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第四話 初デート

「やべえ。緊張してきた」


 俺は待ち合わせ場所の北沢公園に着いた。現在時刻は7時。待ち合わせ時刻は8時だ。時間を間違えたわけではない。ただ昨日のうちに時計を1時間早くしていただけだ。なぜかって?そりゃ楽しみだからに決まってる。


「あれ?航平君早いね〜」

「早くないですか?」

「お弁当作るために早起きしたら早く起きすぎちゃって普通に時間余っちゃったからここで待ってようと思ったの」

「そうですか。待たせてすみません」

「いいのいいの。ちょっと早いけど行こうよ」

「はい。持ちますよ。お弁当」


 俺は優花のお弁当を奪うかのように取って歩き出す。優花は一瞬呆気にとられていたが慌てて後を追ってきた。優花の「ありがと」というつぶやきは歩き出した俺には聞こえなかった。


「待ってよ〜」


 優花は俺の右隣に並ぶと俺の手を取ってきた。


「えへへ…、手繋いじゃった」

「な!?」

「いやだった?」

「ぜ、全然、むしろ嬉しいです!ただいきなりでびっくりしちゃって」

「恥ずかしい?顔、赤いよ」

「う…、そ、そっちだって赤いですよ」

「そりゃそうだよ〜恥ずかしいもん」


 平気でグイグイ来る優花にたじろぎ、ドキドキしてしまう。落ち着け、俺。


「手、大きいね」

「え?」

「大きくて安心するなあ」

「そ、それはよかったです。男子ですから手も女子より大きいです」

「そうかなあ。私の弟の手なんて小さいよ〜」

「兄弟いるんですか?」

「うん。妹と弟」


 そうだったのか。今度会ってみたいものだ。


「今度紹介するよ」

「ありがとうございます」

「航平君は兄弟いる?」

「兄が1人です」

「へえ〜。今度紹介してよ」

「はい」



 町をブラブラすること数分、俺たちはいろんな話で盛り上がっていた。好きな食べ物とか好きなアニメなど様々な話をしていた。しかし、そのいい空気をぶち壊し、かつ学校生活を破綻させるかもしれない存在が現れた。そう、松田だ。あいつのことだ。この光景を見たら冷やかし、学校中に広めるに違いない。そんなことをすれば僕の学校生活は終わりだし、何より優花が傷つく。そんなことはさせられない。


「ちょっと待って」

「どうしたの?」

「少しここに入って休もう」

「…そうしようか」


 優花は俺の表情を見て察してくれたらしい。すぐに左の喫茶店に入る。松田は気づいていないようだ。しかし俺は後悔した。なぜならこの店は俺と松田の行きつけで松田が入る可能性も高い。とりあえず1番入り口から遠い席に行こうとする。


「ねえ。こっちの方がいいよ」


 いきなり優花は俺を引っ張って入り口の近くの席へ座らせる。どうやら優花に俺の不安は伝わってないようだ。これはマズい。


「大丈夫。ここなら見つからないよ」

「え?どうして…」

「だってここは入り口からは死角だよ。それに奥に行ったら出るとき絶対見つかるよ」


 そうか。言われてみてば。ここは入り口からは見えない。しかもこっちの席は人も多く席を確保するには別の方向に行くはず。なるほど。


「ありがとう優花助かったよ」

「誰がいたの?」

「松田」

「ああ。なるほど。私はあかりちゃんがいるからかと思ったよ〜」

「え?斎藤さんが?」

「うん」


 なんでこういう日にクラスメイトが外にいるんだ。と思っていると衝撃的な光景を見てしまった。


「へぇ〜。松田君ってこんなところに行くんだね」

「お、おう。普段は航平と一緒にな」


 なんと松田と斎藤さんが2人でこの喫茶店に入っていった。そうだ。明日にでも冷やかしてやろう。


「意外だね」

「俺たちの方が見られたら驚かれますよ」

「そうかな?」

「そうですよ」


 そんなことを話していると松田と斎藤さんは優花の予測通りの方向へ行き、俺たちには気づかなかった。


「言ったでしょ。大丈夫だって」

「はい」

「じゃあ、あと数分したら行こうか」

「そうですね。次は…ってもうすぐお昼ですよ」

「本当だ。じゃあご飯にしよっか。どこで食べよっか?」

「もう少し歩いたらフードコートあるんでそこにしましょう」

「分かった。じゃあ、行こうか」




 俺たちはフードコートに来ていた。人が多く、ここならクラスメイトにバレることも無さそうだ。俺は一応バレにくそうな席を取り優花の弁当を開けた。


「これって…」


 なんと俺の好物のウィンナーやだし巻き卵、そしてピーマンが入っている。俺の好物だらけだ。その上配色も上手く、見るからに美味そうな弁当だ。俺は好物のウィンナーから食べ始める。


「…」

「どう…かな?」

「美味い!」


 優花の作った弁当は無茶苦茶美味かった。俺はどんどん食べ進めてあっという間に平らげてしまった。優花は自分の分の弁当を食べたようだ。


「はい。これもどうぞ」


 優花は小さな箱を渡してきた。その中にはイチゴが入っていた。


「ありがとう。でもなんでこんなに俺の好物知ってたの?」

「た、たまたまよ!べ、別にずっと見てたわけじゃないし…」

「そ、そうか」


 触れてはいけなかったようだ。すると優花は箱の中からイチゴを差し出してきた。


「はい。あーん…///」

「!!」

「ほら!あーん!///」

「モガッ」


 優花は顔を真っ赤にしながら俺の口にイチゴを押し込む。


「おいしい?///」

「はい。でもいきなり押し込まないでくれよ…」

「ごめん。恥ずかしくって…」


 こっちの方が恥ずかしいわ!隣のテーブルの2人の女子高生はこっちを見てひそひそとなにかを囁いている。


「そ、そろそろ行くか!」

「う、うん。そうだね」


 この空気にいたたれまれず俺たちは急ぎ足でフードコートを出る。





「今日は疲れたね〜」

「はい」


 あれから2人でまた町を歩き、クレープを食べ、無事にデートを終えて今、俺は優花を家に送っていた。


「そうだ。次は俺が弁当作るよ」

「作れるの?」

「はい」

「じゃあ楽しみにしてるね。あ、航平君の分は私が作るよ。」

「ありがとうございます。楽しみにしてます!」

「それじゃ。私ここだから」

「はい。また明日学校で」


 優花と分かれて1人歩いて家に帰る。とても楽しかったが、ホワイトデーまで、これが俺の頭の中に残り心から楽しめてない気がした。俺は真っ暗になった夜道を一人家へ向かって歩いて行った。




「ただいま〜」

「どうしたの優花?遅かったじゃないの」

「ごめん。ちょっと出かけてたの」

「もうすぐご飯よ〜。着替えてきなさい」

「はーい」


 私は部屋に戻りベッドに顔を埋める。


「うう…恥ずかしかったあ…」


 足をジタバタさせながら私は笑みが止まらない。とっても楽しかった。お弁当も喜んでもらえたし、満足だ。でも…


「航平君…どうしたんだろう?」


 最初は恥ずかしがってるだけかと思ってたけど何か表情に曇りがある。悩みでもあるのかなあ。今度聞いてみよう。そう思い、私は食卓に向かった。


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