでが準備運動なので、道場に来たら毎回行うようにしてください。また、1年生は2人ずつに分かれて稽古を行います。一方が剣道でもう一方が薙刀。一日おきに交代して稽古しましょう。組み分けは・・、そうだな・・・男女で分かれた方がいいかな?今日は森くんと佐野くんが剣道。園田さんと如月さんが薙刀の稽古を行うように!」

「「はい!」」


てっきり1年全員で稽古するかと思ってた。でも、園田さんと同じ組でよかったな。

剣道と薙刀は道場を左右に分けて行うようだ。私は園田さんの少し後ろを歩きながら右側・・薙刀ゾーンに向かう。



「今日薙刀やる1年はお前らか?えーっと確か園田と・・・・・・・?」


園田さんについて日原先輩のいる方へ向かうと、気づいた先輩が声をかけてきた。けれど、私の名前は出てこないようだ・・・。

名前覚えられてなかった・・・。悲しい。


「き、如月です!よろしくお願いします。」

「あー、如月だ。わりぃ。」


しょんぼりしていると日原先輩が両手をパシっと合わせて謝る。

口調は乱暴だけど、きっと悪い人ではないんだろうな。気にしないでくださいと伝えたらニカっと歯を見せて笑ってくれた。


「それじゃあ、さっそくはじめっか!まずは基本練習・・・といきたいとこだが!その前に姿勢チェックからだな。」


日原先輩にジロッと睨まれた!頭のてっぺんからつま先までを入念に見られる。右手を顎にあてて真剣に観察されとても緊張する。・・・変な汗でてきたよ。視線が怖い。


「園田、もう少し顎引け。肩の力を抜いて、上から吊されてるような感じで立ってみろ・・・・あぁそうだ。・・・よしっ!いいだろう。」

「ありがとうございます!」


園田さんはあまり注意されることなくOKをもらっていた。すごい!私も何事もなく終わるかなー・・・・・って、希望は一瞬で砕かれた。知ってた!準備運動のときからうすうす気づいてたよ!


「きさらぎー、まずはシャンと立て!猫背になるな!腹に力入れろ!どうしてそんなにフニャフニャしてるんだ!?」


え?え?私フニャフニャしてる!?いつもよりすごく姿勢良くしてるつもりだよ!お腹とおしりに力入れて立ってるよ!・・・あっ、きっとさっきの準備運動で身体に力が入らなくなってるんだ!!


「如月!肩が上がりすぎ!足をしっかり閉じろ!内ももに力を入れるんだよ。そして腹が前に出すぎだ!!」


!!!!!???

シ、ショック!!お腹出てる!?確かに昨日クレープにアイスのっけたけど!受験の時は全く運動しないで勉強してたけど!夜食も食べたけれど!それでも、お腹が出てる自覚はなかったよ?あーくんもはるちゃんも、そんなこと一言も言わなかったよ。・・・言えなかったの?


日原先輩からのダメだしにダメージを受けながら、必死に姿勢を正した。


くそぅ、今度からクレープにアイスはのっけないもん!!


   

次も薙刀の稽古が続きます。

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