表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/32

第二十二話 赤坂航平の過去(氷堂凛編②)

 凛と担任の吉村先生が…?そんなの…ありえないだろ…


「ありえないだろ…って顔してるね。でもね、私は見たんだよ。あの2人が毎日クラス委員の仕事と言いつつ2人きりの生徒指導室に入っていくところを、ね?」

「いや、そんなのただの見間違いじゃ…」


 流石にそれはない。内田さんが動揺して見間違えただけだろう。


「まあ、生徒指導室行ってみれば分かるよ。今から行くんでしょ?生徒指導室」

「あ、ああ、そのつもりだけど…」


 俺が生徒指導室に行こうとしてること、どうして知ってるんだ?


「それじゃ頑張って…」


 そんな声をかすかに聞きながら俺はフッと意識を手放した。


「…踊ってきてね、何も知らない哀れなお人形さんとね…こうくん」





 気がついたときには内田さんはいなかった。なんだろう、頭がモヤモヤする。時計を見ると、あの時から5分ほど経っているだろうか。今から急げば間に合うかもしれない。

 俺はゴミ箱を教室に戻し、全力で生徒指導室に走った。



 生徒指導室に着き、扉を乱暴に開ける。そこには服装の乱れた凛と凛に手を伸ばして少し息が荒い担任が驚いた表情でこっちを見ていた。


「航平君…!」

「…やっぱり、内田さんの言う通り、か…」


 凛は俺にこの光景を見られたくなかったのだろう。慌てて先生の手から離れ、服を整えながら俺のところに寄ってくる。


「あ、赤坂…お前なんでこんなところに…!」

「いや…先生と凛がそういう関係だっていううわさ話を聞きまして…」


 やっぱり凛と先生はそういう関係だったのだ。苛立ちや怒り…といった感情はなく、ただただ呆れ返ってしまう。もしかしたら俺は今とても冷酷な目をしているかもしれない。


「いや、赤坂、これは…誤解なんだ。お前ならわかってくれるよな?」

「ええ、分かってますよ。由緒正しき我が校にいじめたり、生徒に無理やり手を出す教師なんているはずないですものね。指導の途中、失礼しました」

「ちょっと航平君…!?」


 そう言って俺は凛を振り払い生徒指導室を出る。

 ああ。そうだ。俺は凛に遊ばれていたのかもしれない。凛が俺のファンだっていうのも嘘なんだろう。そうに決まってる。

 モヤモヤした気持ちを抱えたまま、昇降口へ向かう。すると


「どうだった?」


 まるで俺を待っているかのように内田さんが待っていた。


「どうもこうも、内田さんの言ってることが真実だったよ」

「あはっ、そうなんだー。まあそんな落ち込まないの。氷堂さん、そんな風に見えないもんね」

「…慰めはいらない。こんな時間まで残って何の用だ」

「真実を知りたかったーっていうのとほかにまだ野暮用があるんだぁ」

「そうかよ、じゃあな」


 俺は下駄箱で靴を履き替え帰ろうとする。


「まぁまぁ待ちなよ。勇気を持って確認してくれた赤坂君に、伝えておきたいことがあってね」


 …本来なら一刻も早く帰って心のモヤモヤを消化したかったが、足が止まる。


「なんだ今度は」

「信用できないって顔してるねえ」

「確かにさっき言ってたことは当たってたかもしれないが、お前のいう事が必ず合ってるとは限らないからな」

「ふーん。それじゃあ私が色々知ってることを教えてあげようかな。まずは、あの氷堂さんが着てたジャージ、赤坂君のだよね?」

「どうしてそれを…?」

「私には分かるんだよ。まぁそこは置いといて、そのジャージ、返してもらってないでしょ」

「ああ、そうだな。そういえばまだ返してもらってないな…」


 …こいつ、何をどこまで知ってるんだ?薄気味悪いやつだと思うが、内田さんの言ってることは全て正しい。まだ凛にジャージを返してもらってない。


「どう?私は色んなことを知ってるよ?他にも…」

「なんでそんなに詳しいんだ…もしかしてお前が凛のいじめに…」

「あはっ、ないない。確かに氷堂さんは嫌いだけど、いじめなんてそんなものに加担しないよ」

「じゃあどうして…」

「基本、情報は命だからね。集めることにしてるのさ。そんな私が赤坂君にいいこと…まあよくはないけど、教えてあげようかな」


 そう言うと内田さんは薄気味悪い笑みを浮かべ俺の額に手を伸ばしながら


「氷堂さんは、きっと君のファンではないよ。ただの近づく口実。そして、氷堂さんへのいじめ、黒幕は神崎さんだよ。理由は…君なら分かるよね?」


 そう聞いた瞬間、俺の意識はまたもや途絶えた。


「凛、か…。さぁ、これから2年間、踊り苦しんでもらうよ。あはっ」


 その声は誰にも聞こえることなく虚しく響いただけだった。




 フッと気づくとすでに内田さんはいなくなっていた。あまりのショックに意識が飛んでいたようだ。内田さんも野暮用を済ませに行ったのだろう。

 俺は気を取り直す…ことはできないが、靴を履き直して学校を後にした。その時


「おやおや、どうしたんですか先輩。辛気臭い顔してますねー。トイレですか?学校で済ませて来ればいいのにー」

「…デリカシーとかないのか…千歳」


 川澄千歳。1つ下の後輩だ。なぜかいきなり絡んできたよくわからないやつ。こいつもまた何故か男子から人気がある。見た目は美少女だからかもしれない。僕っ子なのも萌える要素なのだろうか?


「僕と先輩の仲じゃないですかー?デリカシーも恥じらいも必要ありません。そんなことより、なんでそんな顔してたんです?」

「お前には関係ないことだよ」

「んー…凛さんのことですかね。それなら聞かないでおきましょー」

「分かったならもういいだろ」


 千歳は えー と言いながらこれ以上追及する様子はなさそうだった。しかしいきなり俺の前に立ち俺の方を向いて歩きだした。後ろ歩きである。そして顔を思いっきり俺の方に近づけてきたのだ。危うくぶつかってキスしてしまいそうになり、慌てて顔を反らす。


「おい…川澄!」

「…んー?これって…?」

「川澄…?」

「これは…いや…可能性も…」

「おーい、川澄?」


 …俺の顔を覗き込んできたと思ったらいきなり考え込んで動かなくなった。声をかけても反応がないので仕方なく置いて帰る事にした。



 その後の帰り道、凛から電話があったが、どうしても出る気になれず、スルーした。




 家に帰り、夕食を取り、風呂に入り…と諸々やった後にベッドに倒れ込む。いつのまにか夜の0時になろうとしていた。


(凛も凛だが、いじめの黒幕が茜…か)


 確かに心当たりはある。松田から聞いた話だが、茜は文化祭の時、俺に告白しようとしていたらしい。ただ、俺が先に凛に告白してしまったため告白はされなかったらしい。


(女子の恨み!怖…)


 ただ、凛も凛だ。先生とそういう関係でいたなんて…


 そう思いながら、ケータイに入っている写真を眺める。俺が出てたバスケの試合の写真だ。

茜が毎回応援に来ているのがよく分かる。しかもその写真には内田さんも写っているものもあった。しかし、そことは別のところではあるが、毎回凛がその写真に写っているのだ。顔を赤くしながら何かを叫んだり、俺がシュートを決めた写真では、ガッツポーズしたりしている。


(あれ?凛が俺のファンってこと、嘘じゃない?)


 内田さんの言っていることが嘘だったのか。それとも別の選手を応援してたのか。それは分からない。


(っ!急に頭が…)


 急に頭が割れるように痛みだす。しばらくこらえていると、痛みが引いていき、さっきからずっとモヤモヤしていた思考がクリアになるのがわかる。


(いや、待て待て!凛が先生に無理やりそういうことをされたって可能性はないのか!?)


 なぜそれが出てこなかったのか自分でも不思議だが、とにかく謝ろう、そう思い慌ててケータイに電話をかける。しかし、凛は電話に出なかった。


(…今日はもう遅いし、明日学校で謝ろう。何やってんだ俺)


 俺はとりあえず寝る事にした。凛が自殺してるなんて夢にも思わずに。



 翌朝。学校にいつもより早く登校したものの凛がいない。

 朝礼になってもいないので熱でも出したのかと思っていると、担任が蒼白な顔をして入ってきた。


「みんな…氷堂さんが…自殺したらしい…」


 え?

 クラスは驚きのあまり一瞬で静寂に包まれた。

コメント、高評価、感想など、とっても筆者の励みになるのでよろしくお願いします!✨

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ