第6話 からんでくる隣人
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長かった夏休みも終わり、9月が今日から始まる。
「朝起きんの辛いな……目覚まし、うるせーよ」
でも、遅刻するからな。起きるか。
用意を済まし、家の玄関を開けると、あいつが立っていた。
「おーはよ!」
「おはよう」
「一樹、出てくるの遅いよ。学校、行こ?」
「あ、ああ」
「暑いね、今日も」
「てかさ、お前、なんで俺迎えにきたんだよ」
「迎えになんかきてないよ。ただ、家から歩いてたら、一樹がたまたま玄関から出てきただけだから」
「うそつくなって」
「嘘じゃないもん。ホントだもん」
「わかったから。な、捨てられた子犬みたいな顔すんなって」
「させたの、一樹のせいだから」
「チッ…………お前、強情だよな、昔っから」
「……そんなことないよ!一樹こそ、昔は優しかったのに……今じゃ」
「それはお前のことだ。そのままお返しする」
くだらないことを話していると、校門をくぐっていた。
下駄箱のところで俺は、友達の山田に出くわした。
「お前、1週間ぶりか。あの後、どうなった?」
「ちょ、お前黙れって」
「何がだよ。こいつさ、カラオケボックス行った後、女の子に声かけて、上手くいったじゃんか」
「うっそ、一樹が!?で、その後どうなったの?その子と付き合ってんの?」
「山田はともかく、お前は関係ないだろ」
「教えてよ〜、ねえ、フラれた?もしかして」
「話しかけただけで、付き合えるわけないじゃんか。その子とは何もない」
「そ、そうだよね。一樹だもんね。ナンパしてんだし。モテるわけないじゃん」
「あはは、そ、それじゃあ、また昼な、新田」
「こんな話になったのはお前のおかげだぞ……なんか奢れよ、山田」
俺は横にいるうるさいやつをほっといて、教室に入る。
朝礼5分前。
だいぶ無駄話してたんだな……。
「ねえ、さっきの続き。その子、可愛かった?」
「まあ、お前よりはな、可愛かった」
「しょ、ショック……私みたいな美少女、なかなか、いないよ」
「性格の話だよ」
「私のこと、性格悪いって言ってんの?」
「お前、気が付いてなかったのか……?」
「もうあんたなんか知らない!話しかけてこないで」
「はいはい。わかりました。願ったり叶ったりです」
「こちらこそ!」
「なあ新田と藤宮!」
「は、はい!先生」
「お前ら、仲良いのは分かるが、そういうのは、朝礼が終わった後にやってくれるか」
クスクス……
クラス中に笑われたじゃんか……!
「す、すいません、先生」
「……お前のせいで怒られたじゃんか」
「私、知らないもん。人のせいにしないでよ」
ため息しか出ない……しかも、1限目から、嫌いな現代文の授業かよ。
4限目も終わり、昼休みになった俺は食堂に繰り出し、パン戦争を流し目で見る。
パンのため、今日もみんな、頑張ってるね。
「ーーお前そこどけって!」
「そっちこそ体デカイんだよ」
「押すなって!痛いって言ってんだろ!」
「どけどけどけぇ!邪魔だ邪魔だ!」
君たち、食堂のおばちゃんの心を掴んだ方が簡単じゃないのか?
横の返却口から、ひょっこりと顔を覗かせ、声を掛ける。
「こんにちは。今日もいい天気ですね」
「あら。久しぶりね」
「ちょっと……パン、いいですか?」
「はい。お待ちどうさん。このパンでいい?」
「あ、ありがとうございます!」
「今日も爽やかだね。またよろしくね」
「もちろん!」
倍率100倍の焼きそばパンを2個ゲットした俺は、食堂に先に来ていた山田の真正面に座った。
「お、焼きそばパンじゃん。お前、スッゲーな」
「だろ?俺、死ぬほど苦労して掴みとったんだから」
「褒め称えるよ」
「後ろからさ、突撃していってさ。背中途中で、思いっきり……」
「一樹、なーにカッコつけてんの」
「お、藤宮じゃん。ついに一緒にご飯まで食べるようになったか?」
「お前、い、いきなりなんだよ」
「裏で手に入れたのに、山田くんに、そんな堂々と手に入れたって顔して」
「そ……そうなのか、新田」
「一樹って、ほんと、サイテーな男ね。変にカッコつけちゃって」
「お前、いきなり何言ってんだよ。だから俺は戦いに……」
「……ほ・ん・と?」
バレましたね……。
「2人ともそんな目で見なくてもさ……お、俺のこと、信じてくれるよな、山田よ」
「新田って、たまに……そんなとこあるよな」
「や、山田…………」
「じゃあ、私、教室帰ってるから」
クソしょうもない、俺の虚偽報告をばらしやがって……あの女、ちょこまかと俺に絡んできやがって!
「山田よ、あいつのこと、どう思う?あのコバエみたいなやつ」
「……え、ふ、藤宮のことか……?まあ、別に」
「ほら、周りの人にさ、性格悪いとか、言われてない?あいつ」
「そんな話は聞かないけどな」
「あいつ、化けの皮被ってんだよ」
「ていうかさ、お前、ほんと羨ましいよな。藤宮と幼馴染って」
「何が羨ましいんだか」
「もう、なんかさ、新田の奥さんって、雰囲気あるじゃん」
「プッ……お前、あぶねーよ。飲んでるから。言うタイミング考えろよ」
「あ、ごめんごめん。いや、お前らってさ、付き合って何年目だよ」
「……はあ?付き合ってなんかないからな」
「嘘つけよ。あんだけ仲良いんだもんな。もう、長い間、麻痺してんのか?」
「ち、ちげーよ。あいつのことなんか、嫌いだよ」
「そんな、照れんなって。両想いっていいよな。憧れるぜ」
「何がだよ……俺にはちゃんと別に好きな子、いるから」
「ほ、本当か!?お前、それ」
俺は、夏に出会った、あの女の子の話を山田にした。
「ーーって訳。俺のこと、好きって言ったもんな」
「お、おう……よかった……な」
「だから、俺はあいつは幼馴染ってだけで、別に何の感情も持ってない」
「に、新田よ、藤宮が知ったら大変なことになっぞ!俺以外には絶対そんなこと言うなよ!」
「な、なんでだよ。言われなくてもこっちから喜んで話すことないじゃん」
「ま、お前らしいけどさ…………やっぱり」
「ん?」
「……気がついていないのか?」
「なにが」
「藤宮ーーお前のこと、好きだからな」
…………は?
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