脳破壊
脳破壊
精神の核が破壊された時、それは訪れる。脳だけ破壊するその現象は、生活に善をもたらすのか、悪をもたらすのか。
20xx年。脳破壊は人類の恐怖でもあり、神でもあり、心の状態を世間に広められる心が壊れた者の、悲痛の声にならない叫びであった。
脳破壊は善なのか、それとも悪なのか。善を好むものはそれを悪だと非難をし、どうでもいいと思う奴らは自分の考えなどとうに捨て、その場かぎりの答えを、吐き捨てるように、重みなど考えず、簡単に人を傷つける。そんな人はどこにでもおり、そしてまた自分もその中の1人である。
脳破壊のシステムは分かっておらず、ただ分かっていることは、精神の核が破壊された時、脳破壊は始まる。
脳破壊が始まった時、人は恐怖を感じるのか、果たして喜びを感じるのか。
なぜ脳破壊が始まったのか、脳を調べても、身体中切り開き、耳の中から、鼻の中、すべての器官を調べても
何もわからない。ただ脳が破壊されるだけである。
脳破壊に恐怖し生きる毎日は実に楽しいという奴もいるが、自分の方が優秀であると、人を非難し、下げることでしか、自らの存在理由を作れないものは、苦しい毎日だろう。
脳破壊が始まった頃から、インターネットは変わった。規制される言葉も多くなった。自分の手も足も、言葉も、心も全てが武器になり得る。そのことをようやく理解しはじめたのだろうか。いや、自分が死ぬということが近い存在になってしまったからだろうか。他人が死んでも、お構いなし、心配するフリだけは一丁前、そんな世界、脳破壊が生まれて当たり前だ。
僕は彼女が脳破壊で死んだ。僕の目の前で。ただ抱きしめ、天国か地獄かも分からない、ただその時をじっと、ずっと待つしかなかった。言葉を発することもなく、ただじっと、ただじっと。
バイト先でのことだった。僕と彼女はバイトの喫茶店で出会った。別に運命だとかそんなもの全く感じなかった。ただ出会ったのが彼女だった。とは言ってもすぐに僕はバイトをやめた。嫌だったとか考えたこともないけど、理由をつけるとしたら、バイトをする意味がなくなったから、だ。
でも僕は、元バイト先の喫茶店に通い続けた。彼女もいるし、当時学生だった僕にはちょうどいい勉強場所だったから。
彼女と休みの日に会うと、必ず、バイトの愚痴をこぼしていた。笑いながら。別に気にすることでもないよねって言っていたかな。ただ、どんどん愚痴を溢す顔は重くなっていった。「止めよう。」その一言を言えば、今、彼女は隣にいるだろうか。
僕は思う。人には人の桶がある。その桶はきっとそれぞれ種類があって、その分け方も様々。彼女は「陰口」という桶が小さかったんだと思う。死んだからどうかは知らないし、聞けないし、聞いても答えは返ってこないけど。ただ僕はそう思う。でもそれは、個人差が伴う。彼女にとってひどく辛いもので、口の中にゴキブリを入れられているような感覚だとしても、「陰口」の桶が大きくあまり気にせず、どうでもいい、仕方がない、と割り切れる人間は、考えすぎ、悲劇のヒロインぶってかわいそうアピールだと、蔑むのだ。
違うだろ。その人にとって辛いことは辛いことだろう。何が大きく、何が小さいとか関係ない。ただ辛いんだ。
その時は突然やってきた。彼女がバイト中急にふらつき、その場に崩れた。周りに人が、砂糖を見つけたありのように集まる。心配でもなく、ただ、興味本位で集まるありたちの姿は、今でも反吐が出るほど、気持ちが悪いものだ。裏に運ばれていった彼女を気にかけながらも、貧血でも起こしたのかな、としか思っていなかった。こう考える、僕もグズだ、という人もいる。僕の周りの奴らに彼女が死んだ時正しく、このセリフのように責められた。「何故、あの時すぐにこなかった。」「心配じゃなかったのか。」と。僕にとっては正しい行動だった。誰に何を言われても。心配をする=駆け寄る?すぐに駆け寄って彼女は心身的に正常に戻れたのか?お前がああすれば、こうすればと根拠のない自信を抱き、自分の正義を振り回し、誰かを責めていることに気がつかない。お前が死ねと何度思ったことか。
その後、焦った顔した店長が僕の元へやってきて、すぐに来てくれと言った。多分、僕が医大生だったから、頼ろうとしてたんだと思う。僕はそのまま、バイトの控え室に入って行った。
入った時、僕は言葉が出ないということがどういうことなのか、身を持って感じた。僕の目の前にはひたすらに膨張し続ける頭部と、鼻血を出し、全身が血なのか、それとも皮膚が赤いのか分からないことになっている彼女がいた。何故?何故なんだ?とただ見つめることしかできない僕は、彼女に近づき、ただ抱きしめた。違う、抱きしめる事でしか、僕の視界から、謎の姿になった彼女を消すことができなかった。
彼女はぎゅっと小さな幼児のような力で抱きしめ返してくれた。涙ってこういう時に出るんだな、と思った。
彼女の最後はあっという間だった。脳が膨張に耐えきれず、爆発。ただ、それだけ。本当にただそれだけだった。
言葉、戦車、銃、手。全てが人間によって生み出され、全て、何かを傷つける。
脳破壊は心、精神が傷つけられ、脳が破壊する。
言葉を救いとして使うか、攻撃するものとして使うか。お好きにどうぞ。
脳破壊 cocomi
ぱっと浮かんだお話を書いてみただけです。あまりまとまりを意識しておらず、ただ書いただけなので、何かお疲れの時、時間が空いている時などに気軽に読んでくださると、嬉しいです。感想など頂けますと。励みになります。