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部活見学2

気を取り直して。


次は弓道部です。

さっきすこぉ〜しだけ見学した柔道部と空手部の道場がある廊下を更に先へ進む。突き当たりの扉は見学の為に開かれていて中の様子が見えた。


ほっ。女子がいる。


中を覗いて一番に確認しました。空手部は男子しかいなかったけど、弓道部は男女共にいるようだ。むしろ、女子の方が多いように感じる。壁際に立っている見学者たちも7:3くらいで女子の方が多い。


「見学する人は道場の中に入って壁際に並んでください。」


扉から覗く形で見ていた私たちに気づいて、弓道部の先輩が声をかけてくれた。先輩に返事をして薫ちゃんと壁際に向かう。見学者たちが並ぶ列の一番左端に立ち練習風景を見学する。


すると、髪を高い位置に一つにまとめた女生徒が的の前に立った。正面を向きスッと的を見据えると、一度目を閉じて体を横に向け両足を開いた。弓に矢を番え、頭上に持ち上げる。そのままギリギリと音をたてながら矢を持った肘を後ろに引いていく。頭上にあった弓矢が胸の高さまで下りてきた所で動きが止まる。

シンとした時間が続く。本当は2、3秒程の静寂だったのだろうけど、私には時が止まっているように感じた。


ヒュッ!!


矢が放たれ、的の中心に吸い込まれていった。





弓道部の見学が終わり、今度は2階の剣道部に向かうことにした。さっき見事な的中を見せてくれた先輩は部長だそうだ。とっっってもかっこよかった!!弓道についての説明もやさしく、丁寧にしてくれて分かりやすかったし、何より何十人の生徒たちの前でも堂々と話していた。


私もあんな風にかっこよくなりたいなぁ。


そんなことを考えていると、あっという間に剣道場に到着した。ここでも見学の為か扉は開かれていた。


まずは、男女比率の確認。


・・・・・はぁ、こんな事してるからいつまでたってもヘタレなんだよね。さっきの先輩みたいに堂々とした人になりたいのに。

そう思いながらも女子の人数を数えてしまう。


「見学する1年生!はじめに部についての説明があるから集まってください。」


男女比率を確認していると、中から見学者を集める声がかかった。


「真珠紅、行こう。」


薫ちゃんに呼ばれ、後ろをついて歩く。みんなが集まった中心に先程声をあげた先輩と顧問の先生らしき人が立っているのが見える。顧問の先生は長身でガタイがよく、髪型はツンツンした短髪だ。太い眉毛と胴着の上からでも分かる筋肉でとても強そう。いかにも武道をやってるって感じ。

見学者が集まったのを確認すると後ろまで聞こえるように大きな声で話しはじめた。


「今年度から剣道部は名前を改め、剣術・棒術部となった!」


・・・・・えぇ!?


思いもよらぬ発言に目を見開いた。周りの生徒たちもザワザワとし始める。


「実は昨年の3年生が引退してしまって、部員がだいぶ減ってしまったんだ。同じように人数が減ってしまった薙刀部の顧問と相談して、2つの部活を合併することになった。」


腕を組みながら仁王立ちで話す先生の横で、おそらく部長であろう生徒が細かい説明を始める。


「練習場所、練習時間など、基本的なことは何も変わりません。ただ今までは剣道だけ、薙刀だけをやってきたけど、これからは両方とも稽古していきます。基本を身につけた上でどちらか一方を極めるでも良し、両方に力を注ぐも良し。各々が選べるようにしていこうと思っています。」


はぁ・・部長に選ばれる人はみんな立派だなぁ。2つしか年が違わないのに凄く大人に見えるよ。

私も2年経ったらあんな風に堂々とできるのかなぁ・・。あ、そういえばはるちゃんも部長たちと同い年だ。入学式の時のはるちゃんもかっこよかったもんね。


って、そんな事を考えている場合じゃなくて!!

どうしよう。何部にするか悩むよ。


「今の話を聞いた上でもう一度入部するか考えてほしい。まぁ、一つより二つできた方がお得だろう。」


ニカッと白い歯を見せながら笑う先生はいたずらっ子のようだ。今日はとりあえず剣道の稽古だけ行うことを告げると見学する生徒たちを壁際に移動させた。




「真珠紅、どうする?今日の見学はここで最後の予定だったからもう少し見ていく?それとも今日はもう帰ろうか?」


薫ちゃんに問われて「う〜ん」と唸る。

正直、剣道だけを絶対にやりたいって思ってたわけじゃなくて、いろいろなことに挑戦して自分を成長させたい!って思って部活に入ることにした。なので、さっき先生が言ってた二つできた方がお得って言葉に少し惹かれた。

それに、人数は少ないけど女子もちゃんといるしね。


「もう少し、見学していこうかな。・・いい?」

「もちろん!!私が一緒に行くって言ったんだし、最後までちゃんと付き合うよ!」

「ありがとう。」


優しい薫ちゃんに感動しながらお礼を言い、剣道の稽古に視線を移す。

道場の中心では先輩たちの素振りがはじまっているようだ。規則的な動きだけれど、足裁きとかがとても難しそう・・・。それに、一言に素振りといってもたくさんの種類があるみたい。全部覚えるだけでも大変だと思う。

一通りの準備体操と素振りが終わると、今度は向かい合っての打ち込み稽古がはじまった。


パァン!パン!!パン!バシンッ!!!


面や胴、小手に打ち込むたびに大きく甲高い音が道場に響きわたる。また、音だけでなく気合いの入ったかけ声にも圧倒された。柔道部や空手部でも迫力に驚いたけれど、剣道部もすごいね。

打ち合い稽古をする先輩たちの中でもやっぱり部長が一際目を引く。武道だから部長じゃなくて主将って呼ぶのかな??後で確認しよう。


部長は一見線の細い長身の男性だ。顧問の先生よりは低いけれど、他の先輩たちの中では高い方に入ると思う。180㎝くらいあるのかな?髪はサラサラしていて男性にしては少し長め。耳の下辺りで切りそろえられていて襟足が首元を流れていた。切れ長の目にスッと通った鼻筋がとても美しく彫刻みたい。


美しいのは見た目だけではなく、その剣さばきにも現れていた。寸分の狂いもなく繰り返される技は他の部員とは別格だった。素人の目でもすごいって分かるくらい。


その後、部活終了時間まで夢中で稽古を見学していた。最初の方は隣にいた薫ちゃんや他の見学者の様子が気になったりしていたけれど、途中からは先輩たちの剣を振る腕の動きや足の動かし方に目線が急がしく動いていた気がする。稽古の最後には部長と顧問の先生の試合まで見せてくれた。結果は先生の圧勝だったけれど、部長もすごくかっこよくて強かった。

片付けが始まりザワザワとした道場の片隅でまだ胸がドキドキしている。


「真珠紅~そろそろ帰ろうか?もう1年生みんな帰っちゃったよ~。」


薫ちゃんの声にハッとする。辺りを見回すともう見学していた人たちが道場から出て行くところで残っている1年生は私と薫ちゃんの2人だ。


「ご、ごめん!稽古に圧倒されてボーっとしてた!」

「確かにすごい迫力だったね!最後の試合なんか瞬きするのも忘れてたよ。これだけ夢中で見学してたならもう真珠紅の部活は決定かな?」


そう言って薫ちゃんがニコニコ笑う。


「見学に来てくれてありがとう。剣道はどうだったかな?何か惹かれるものはあった?」


薫ちゃんと部活見学の感想を言い合っていると、片付けが一段落した部長が話しかけてきた。いきなりの登場に肩がビクっとなり、薫ちゃんの後ろに隠れる。

あぁ、またやってしまった。話かけてくれたのに隠れるなんてすごく失礼な態度だよね・・・。

分かってはいるんだけど不意打ちにはなかなか対処できない。


「すごかったです!とくに最後の先輩と先生の試合での緊張感に私までドキドキしました!!・・・ってこの子が言ってました!!」


ふぇっ!!?

薫ちゃん自身のことを話しているのかと思ったらまさかの私のこと!?やめてぇ~こっちに話を振らないでぇ~。ま、まだ心の準備が・・・・・・・・・・・・。


「ほら、真珠紅!」


薫ちゃんが私の方に振り向き背中を押す。部長の前に押し出される形になり緊張で軽くパニックになる。

あぅぅ・・ほらって何話せばいいの?


「ありがとう。今日は剣道だけだったけど、明日は薙刀の稽古も行うから是非また見学に来てほしい。」

「は、はい。また見学に来たい・・と・お、思いましゅ・・・・・。」


最後かんだ!!!!!せっかく部長が気を遣って話しかけてくれたのにかんだ!!!

隣の薫ちゃんが意地悪くニヤニヤとしてるのが分かる!口元を手で隠しながら肩がプルプルふるえてるもんっ!!!

くぅぅぅ・・・恥ずかしい。


自分でも顔が真っ赤になっているのが分かり、うつむきがちだった姿勢がより下を向く。両手をぐーっと握りしめ恥ずかしさに耐える。


「ふっ・・・・。」


!!?・・・部長も今笑ったよねっ!?絶対笑ったよね???


「じゅあ明日・・・期待して待ってる。」


耳に流れるサラサラの髪を右手で耳にかけ、部長が綺麗に微笑んだ。




   ************************************




剣術・棒術部を後にして今は帰宅するために校門に向かっている。武道場からは裏門の方が近くなるのでそちらから帰ることにした。今日見学した部活についてや、明日の授業の予定などたわいもないことを話しながら武道場の横を通り過ぎると、裏には緑色のネットを張った一角が広がっていた。


ここは何するところだろう?


好奇心からネットの方へ近づくと・・・


ヒュ!パン!

と何かが一直線に進み、的に刺さる光景が目に飛び込んできた。的に刺さっていたのは一本の矢のようだ。一瞬先ほど見学した弓道かとも思ったけれど、少し道具が違う。


「真珠紅~どしたの?・・・あー、アーチェリー部だね。まだ残って練習してる人がいたんだね。」


後ろからついてきてくれていた薫ちゃんがそう言って私の隣に並ぶ。


ヒュ!パン!

もう一度矢が放たれる。弓を引く人の顔はここからでは見えない。それでも・・なぜだかその人の所作や空中を切り裂くような矢から目が離せなくなる。


何だろう・・・懐かしいような、切ないような・・。よく分からない感情が胸の中を駆け巡る。


「えっ!?何で泣いてるの!?」


薫ちゃんの声に意識を引き戻された。そこではじめて自分が涙を流していることに気がつく。右手で頬を撫でると指先に湿った感触が伝わった。どうして涙を流しているのか自分でも分からない。気がついたら泣いていたのだ。悲しいわけでもないし、痛いわけでもない。ただただ切なく、胸がキューっと締め付けられる感覚・・・。


「・・・大丈夫?どこかに座る?」

「ううん、大丈夫。・・・何でもないの。ただ・・・」

「?」


まだ止まらない涙を手の甲でグイっと拭き取り、無理矢理泣き止む。薫ちゃんはなかなか続きの言葉を発しない私を心配そうに見つめながらも静かに待っていてくれてる。・・・やっぱり優しいね。


ヒュ!パン!

そこでまた矢が的に刺さる音が聞こえた。私は一度的に目を向けもう涙が出ないよう両目をギュッとつむる。ゆっくりと目を開け薫ちゃんを真っ直ぐ見つめ・・・


「私、アーチェリー部に入るねっ!!」


笑顔でそう宣言した。



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