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放課後クレープ

あれれ?

さっきちゃんと断わったはずなんだけど・・・??


ミーティングをしていた部屋から出て、今は武道館の出口へ向かっている。チラッと横を見ると水沢部長がニコニコと私と並んで歩いていた。少し後ろには園田さんがついてきているようだ。

ま、まぁ、みんな帰るんだから方向は同じだよね。武道館の出口まではこのまま行こう。はるちゃんはもう着いてるかな?


「あの、部長!私、武道館の前で待ち合わせしているので・・ここで失礼します。園田さんも、また明日ね!」


出口が近づいてきたところで2人に声をかける。お疲れ様でしたと挨拶をしながらお辞儀をすると、


「真珠紅!」


はるちゃんの声が聞こえた。私を見つけてこちらに駆けてきてくれている。


「はるちゃん。」


私の所へ到着したはるちゃんが横にいる水沢部長へと目を向けた。


「水沢?なんで真珠紅と一緒にいるの?」

「うちの部の新入部員だよ。出口まで一緒に帰ってるんだ。如月さんが約束してたのって元宮のこと?」


ん?はるちゃんと部長は知り合いなの?・・・あ!!そういえば2人とも3年A組だ!全然気づかなかった。

2人のやりとりを横で眺めていると、後ろを歩いていた園田さんと目が合った。少し頬が赤いような・・・。!!・・私たち3人で道をふさいじゃってるんだ!!それで困ってるのかもしれない。

私は急いではるちゃんと水沢部長の袖をツンと引っ張る。


「ん?真珠紅、どうしたの?」

「何?如月さん。」


2人が同時に振り向いてくれた。園田さんの進行妨害してることを言わないと!


「少し端に寄らないと・・・後ろで園田さんが困ってる!」

「あぁ、園田さんごめんね。」

「ごめん、邪魔になってたみたいだね。」

「園田さん、通って大丈夫だよ!」


3人で道を空けて園田さんに謝った。しかし、彼女は口元をひくっとさせたまま動かない。本気で怒っちゃったのかも!どうしよう。せっかく仲良くなれそうだったのに。

顔を引きつらせていた園田さんは、次の瞬間には右手を口元にあてて、さっきまでの可愛い顔になっていた。


「あの、元宮先輩ですよねっ?如月さんとお知り合いなんですかぁ?」


園田さんの突然の問いかけに、はるちゃんが一瞬だけ面倒そうな顔になった気がした。・・・気がしただけで、はるちゃんは笑顔で答えている。


「真珠紅とは幼馴染みなんだ。君は真珠紅の友達?」

「はい!さっきお友達になりました。新入部員で女子は私たち2人だけなんです。」

「そうなんだ。真珠紅、新しい友達ができてよかったね。」


!!

私、さっき園田さんとお友達になったんだ!?知らなかった・・・。もしかして友達って自己紹介し合ったら成立するの??どちらにせよ、部活でも友達ができて嬉しい!


「じゃあ、真珠紅。そろそろ行こうか。遅くなっちゃうよ。」

「うん!」

「元宮、どうせ裏門まで同じ道なんだから一緒に行こう。」

「えっ、俺急いでるんだけど。」

「フフ、そんなこと言わないで。ほら行くよ。」


はるちゃんが水沢部長に背中を押されながら前へ進む。私も置いて行かれないように慌てて駆けだしたけれど、後ろから園田さんも着いてきているのに気づきスピードを落とす。彼女の隣に並び声をかけた。


「あの、園田さん。同じ部に女の子がいてよかった。さっきは話しかけてくれてありがとう。明日から練習頑張ろうね!」


言いたかったことを一気に話してしまった。園田さんは少し目を見開いている。


「・・・・・こっちこそ。仲良くしようね、如月さん。」

「僕とも仲良くしようね?如月さん。」


園田さんに続いて部長にも仲良くしようと言われてしまった・・。部長とは・・・できればそんなに仲良くしなくても・・・いい・・・・かな。


「真珠紅、水沢のことは適当に流しとけばいいからね!」

「ひどいな。せっかく可愛い後輩と仲良くなろうと思ってるのに。」


水沢先輩ははるちゃんに言い返しながらも笑顔だ。仲が悪いわけじゃないんだね。なんとなくそう思う。


4人で歩いていると、あっという間に裏門に着いた。私とはるちゃんはこれからクレープを食べに行かなきゃいけないから、ここで2人とお別れだ。


「水沢部長、園田さん、お疲れ様でした。明日からよろしくお願いします。」


2人の前に立ち、さよならの挨拶をした。少し後ろではるちゃんが待ってくれている。


「あぁ、また明日ね。」


部長がニコニコしながら返事をしてくれた。園田さんはその横で小さく手を振ってくれている。私も振り替えそうと思ったけれど、友達になったばかりで何だか照れる。頑張って笑みを返したが、力が入りすぎて変な顔になっちゃった気がする。


「真珠紅、行こう。」


はるちゃんに呼ばれ振り向こうとしたところで後ろから手を取られた。はるちゃんが私の手をギュッと握って少しだけ強引に引っ張る。まだすぐそこに部長と園田さんがいるのに!


「は、はるちゃん!手!」

「思ったより遅くなっちゃたから早く行かないと!真珠紅、クレープ楽しみにしてたでしょ?」

「そ、そうだけど・・・まだ5時くらいだよ!クレープ食べて帰ってもそんなに遅くならないよ!」


はるちゃんに手を引かれながら恐る恐る後ろを見ると、水沢先輩が目を丸くしてこっちを見てた。園田さんは眉をしかめているように見える。

あああ、中学生にもなって手を引かれて歩いてるなんて・・・恥ずかしい!別にはるちゃんがイヤなわけじゃないけれど・・・・・恥ずかしい!!もう放してぇ~!


恥ずかしさで放心したまま手を引かれていると、部長たちが見えなくなった所ではるちゃんの足が止まった。


「真珠紅、ごめん。真珠紅が水沢と楽しそうに話してる所を見て、少しモヤモヤしてた・・。」


はるちゃんがこちらに背を向けたまま話し始めた。手は繋いだままだ。

・・ん?部長と仲良く話してた?・・・気のせいじゃないかなぁ。


「この前、真珠紅が学園で手を繋ぐのやだって言ってたのに、俺さっきわざと手を繋いでみせたんだ。」


はるちゃんと手を繋ぐのがイヤなんじゃなくて、みんなに見られるのが恥ずかしいだけだよ。・・・それより、さっきの恥ずかしさでまだ顔が熱い。頭もクラクラする気がする・・・。


「ごめんね、次は気をつけるから。」


そう言って、はるちゃんがやっとこっちに振り返った。その瞬間、はるちゃんが目を大きく見開いた。


「し、しず・・・く・・・。」


なんだろう。はるちゃん、何をそんなに驚いてるの?・・・それにしても、熱いな。火照りがなかなか収まらない。はやくクレープ食べたいな。アイス入りの冷たいやつにしよう。


「はるちゃん、怒ってないから早くクレープ食べに行こう。喉も渇いたし。」

「うん・・。真珠紅、身体は何ともないの?」

「身体?少し熱いけど平気だよ。」


はるちゃんが繋いでいない方の手を私の目元に伸ばしてきた。とても心配そうな・・困惑したような表情にハッとする。


もしかして・・今、紅い瞳になってる!?

そう思ったけれど、はるちゃんは瞳に触れることなく手を下ろす。


「じゃあ、クレープ行こうか。帰りが遅くなると兄さんが心配するから。」

「あーくんはすごく心配するね。」


2人であーくんの話題で笑い合う。紅い瞳を見られたのかと思ったけれど、気のせいだったようだ。

手を繋いだまま、何度も3人で行ったクレープ屋さんへ向かった。


店に着くと、アイス入りのクレープを注文する。いつもはアイスの入っていないのを頼むのだけど、今日は部活の入部祝いってことで自分にご褒美だ。はるちゃんはチョコとクリームのシンプルなクレープを注文していた。

数分後、注文したクレープを受け取り、お店の前のベンチにはるちゃんと並んで座る。ベンチの後ろには、学園のほど大きくないけど噴水が水しぶきを上げている。水のおとが火照った頬を冷ましてくれるようだ。


「真珠紅のアイス入りクレープ美味しそうだね。」

「ストロベリーのアイスにしたの!一口食べる?」

「えっ、いいの?」


どうぞと言いながらスプーンでアイスを一口すくって、はるちゃんの口元に運ぶ。パクッとアイスを頬張ったはるちゃんは幸せそうだ。私もアイスを一口食べる。

うん!冷たくて美味しい!甘いものを食べると、自然と笑顔になるよね。自分の緩む頬に手をあて、そう言い訳をする。




「美味しかったね。」

「うん、今度はあーくんも連れて来ようね。あ、でも、生徒会で忙しいのかな・・。」

「春は引き継ぎがあって仕事が多いみたいだけど、もう少ししたら落ち着くらしいよ。俺も仕事いっぱいあるけど、それももう少しで終わるし。それに今度3人で遊園地行くじゃん。その時も美味しいもの食べようよ。」

「え?はるちゃんも忙しかったの!?今日私に付き合ってクレープ食べに来てもよかったの?」


はるちゃんがまずい!という顔になった。やっぱり忙しかったのに無理して連れてきてくれたんだ!


「今日は俺が真珠紅と来たかったんだよ。朝も言ったけど、最近一緒に帰れてなかったでしょ?それに、今日はほんとに少ししか仕事なかったから兄さんが変わってくれたんだ。兄さんも真珠紅についててやれって。環境が変わって疲れてるだろうからリフレッシュも兼ねてね。」


2人とも私に甘いよ。昔から。

今日は放課後はるちゃんとクレープを食べに行く約束してたから一日中うきうきしていた。クレープ食べている間も美味しくて幸せだったし、食べ終わってからあーくんとはるちゃんの優しさを知ってもっと幸せになった。


「はるちゃん、ありがとう。今日はすごくリフレッシュできたから、明日また頑張れそうだよ!」


笑顔でそう告げると、はるちゃんも笑ってくれた。


「真珠紅が喜んでくれて俺も嬉しい。・・・じゃあ、そろそろ帰ろうか。兄さんより遅くなるとうるさいから。」


はるちゃんが冗談交じりに言う。そうだね、と立ち上がろうとしたところで・・


!!!!?・・・・っ!何!?


後ろから引っ張られた。確か後ろは噴水のはず・・・。

何で!?

強い力で引かれ、後ろに倒れそうになる。身体が斜めに傾き、自分では立っていられなくなる。隣のはるちゃんに視線を向けると、焦った様子で私の方に手を伸ばしてくれている。私も必死にはるちゃんに手を伸ばそうとした。けれど引っ張る力が強くて、あと一歩のところで私の手が宙を漕ぐ。

何に引っ張られているのか確認したいのに、気を抜いたら全部持っていかれそうだ。


「真珠紅!!」


焦るはるちゃんに必死に手を伸ばす。


パシッ


はるちゃんの手が私の腕を力強くつかんだ。そのままはるちゃんの胸に引かれる。怖くて後ろを振り返れないまま、はるちゃんに顔を押しつけて抱きつく。はるちゃんからも背中に手を回されギュッと抱きしめ返してくれた。そっと上を見上げはるちゃんの表情を確認すると・・・噴水の方をじっと睨んでいた。


何がいるの?誰が私を引っ張ったの?どこに連れて行かれそうになったの?


混乱する頭で考えるけれど、一向に答えはでない。それより、私を引っ張った何かは消えたのか・・・それともまだそこにいるのか・・・・。怖くて確認するのをためらうけれど、いつまでもこうしていられない。はるちゃんの腕の隙間から様子をうかがう。すると、


!!!


噴水の水が人の形を模っていた・・・。

私、あれに引っ張られたの!?やだやだやだ。何あれ?怖すぎる。

人型の水は、まだこちらに腕を伸ばしていた。けれど、その形を保っていられないようで少しずつ崩れていく。段々と下に沈む人型を見ながら、私はまだ信じられない気持ちでいっぱいだった。あれが何なのか。どうして私を連れて行こうとしたのか・・・。また私の元に来てしまったらどうしよう。今度はちゃんと逃げ切れるのか。言いようのない不安と恐怖が私を満たす。


「真珠紅!瞳が・・・っ。」


瞳?私の瞳がどうしたの?

はるちゃんの背中に回していた両手を自分の両目に持ってくる。

あぁ、紅い瞳・・・。私の・・・紅い・・宝石の瞳・・・・。


その時、噴水の中で形をなくした人型の指先が沈むところが見えた。


『ひ・・・めさ・・・ま・・・。・・・ス・・・・レ・・・・ひめ・・・さ・・・・・。』


噴水はいつもと同じように水しぶきを上げていた。もう何もいない。はるちゃんが私を抱きしめていた腕を緩め、代わりに手を握る。帰ろうと優しく言われ、おとなしくそれに従った。人型が何か呟いていた気がするけれど、気づかないふりをする。怖いから。はるちゃんも何も言わず手を引いてくれる。


極端に口数が少なくなったまま、家の前に到着した。すると、はるちゃんが私の正面に立ち、両肩を強くつかんだ。少し痛かったけど、黙ってそれに耐える。


「真珠紅、これからは絶対1人で帰らないで。俺か兄さんのどちらかと帰るようにして。ちゃんと迎えに行くから。ちゃんと待ってるんだよ?」


真剣な目でそう語られたら否とは言えない。何より、私も一人で帰るのは怖い。あーくんとはるちゃんには迷惑をかけるけれど、ここは甘えようと思った。うんと頷くと、少し安心したのかはるちゃんがニコっと笑う。


「大丈夫、俺と兄さんが絶対守るから・・。」


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