表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/55

第5話 これから日常に引き戻されます

ブクマ、評価ありがとうございます。






「おばあちゃん、元気そうだったな……」


新幹線の小窓から、俺は手を振る。


もう、駅まで来なくていいって……うれしいけどさ。


「元気にな、頑張るんやで!」


「分かったよ」


そんな泣くなって……また来年も来るからさ。


新幹線が動き始め、おばあちゃんの姿も見えなくなり、手を振るのをやめた。




それにしてもーー


「まっさか、電話番号もらえるとはな……」


恭子ちゃんがくれた小さな紙切れを眺めている。


好きな女の子に電話できるなんて……しっかも向こうからくれるって。


俺、好きって言われちゃったよ……!


次、いつ電話しよっかな……。




楽しかった帰省も終わり、俺は東京の家に帰ってきた。


「ただいま……って誰もいないか」


手洗って、カバンの中身、全部ぶちまけて、着替えを洗濯する。


やっべ……洗剤切らしてる……洗濯機も電源入らねーし……おいおい。


「どうなってんだよ……おまけにクーラーも電源入らないじゃんか」


リモコンの電池、切れてんじゃん……。


俺の家、どうなってんだよ。家の中、すっげー暑いし……熱射病なっちゃうよ。


冷蔵庫に入れてあったアイスを取り出し、暑さしのぎのため、食べる。


晩御飯、どうしよ……。米ぐらいしかないな。


腹減ってないし、アイスだけでいっか。


俺がソファーに座って寛いでいると、インターホンが鳴った。


くっそ……こんな俺が疲れたタイミングを見計らって!


あいつか……絶対、あいつだ……こんな時に来やがって……!





ーーピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン





マジで、うっさいな……人が休んでいる時になんだよ!


俺が扉開けないと、ピンポンが終わることがないので、仕方なく、玄関を開けた。


「お前さ、人のことマジで考えろよ……」


「おじゃましまーす!昨日、帰ってきたんだ。向こうから」


「……そうだよ」


「スリッパ、どこ?」


「俺、休んでたんだぞ」


「ねえ、この部屋、暑くない!?クーラークーラー」


「いきなり来てそれはないだろ」


「ねえ、リモコン、はやく」





ずうずうしくて、口が悪くて、ワガママな、この女が、俺の幼馴染の藤宮沙彩ふじみやさや


もうな、美人は性格が……ってのを具現化した、見本。


ああ、そうだよ……みんながひくほど、美人だ。歩けば、目を惹く。



そんなこと、どうでもよくって……で、で、だ、こっからだ。


同じ保育園同じ小学校同じ中学校だったし、同じ高校、同じ学年、同じクラス、クラスの席は横。


住んでいる家までも、横。


ほんと、意味わかんねーよ……!


あいつ、俺にワザと被せにきてんじゃねーのかなって、たまに思う。




「お前、ソファーに寝っ転がるならさ、もう帰れよ」


「いやだ」


「見てたテレビ、消すなって」


「だって、水着のお姉さん映ってたから。鼻の下、伸ばしてんでしょ」


「くっだらねーことすんな」


「なんか食べるもの、ない?」


「ちょ、お前、勝手に冷蔵庫いじんなって」


「いいじゃん、あ、美味しそうなアイス!」


「何もしないヤツに食わせるものはないんだよ!」


「ケッチィー!そんなんだから、彼女の1人もできないし、女友達すら出来ないんでしょうが」


「お前に言われる筋合いねーよ。第一な、お前だって彼氏、出来たことねーじゃんかよ」


「べ、別にあんたに心配されなくてもいいんだから……」


「あ、そうですか。ではどうぞ、あちらが帰り口となっておりますので」


「ほんと性格悪いね。人によく嫌われるでしょ」


「お前にだけは言われたくない」


「あ、そうですか。さようなら!」



ーーバン……バタッ。



「やっとあいつ、帰ったよ」


俺の家、荒らすだけ荒らしていきやがって……いっつも。


何しに来たんだよ……ん?


机の上のやつ、なんだよ。忘れ物すんなよ。




『ごはん、食べてね。ーー沙彩より』


一筆箋に、弁当箱が添えてある。




風呂敷を開けて、蓋を開けると、おにぎり3個と玉子焼きと唐揚げが入ってあった。


「……もう夕飯の時間か」


弁当、作ってくれたのは、正直、助かる。


じゃあ、早速頂きますか。


「いただきます…………これ、うまいな」


俺の味覚を知り尽くしているから、ご飯の上に鮭のフレーク、塩胡椒の入った玉子焼き、唐揚げは竜田揚げにしてくれている。


沙彩のやつ、俺に弁当作ってきたことくらい、言っていけよ……。


「…………ごちそうさまでした」


弁当箱を洗い、風呂敷とともに、包んで玄関に置いておく。


この風呂敷、なんでいっつも大阪土産って書いてんだろ。通天閣と大阪城が揃って描かれている。



お礼、言っとかなきゃな。


紙切れにも書いとくか。



『また、作ってくれよ。美味しかった。ありがとう。一樹より』



明日、家に持って行こう。


でも、あいつ、昔はあんな風に傍若無人なやつじゃなかったのにな……。


まあ、いいや。


さ、一踏ん張りして旅行の片付け、しよ。


でも、テレビ、見よっかな……?


その前に、風呂、入るか。ああ、それと宿題もあるじゃんか。














評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ