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後日談 エピソード7 あーあバラされたんだけどどうする!?


はるなま氏に感謝。

「そういえばそんなことあったな……」


「そうよ?すっかり忘れているんだから」


「違うんだ。その後に起こったことが俺の高校生活最後の思い出になったんだよ」


「あら、何かしら」


「すっとぼけんな。あれはな、始業式の日のことだろ」


「何でしょう?」





新年明けて、3学期が始まった。


登校する俺の横には沙彩が。


いつも通り、登校していた。


「どうしてそんなに嬉しそうなんだ」


「クリスマスからずっと夢見心地なの」


「こっちは狐につままれた感じだ」


「単純よ、婚約をしただけ」


「それがおかしい。婚約破棄してやる」


「出来るものならして欲しいものよ、あなた」


「くっ……」


「あなたと一緒にいられるの」


あざとい。



いつも通り、教室の扉を開け、自分の席へと向かう。


机に上にカバンを置き、椅子を引いて、座る。



「始業時刻まであと20分か……」


暇を持て余す俺は、山田のいる教室に遊びに行こうと思い、席を立った。



ふつうに教室の扉を開け、数人の同級生とすれ違うのだが、みんな俺を見る。


……なんかおかしいな。



数人の女子でヒソヒソ話をしている。俺の噂話をしているようで、俺のことを指差す奴もいる。


男子も例外ではなく、グループで小声で喋っている。


少し話すこともある男子のグループのところへ話しかける。


「なあ、俺……なんか」


俺が話し終わる前に、相手は被せに来た。


「おめでとう!じゃあ」


……何かがおかしい。


……おめでとうってどういうことだよ。



山田のクラスの前に来る。


扉に手をかけて、ガラガラと開けた瞬間ーー



「おめでとーーーー!」


山田が俺に飛びかかってきて、俺は抱きとめられる。


「や、山田、落ち着け」


「ああ。やったな。お前は今日一日中この学年のヒーローだ」


「ちょっと待て。説明してくれ。どういうことだ」


山田は俺から離れ、代わりに背中をバシバシ叩いてくる。


「何を〜!奥さん持ちのやつが何言ってんだよー、ほら、嫁さんのところに行ってやれ」


「はあ!?」


「照れんなって。プロポーズの言葉、教えろよ」



ーーここで俺は事態の深刻さに気がついた、沙彩、やってくれたな。



教室の奥の方へ目をやると、沙彩の周りに女子が……30人くらいは集まってるな……


俺は、その沙彩を囲む輪に入っていき、沙彩の腕を掴む。


「沙彩、ちょっと来い」


「ちょ、ちょっと!」



これまでにどんな話を沙彩がしていたのか、怖すぎる。


俺の有る事無い事、どれほど暴露されたのか、全く予想がつかない。



「沙彩」


……この言葉だけで、周りの女子は叫ぶ。


名前を呼んだだけだぞ?



「きゃあああああああああ」

「旦那さんよ!カッコいいじゃない」

「指輪よよよよ!」


……何がだ。



「あら、あなた。どうしたの?」


「説明しろ。お前は……何をした」


「だから、薬指の指輪のこと聞かれたから……」


「つい答えた……というかどうして学校で指輪なんかしてるんだ!?」


「その……あなたにせっかく買ってもらった……指輪だったから……嬉しくて」


「……」



沙彩は、俺に手のひらを見せるようにして、満足げな表情をしている。



「どうしたの!?その指輪、って聞かれたら」


「……」


「結婚しましたって」


「してない」


「でもするじゃん」


「分かんない」


「うそ……今、私フラれた……?」


「違げーよ、婚約だろ……あっ」



遅かった。


俺は沙彩のことばかり集中していたので、後ろから俺たちの会話に聞き耳を立てていた野次馬にまったく気がつかなかった。



「「「ヒュウうううううううぃ!!!!」」」



廊下が揺れる。



「一樹」



沙彩が俺の名前を呼ぶと、一瞬で静かになる。


なんだなんだ……怖い。




「なんだよ」


「好きです。結婚……して下さい」


「いいよ」


「ほんと……?」










そのあと、散々いじられた。


胴上げを15回もされた挙句、下校の時にはーー


沙彩と腕を組まされ、同級生が両側一列に並ぶ中、歩いて帰ることになった。


校門まで、どれだけ苦痛だったことか。







でも、校門を出た瞬間、俺が腕を離そうとするとーー


沙彩が腕に、キュッと力を入れてきた。


「離さないのか……?」


「あったかいもん……」


「俺の腕がか?」


「……違う、あなたの存在自体が」


「どういう意味だよ……」



空を見上げると、冬の澄んで、晴れ渡る青色の世界が広がっていた。



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