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第六話 小テスト

 優花と隣になった翌日、いつも通り松田とくだらない話をしながら登校する。教室に入ると


「まあ、そうなるよな。」


 周りからの視線が厳しい。嫉妬の感情が丸わかりだ。どうせ付き合えないなんて分かっているのに、馬鹿馬鹿しい。

 そんな奴らを冷たい目で見ながら俺は新しい席に座る。新しい席は最後尾だ。もう優花は学校に来ていて、席に座っている。


「おはよう。」

「おはようございます。」


 とりあえずカバンを机の横にかけ、必要なものを机の中に入れる。今日提出する宿題もやってあるし、小テスト対策も万全だ。やることもないのでそういう時は松田の席で雑談する。

 しかし今、俺は優花の右隣の席だ。別に隣の人と話すのは当たり前のことである。この立場を利用しよう。そう思い優花の方を見ると、優花はこっちを見て微笑んでいた。


「どうかしましたか?」

「いや。小テストの勉強しないの?」

「もうやってあります。」

「さっすが優等生。じゃあ私に教えてよ。」

「え?吉崎さんも…、」

「教えて?」

「はい。」


 俺はテスト範囲の所の教科書を二人の机の間におく。しかし実際になにかを教えたりはしない。優花はいつも成績はトップクラスで俺が教えることなんてないのだ。

 じゃあなぜ優花がそんなことを言ったのか、それを察したから俺はそのことを言わなかったのだ。決して優花の刺すような視線にビビったわけではない。決して。


「今日の放課後、ケーキ食べに行かない?」

「ケーキですか?」

「そう。先週見つけたんだけど、おいしいイチゴのショートケーキがあるの。」

「行きましょう。お金もあるので驕りますよ。」

「いやいや。割り勘にしようよ。」

「いえ。俺が出します。」

「そう?じゃあお言葉に甘えようかな。」


 少しは彼氏らしく振舞えただろうか?と思っていると担任の栗原先生が入ってきた。朝礼の時間のようだ。先生は定年が近いご老体で、少しボケているところもある。

 栗原先生がなにか話しているが聞いている人は少ない。小テスト勉強やおしゃべり、睡眠などやっていることはさまざまだ。


「えー。今日も元気にやっていきましょう。」


 栗原先生の話が終わり、1時間目、英語の安部先生が入ってきた。




 英語の授業は何ごともなく終わり、休み時間、次の2時間目の数学は小テストがある。


「航平!教えてくれ!」

「はあ?今からやっても手遅れ。諦めろって。」

「まあまあ。そんなこと言わずに教えてあげなよ。」

「吉崎さん…」

「…分かったよ。仕方ねえな。何が分からないんだ?」

「…分からん」

「は?もしかして…、何も分かってないのか?」

「おう。教えてくれ!」


 こ、こいつ…。授業中何やってんだ?チラッと優花を見ると優花も苦笑いしている。


「教科書読んどけ。以上。」


 文句を言う松田をあしらい、席に戻らせる。


「あはは…大変だね…。」

「まあな。」

「そうだ。今回の小テスト、勝負しようよ。」

「勝負?」

「負けた方が勝った方の言うことをなんでも1つ聞くってどう?」

「その勝負乗った。」


 俺と優花の成績は同じくらいだが、今回俺はいつも以上に勉強している。さらに朝、優花と話している時、優花とテストの話をしたが、まだあまり理解できていない様子だ。

 この勝負、もらったな。後は計算ミスさえ気をつければ…




 2時間目の数学、小テストが始まった。数学の明智先生は大雑把で小テストの時間も適当に決める(ほとんど長い)、それに小テスト中、先生は教室を出てどこかに行ってしまう。それゆえにカンニングなどし放題だ。まあ、そんなことをする奴は定期テストで痛い目を見る。

 今回の小テストも案の定、10分有れば余裕で終わる問題だが20分も取り、テストが始まってから先生はどこかに行ってしまった。


 さて、パッと見たところ難しい問題はなく、どれも解けるな。この勝負はもう勝ったも同然。と思い順調に解いていく。5分くらい経った時


「どう?簡単?」


 優花が耳元で囁いてきた。俺は驚きのあまり思わず悲鳴をあげるところだったが抑えた。


「まあ、簡単ですよ。」

「だよねえ。」

「今テスト中ですよ。静かにしないと。」

「知ってるよ。だから、囁いてるんだよ。それに、ほら。」


 優花が指さした方には、答えを共有してる奴らがいた。よくもまあ堂々とやるもんだな。


「だからって俺らがやる必要ないですよ。それにそんなことしたら勝負の意味がないじゃないですか。」

「そんなことはしないよ。」

「じゃあどういうつもりですか?」

「それはね〜」


 優花は俺の方ににじり寄ってくる。俺は身の危機を感じるがもう遅かった。


「こうするの。」


 そう。俺の左腕に抱きついてきた。胸の柔らかい感触が腕に当たる。


「や、やめろって。」

「そんな大きな声出していいんですか?クラスメイトにバレますよ?」

「う…、じゃ、じゃあ抱きつくのはやめてくれ…」

「どうして?」

「あ、当たってて集中出来ないんだが…」

「フフッ。嫌です。そんなことより、テスト終わるの?」


 優花は小悪魔のような笑みを浮かべている。

 …こいつわざとやってるな。いいだろう。この状況でも問題は解ける。左腕の柔らかい感触はクッションだと思えばいい…これはクッションだ…、集中しろ…


「緊張してるの?リラックスしなよ〜。そうしないと間違えるよー。」

「ざ、残念だったな。お、俺はこの程度じゃな、なんともないんだよ。」


 そう言って俺は解き進める。ただまともに頭が働いていないせいで合ってるか不安だ。

 優花はその様子をチラッと見ると俺の耳に口を近づける。


「はーい。リラックス、リラックス〜。」


 俺の耳元で囁き、息を吹きかけてくる。これでは集中どころの話ではない。全身がくすぐったいしゾワゾワする。理性が飛びそうになる。


「ほら、後3分だぞ〜。終わるの?」


 終わるわけないだろこんな状況で!うう…、頼むからもうやめてくれ…

 そんな時教室のドアが開き明智先生が入ってきて


「はーい。おしまーい。集めてきてー。」


 俺は解答用紙を見る。…全然解き終わってないし、間違いもある。


「どうだった?」

「う…」

「フフッ。私は全部出来たよ。」


 く…、やられた…。


「私の勝ちだね♪」

「何をすればいいんだ…」

「う〜ん。今度、お家に案内してよ。」

「う、家に!?」

「そう。よろしく〜。」


 またとんでもない約束をしてしまったものだ。まあお家デートができると思うと嬉しいが。


 こうして2時間目のテストが終わり、俺は3時間目の国語までボーッとしてしまった。


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