表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/32

第二話 俺に彼女が出来た日(後編)

放課後。ずっと教室で待っているのも嫌だったので図書室で勉強することにした。図書室にいる奴の表情を見るとやっぱり2つに分かれていた。

 すごく嬉しそうな男子。いわゆる勝ち組と、こっちの方が圧倒的に多いが落ち込んでいる男子。いわゆる負け組だ。


 俺は前者に分類される身だなあ、と思ったがあまり嬉しいとは思わなかった。実を言うと俺の好きな女子は吉崎さんなのだ。でもあまり実感が湧かない。


 チラッと時計を見ると4時15分だ。そろそろ行くか。



 教室に入ると1人の女子が窓の外の校庭を眺めていた。その女子、吉崎さんは振り返ると俺に微笑んだ。

 吉崎優花、黒髪のセミロング、身長は俺より少し低い。この学年のアイドルとされ、男子女子両方から人気だ。


「待ってたよ。赤坂君。」

「どういうつもりですか吉崎さん。」

「どういうつもりって?手紙、見たでしょ?」


 何故、俺が一言目からどういうつもり、って聞いたかというと手紙のことも気になってはいる。だが今はそんな些細なことを気にする状況ではない。

 吉崎さんは手にナイフを持っているのだ。夕陽が眩しくよく見えないが、今ナイフが赤く光った。もしかして、ナイフについてるのって血?


「手紙は見ました。だからこの時間にこの教室に来ました。」

「そうだよね。フフッ。私もずっと待ってたよ。」


 吉崎さんはまた微笑む。しかし今の俺にはこの微笑みに恐怖しか感じなかった。


「だからどういうつもりなんですか!?なんで…、こんなことをしてもすぐにバレますよ!」

「なんで声を荒げてるの?気づかれるよ?」


 いかん。思わず怒鳴ってしまった。こういう時こそ冷静に、だ。吉崎さんとは距離がある。陸上部の俺なら逃げ切れる自信はある。でもそれは吉崎さんも知ってるはず。なら、どこかに共犯でもいるのか?だとしたら逃げるのは危ないか。どうする。多分助けを呼んでも来ないだろう。


「そうですよね。この時間に呼び出したのも人が来ないからですよね。」

「そうだよ。」

「俺を殺してどうするつもりですか?なんの価値もないですよ。ただ、あなたが犯罪者になるだけだ。」

「殺す?どういうこと?」


 あくまでとぼけるつもりらしい。


「とぼけないでください。ああ。監禁でもするんですか。すぐに警察に見つかりますよ。」

「やだなあ。そんなことするわけないじゃん。何考えてるの?」


 何考えてるって、そんな人が来ない教室に呼び出した相手が赤く濡れたナイフを持っている。殺されると思うだろ!

 そう思っていると吉崎さんは近づいてきた。ナイフを持ったまま。


「っつ、こっちに来るな!」

「え?どうして…」


 俺は吉崎さんと対角線を作るように動く。吉崎さんは半泣きのまま聞いてきた。


「どうして私を拒絶するの?」


 ナイフを持った女が近づいてきたら誰しも逃げるだろう。


「どうしても何もないですよ!?ならそのナイフをなんに使う気ですか!?」

「え?ナイフ?これかぁ。ん?ああ。そういうことね。さっきから赤坂君が殺すとかよくわからないこと言ってるからなんだろうと思ったけど、そういうことかあ。」


 1人で勝手に納得されても困る。


「もう一度聞きます。なにに使うつもりですか。」

「これだよこれ。」

「これは…イチゴ?」


 吉崎さんの手の上には2つに切られたイチゴが7個乗った皿があった。


「そう。イチゴ。好きでしょ?」

「ええ。まあ。じゃあそのイチゴを今?」

「そうだよ。」

「ははっ…そうだったんですか…」


 俺は思わず近くの椅子に座り込んでしまった。思った以上に緊張していたようだ。


「いきなり私の椅子に座ってどうしたの?」

「え?いや!?すみません!?」


 俺は飛び上がるように椅子から立ち上がる。なんで俺は敬語になっているんだろう。


「まあイチゴでも食べながら話そうよ。」


 そう言ってイチゴを差し出して来る。もうナイフは置いている。初めっから置いて欲しい。


「じゃあいただきます。」


 俺が食べるのを吉崎さんはニコニコしながら見ている。あれ?なんで食べてるんだ?


「おいしい?」

「はい。」

「良かったぁ。やっぱり可愛い(ボソッ)」

「それで何の用件ですか?」

「それは、ね?赤坂君と付き合いたいから呼んだんだよ。」

「はい。」

「それでね。」

「はい、いや、ここから先は俺から言います。」

「うん。」

「吉崎さん。俺と付き合ってください。」

「こちらこそ。よろしくお願いします。」


 これが俺に人生初の彼女が出来た瞬間だった。まだあまり実感がわかない。その前に1つ聞くことがある。


「それで、この"私が彼女でいてあげる券"ってなんですか?」

「そのまんまの意味だけど?」

「なんでそんなものをわざわざ?」

「あー。それね。ほら、ホワイトデー。」

「はい。」

「ホワイトデーのチョコと一緒に返してね。」


 どういうことだ?ホワイトデーになったら返す?ってことはそこで関係終了?なんだ?そんな期限付きみたいな恋愛があるのか?しかも1月って短い!


「気を悪くさせちゃったんなら謝るけど」


「私は本気だから。」


「…」

「それじゃ帰ろっか。あ、あとこのことは出来るだけ秘密ね。無理に隠さなくてもいいけど…」

「分かりました。」

「連絡先交換しよ。あと私のことは優花って呼んで欲しいな。」


 こうして意味の分からない、俺の1日は過ぎていった。もし優花が病んでるとしたらと思うとかなり怖いと思った。


こんなオチで申し訳ない。ヤンデレ希望のみなさんは特に、です。これからもよろしくお願いします。


コメント、高評価、感想など、とっても筆者の励みになるのでよろしくお願いします!✨

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ