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第一話 俺に彼女が出来た日(前編)

カクヨムでも投稿してます!よろしくお願いします!

みなさんはバレンタインデーはどう思ってますか?

バレンタインデー。その日は毎年1度やってくる。俺はこの日が嫌いだ。


 俺にとってのバレンタインデーは、女子が意中の男子にこっそりチョコを渡し、関係が進展したりする甘いイベントだ。男子は「今年は◯◯さんからもらえないかなあ」などとあるはずもない幻想を抱き、当日になって現実を突きつけられ落胆する奴が多数いる。そう考えると甘いイベントというより数日の現実逃避の材料で男子の心を傷つける日とも言える。


 え?俺?もちろん俺はバレンタインデーとは無縁だ。もう諦めてるから傷つくこともない。

 では何故嫌いかと言うと、男子たちの浮ついた雰囲気もそうだが、俺は昼休みに校内を放浪するせいでいつも見てしまうのだ。こっそり男子を呼び出してチョコを渡そうとする女子を。そしてそのカップルが俺を認識した時いかにも「秘密にしてね」、と言うような眼差しをむけてくるのを何回も見るからだ。


 そういう俺は赤坂航平。高校1年の陸上部だ。成績は中の上。彼女はいない。好きな人はいるが、いわゆる高嶺の花で自分で諦めている。


 これらのことから俺はバレンタインデーをどこか冷たい目で見ていた。



 そんな俺がバレンタインデーの日、仲のいい松田と駅で会い学校へ向かう。いつもの毎日だ。しかし松田を含め周りの生徒はどこか浮ついた雰囲気だ。


「なんでそんなウキウキしてんだ?」

「いや。今日はバレンタインデーだぞ。男のロマンの日だ。今年は吉崎さんからもらえないかなあ。」


松田はまた現実逃避をしているようだ。現実に引き戻してやらないと。


「諦めろって。俺たちには縁のない話だろ。」

「まだ分かんねえだろ!」

「そんな過度な期待を抱くから」

「うん?」

「後で悲しくなるんだろ。」

「…やっぱりお前って冷めてるよな。」


俺は冷めてるつもりはない。ただ、過去のことを考えるとどうしてもな…


「冷めてて結構。勝手に期待して現実を見て絶望するやつよりはよっぽどいいと思うけど?」

「そういう奴に限ってチョコもらうと動揺すんだよなー。」

「さあ?どうだかな?」


 やや非日常的な会話があるものの、それ以外は何でもないいつも通りの1日。俺はまだそう思っていた。



 学校につき教室に入る。そして自分の席につき荷物を整理する。机の中に教科書を入れたとき事件が起こった。

 何か机の中に入っていたのだ。俺は教科書などは毎日しっかり持って帰るはずなのになんで机の中に物が?忘れ物でもしたのか?それとも誰かのイタズラ?と思いその物を恐る恐る取り出すと、

 チョコが入っていた。ハート型の箱をリボンで結んでいてそこに手紙がくくりつけられている。


「…間違えました。すみません。」


 俺はすぐに荷物を片して席を立つ。そして教室の後ろへ行き、自分の席を確認する。誰に謝ったのかって?その席の人とチョコをこっそり机の中に入れた女子だ。


 さて、俺の席は、っと。いや。これは間違えようがない。1番端の後ろから2番目。でもその席にはチョコが入っていた。ならクラスを間違えたのか?いや。やっぱり1年2組だ。じゃあ俺にチョコを渡す女子が?いや、それもないはずだ。これは夢か?


「なあ航平。いつまでそんなとこで突っ立ってんだ?」


 そうして呆けていると松田が話しかけてくる。


「いや。別に。なんにもないよ。」

「そうか?ならいいんだけど。」


 俺は現実を認識できないままチョコが入っている俺の席に戻り、座る。とりあえず手紙を確認したかったが松田が付いてきたせいで確認できない。

 ああ、なるほど。これがチョコをもらった時に戸惑う陰キャの気持ちか。チョコをもらったことを恥ずかしがったりする気持ちが今分かった。


「はぁ。やっぱり机の中にチョコ、とかいう展開はないかー。」

「そ、そうだよなー。そんなありふれた展開あるわけないよなー。」


 お前の目の前の奴(つまり俺。)がまさにそういう展開で戸惑ってんだよ!、なんて言えるわけがなかった。なんか松田の言った通り動揺しているようだ。無性に腹が立ってきた。


「お前は…あるわけないよな。」

「はは。」


 初めから「お前はないな。」と言われると腹が立つものだ。1発ぶん殴るか悩んだが、


「ちょっとトイレ。腹痛ぇ。」


 松田はトイレに行ってしまった。なら手紙を確認しよう。俺は周りを確認する。周りには誰もいない。よし。

 俺は手紙を出し、こっそりと読み進める。手紙の中には2枚の紙が入っていた。1枚目を見ると


 "私が彼女でいてあげる券"


 と書いてあるだけだ。


「…」


 意味がわからん。こんな上から目線な物言いないだろ。罰ゲーム告白ってやつか?とも思ったがそれにしてはチョコは手作りっぽい。よくわからないまま俺はこの女子をツンデレってことにして2枚目を取り出す。


 "赤坂君へ。伝えたいことがあります。今日の放課後、4時20分、この教室にいてください。"


 と書いてある。要は4時20分まで待てば誰がチョコを俺の机に入れたかが分かる、ということだ。

 誰だろうと少し考えてみる。まず今この教室にいる女子。斎藤さんや森さん、榎本さんだが、そもそも接点がない。そう考えると俺は女子のほとんどと接点がない。字的には吉崎さんのような気がしないでもない。


「あー。腹痛かった〜。」


 チッ。松田が戻ってきやがった。犯人探し、もといチョコを入れたやつ探しは中断せざるをえないか。まあ放課後になれば分かるか。


 しかし誰がチョコを入れたかは放課後にならずとも意外な時に分かった。

 朝礼の時になにか視線を感じたのでそれを辿るとなんと吉崎さんがこっちを見ていた。顔を少し赤くしてニヤニヤしながら。

 何故ニヤニヤしてるのかは分からないが多分チョコを入れたのは吉崎さんだ。何故吉崎さんが?


 結局モヤモヤしたまま授業も集中出来ず、心ここにあらず、のまま放課後になってしまった。

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