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後日談 エピソード8 雪

更新の方遅れまして大変申し訳ありません。


また、ブクマしてくださり、またお読みいただきありがとうございます。


本文の方、短くなっていますが、よろしくお願いします。





「どういう意味だよ……」


「そのままの意味よ。あったかい……ぎゅっとしておきたいの……ずっと」


俺は、ぶら下がったままの両腕で、沙彩を抱きとめる。


「やっぱあたたかくないな」


「は……?」


少しだけ驚きを含んだ様子で俺を見る沙彩。


「なんで上着の上からどんなあたたかさを感じるんだよ。それに……ちょっと太ったか?」


「……も、もう!ムードぶち壊して!」


俺は、沙彩から軽く突き飛ばされる。


痛くもなんともないけど、沙彩の機嫌は損ねてしまった。



一歩前を沙彩が歩く。





「沙彩。上……上見ろって」


「知らない。勝手に家帰ってよね」


「……雪」


「えっ」


ぽつぽつと雪が舞い降りる。


積もるような水分を含んだ雪ではない。


サラサラとした、澄んだ雪。


「雪……本当だ」


沙彩は、手のひらを空に向けて立ち止まる。


「この雪は積もらないな」


「でも、手のひらの上では少しの間だけでも溶けない」


「……そうだな」


確かに、雪のカケラたちは沙彩の手のひらの上で一瞬だけそのカケラであり続ける。


でも、すぐに沙彩の手のひらで消えてしまう。


「ねえ、雪の結晶って見たことある?」


「教科書で見た」


「どう思った?」


「ん?まあ、きれいだなって」


「そんな言い方なのね……」


「お前と一緒だ。きれいだなって思う」


「は、はぁ!?そんなこと言われても嬉しくないし……」


「沙彩は、雪くらい白いし、儚いし……でも俺は沙彩を溶かさない」


「どういうこと?」


俺は一歩前に出る。


手を伸ばして沙彩の肩を掴む。


肩を掴んだまま、一歩前進。


「ち、近いって」


「沙彩」


「な、なによ……」


「帰ったらおいしい料理、作ってくれよ」


「……ば、ばか」





卑怯よ。


あんな近くでおいしい料理作ってくれって。


それに、意味わかんないし、溶かさないって。


カッコつけちゃって。


どっちが上手と思っているのかしら。


「あら、いつもの料理はおいしくないから、今日はおいしく作ってくれってこと?」


「ち、ちがっ……!」



私は掴まれている肩に置いてある手を払い、家に向かって歩く。



「なあ、沙彩。機嫌直してくれって」


どうして男は分かんないんだろう。


機嫌なんてとっくに直っているのに。


一樹は、私の隣をぴったりとくっついて歩く。


歩きながら、私の顔を覗き込む。


「おいしい料理で1つのフレーズなんだよ」


「どういうこと?それって美味しくない料理ってフレーズもあるってことね」


「なあ、沙彩。頼む。機嫌直してくれって」


「じゃあ……」



私は足を止める。


一樹は、私が何を言い出すのかすごく不安そうな顔付きで見ている。



「態度で示しなさい」


「分かった」


「その態度を直すよう……あっ!」



一樹は私の頬を包んで、キスしてきた。



1秒くらい、だった。



パッと私は一樹から離れる。これ以上は、こんな道端でダメ。



「い、いきなりキスなんかしないでよ」


「ごめん……可愛かったからキスしちゃった」


「ば、ばか」


「じゃあ家帰るぞ!」


一樹はステップを



「あなた鍵持ってないでしょ」


「そ、そうだった……」


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