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第8話 とばっちりって食らうね

感想を頂きました。ありがとうございます……!


ブクマの方もありがとうございます……!





「おっす、山田」


「おはよう、新田」


「なあ、お前、今日の放課後、ヒマか?」


「ま、まあ。用事はない」


「映画見に行こうぜ。8月に公開された、アワー・セブンデイズ・ウォー、まだ見てないだろ」


「なんかさ、面白いってウワサ、聞いてたけど、まだ見てないわ」


「だろ?いつもの映画館前に5時集合な」


「オーケー」



「何してんの!一樹」


「いってーな……肩思いっきり叩くなよ」


「あ、ごめんごめん」


「ねえ、今日の小テストの勉強した?」


「……ああ、したさ」


「愛想悪いね。朝からゴキブリでも見た?」


「見てねーよ。ほら、そこ、ゴキ、いるぞ」


「絶対うそだ……って。うそ、か、一樹!本当にいるじゃん。やめてよ!」


「お前、顔変だぞ……ははは」


「う、うるさい!もう一樹なんて知らないから」







朝礼後、俺は、担任に呼び出された。


「ちょっと新田に頼みたいことがある」


「な、なんですか」


「藤宮が生徒会やってるのは知ってるよな」


「まあ……はい?」


「で、だな、お前も生徒会、残り数ヶ月しかないが、手伝ってくれないか」


「……お、俺ですか?無理です」


「いや、そう言わずにだな、一回考えてくれよ。藤宮も忙しくてな」


あいつが忙しいわけないだろ……この教師、あいつに騙されてるだろ。


「まず、俺以外にいっぱいいるでしょう、適任者が。もっと真面目なやつ。コツコツ仕事こなして、協調性もあって」


「それがお前なんだ」


「は…………」


「ま、とにかく頼む。後のことはお前たちで頼む。じゃあよろしくな」


「ちょ、先生……あ、どっか行ったし」




俺が廊下で突っ立っていると、教室から、元凶と思しき人物が出てきた。


「何話してたの?一樹」


「なにもお前が一番知ってるだろ……生徒会の話だよ」


「……ああ!そういえば、手伝いの人、ほしいって言ってた気がする」


「お前、生徒会の仕事、忙しいのか?」


「……まあ。でも、一樹が乗り気じゃないんだったら、先生に断ろっかな?」


「そうしてくれると助かる」


「ねえ、プライドってないの?普通、女の子に頼まれたら速攻でオーケーするからね!?」


「あるもないも、お前が俺の助けを求めてないだけだろ」


「ああ、もう私が悪かったです!とにかく、手伝ってよね。分かった?」


「わ、分かったよ。手伝えばいいんだろ」


「早速、今日の放課後、生徒会室、来てね」


「あ、今日は先約があるから、無理」


「この間、ファミレスでひとつ、なんでも言う事聞くって約束したよね?」


「…………分かった。行くから」





仕方ないので、昼休みに山田に断りを入れた。


「……ってことで、すまない」


「ま、しゃーねーだろ。明日、行こうか」


「本当ごめんな。絶対明日は行くからな」


「藤宮とお前のことだから、俺、全然気にしてないから。藤宮にお前、しっかり仕事、付き合ってやれよ」


「分かってっから」


「分かってないな、仕事って意味じゃないからな?仲良くしろよ?」


「はあ…………」





授業が終わり、放課後になった。


「先、生徒会室に行ってるから。一樹、絶対、来てよ」


「分かったから」


大体、生徒会って何してんだよ……普段、学校生活の中でまったく接点ないけど。


今の生徒会長って誰だよ……この学校、生徒会選挙なんかやったか?


藤宮が生徒会やってたって、まあ、言われてみればそうだったなってレベルの話だし。


あいつ、生徒会の中で何の役職してんだろ?


俺は、知らないことだらけの生徒会の手伝いをすることとなった。


不安なまま、部屋のドアをノックして、入った。


「失礼します……あ、ちょっと生徒会の仕事するように頼まれたので、来たんだけど…………」


「…………」


「誰もいない……ではこれで」


よし。急いで走って山田と一緒に映画……!


「何帰ろうとしてんのよ!一樹、約束破るの?」


「お、お前、びっくりさせんなよ」


「ほら、入って」


「……お、おう」


「そこに会長、いるから」


「あ、こんにちは、新田くん。私は、生徒会会長の本沢姫花もとさわひめか。よろしくね」


「よろしく。俺は新田一樹。あ、あいつとは同じクラスで」


「そんな堅苦しくなくていいの。で、確か……?」


「あ、先生から生徒会の仕事手伝うように言われて来たんだけど」


「えっと……沙彩から言われたんじゃなくて?」


「あ、姫花、一樹には……先生から言ってもらったの」


「あらあら、話が違うじゃない、沙彩」


「言えるわけないじゃない!」


「まあまあ。ところで、生徒会って、どのくらい人、いるんだ?」


「私と沙彩だけ」




「……………………は?」


生徒会に、会長とこいつしかいないだと?




「ちなみに……生徒会って、公認されている団体なのか?」


「されてる」


「選挙したか?」


「生徒には投票してもらってないけど、職員会議で決まった」


「なんか……ちょっと俺の思ってたのと違うな」


「言う通り、あんまり仕事、ないしね……会長って名前だけかもしんない」


「そういうことなら……俺、帰らせてもらうわ」


「待ってよ、一樹。手伝うって言ったじゃん」


「いや、手伝うって、何を?仕事ないって本沢さんが言ったじゃん」


「言い方が悪かったわ、新田くん。仕事、色々あるわ。沙彩さんに書類の処理をしてもらっているの」


「どんなのだよ?」


「ちょっと持ってくるね、一樹」


「沙彩、全部持ってこなくていいからね。ちょっとでいいのよ」


「わかってるって」



「これなんだけど……全部持ってきちゃった」


数百枚はあろうかという紙の束を抱えて持ってきた。


「お、お前、これどうするんだよ」


「このね、ワープロでね、文字を打つの」


「……ご、ごめん。色々とおかしくないか?」


「職員室の先生、事務室のから、委託されている仕事なの。新田くん、沙彩と一緒に頑張ってね」


「お、おう。任しとけ」


「大丈夫?一樹。ワープロ、使える?」


「結構これでも詳しいんだから。で、このワープロは誰のだ?」


「私の。家から持ってきた」


「……そうか。いつものことだが、ぶっ飛んでることしかお前はしないのか」


「あんただって、人のこと言えないじゃない」


「こんな仕事、普通引き受けないだろ」


「そんなこと言っても仕方ないじゃない」


「これ、いつまでに仕上げなくちゃいけないんだ?」


「えっと……期末考査が始まるまでに」


「そんなんじゃ時間全然足んないだろ。ほら、今日のところは家、帰るぞ。じゃあ、本沢さん、さようなら」


「じゃあね〜!」



俺は仕方なしに、紙の束をカバンに入るだけ入れて、あいつのワープロも持って家に帰る。


むちゃくちゃ重いじゃねーかよ……って、お前……!


「なんでなんも持ってないんだよ!」


「力持ちの一樹に任したのよ。さっき、自分から全部持ってくれたじゃん」


「これ持って俺、坂登んのかよ……」


「頑張れ一樹、イェー!」


「…………覚えてろよ」




やっとの事で家に着いた。


「俺のカバンの中からさ、鍵出してくんない?」


「ど、どこ?」


「内側の……そこそこ」


「……ここ?」


「お前、ちょ、どこ触ってんだよ!?真面目に早く鍵取れって」


「お、おっきいんだね。あ!顔、赤くなってるし。なんだ、触ってもらってうれしいんだ。さすが、スケベの一樹だね」


「お前さ、馬鹿にすんのもいい加減にしろよ……?こっちは重いんだよ!」


「わ、わかったから、はやく開けるから、ほら」


「怒られないとなんもできないのかよ……」




リビングに入って俺は荷物を置いた。


「私帰るから、じゃあよろしくね」


「お前、こっから一緒に作業すんじゃねーのかよ」


「私、今日用事あるから。またね!」


「帰んなって……あいつ本当に帰りやがった」



俺って馬鹿じゃねーの……こんなのサラリーマンのすることで、高校生に普通させるわけないだろ……ていうか、教師は何の仕事してんだよ!


…………ああ、もう!


手書きの字、汚いやついるしさ、何書いてんだよ、こいつ……校長!?


『本校の理事会に参加いただき、誠にありがとうございます…………』


目がチカチカしてきたぜ……疲れた。




テレビをつけっぱなしにしていると、俺にピタッとくるCMが流れてきた。


『24時間戦えますか?』


……………………お、おう。









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