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第二十話 崩れゆく日常③ (優花編)

 航平君が屋上を出て行った後、私は1人考えていた。


 殺した?よりにもよって神崎さんが?なんで?航平君が何を言っているのかわからない。流石に嘘だろう。何かのドッキリ?そうじゃないと納得ができない。ただ、電話でのあの怒鳴り声を見るに、ドッキリではないんだろう。

きっと、なにか勘違いをしている。今日の夜、航平君に詳しく聞いてみよう。そうすればきっと、何かがわかるはずだ。私はそう思い、屋上から教室へ戻った。


 夕方の帰り道、航平君と久しぶりに帰る。経緯はどうあれ、一緒に帰れることは嬉しい。でも、聞かなきゃいけない。


「ねえ航平君。神崎さんに怒鳴ってたけど…何があったか、教えてくれない?」

「…どうしても聞きたいのか?知らない方がいいってこともあるぞ?」

「いや、教えて。なんで2人がそんな関係なのか、昔は仲良い幼馴染だったじゃない」


 そう。昔は仲良かったはず…なのに…


「聞きたいならいいけど…」

「うん。お願い」

「俺には昔、氷堂凛って彼女がいたんだ」


 氷堂凛…


「も、元カノいたんだね」

「まあな、すごいかっこよくて可愛いやつだったな…」

「か、可愛いって…ふーん」

「お前に…少し似てる気もするなぁ…」

「へっ!?私に?」


 私が氷堂凛に似てる…ねぇ…


「お、おう。なんでそんな驚いてるのか分からんが…で、その凛なんだけどな…死んじまったんだよ」

「死んだ?どうして?」

「いじめが原因とされてる。そのいじめグループの裏に茜がいるんだ」

「…そうなのね」


 この調子で他の3人のことも聞けた。白河遥。長谷川美咲。菅原智恵。3人…か。他の女との関係を聞いてると少し嫌な気分にはなるけど、私は航平君の全てを知ってるわけではない。でも今航平君が言っていることは何か引っかかる。


「こんな風に、俺と仲良くなった女子は死んだり退学に追い込まれて来た。優花と付き合おうってなったのは凛と似てるからってだけなのかもな…恋愛感情とかじゃない、のかな…」

「…ごめんなさい。辛いこと聞いて」

「いや、気にしないでくれ。勝手に喋ってるだけだ」


 今でも氷堂凛のことを想っているその誠実さ、やっぱり航平君はいい人だ。それとも、もう気づいているのだろうか。


「優花」

「なに?」


 航平君は悲痛な顔をしていた。なんだろう。


「俺たちさ、別れよう」


「え?」

「俺は、優花を利用してただけだよ…凛と似てる優花になら恋愛感情持てるかもしれない。過去のことを忘れられるかもしれない。そう思ってた。期限つき、それも魅力的に聞こえたんだ」

「…」

「それで、やっぱり思ったんだ。俺は人を好きになれない。最低なやつだな、俺。ははっ」

「そ、そんなこと…

「無理にフォローしなくていい。俺らが別れれば、優花も茜に狙われない可能性も出てくるしな」


 言葉が出てこなかった。別れる…か。


「ほら、優花。泣くなよ。それじゃあまた明日な。茜には気をつけろよ」

「ま、待って…

「俺みたいなやつに、告白してくれてありがとうな」


 そう言うと航平君は行ってしまう。私はその場に泣き崩れる…ことはなかった。泣きたい気持ちで山々だけど!


「そう…。やっぱりあなたは…でも、少し嬉しいかな。振られたのは悲しいけど…」


 私はすぐに部屋に入り、部屋の鍵をかけてある引き出しからケータイを取り出し、神崎さんにメールを送る。


「…ここまで、長かった。でも、やっと1つ分かった。まだまだこれから…よね」


 私のつぶやきは誰にも聞こえることなく、私の部屋の中にこだました。

 その時神崎さんからメールが届く。どうやら昼間に電話してたことについてか。今日ではなく明日にしたいとのことだ。私はあえて返信しなかった。そしてそのまま家を出た。




 この2日後、盗難事件が発生したらしい。私がそれを知ったのは航平君にフラれてから3日経ったあとだった。それまで私は学校を休んでいたのだ。


「優花〜、私の気に入ってたストラップ、なくなったんだよ!酷いと思わない!」


 そういうのはののは。どうやらののはも被害者のようだ。


「大変だね…早く見つかるといいね、ののはのストラップも、犯人も」

「本当だよ!」


 私には今は、そう言うことしか出来なかった。



 それからうちのクラスでは盗難事件が相次いだ。私の単語帳も無くなっていた。


(絶対におかしい…うちのクラスで一度にこんな盗難事件なんて起こるのかしら?)


 うちのクラスで今まで盗難事件なんて1度も起きたことがなかった。それが今の時期に一気に起こるのは何かがおかしい。


(それに、何で犯人はこんなに盗難事件を起こすの?しかも、単語帳とかボールペンとか、盗る物もおかしい…)


 お金を盗る、ならまだ分からなくはないのだ(分かってはいけないんだけども)でも、ボールペンや単語帳を盗ることに何の意味がある?目的が分からない。


「そうか…茜ちゃん…あなたの言ってたことって、そう言うことね」


 そして導かれた1つの答え。私もそろそろ動くべきだろう。そして、全てが終わった時、航平君には恨まれるだろう。それでも…

 私は担任の吉村先生のところへ向かい


「先生。私、赤坂君が加藤さんの体操服を盗ろうとしてるのを見ました」


 と告げた。

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