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後日談 エピソード4 なんとか回避できたんですか、どうなんだ!?





神社の賽銭箱は人だかりが出来ている。


沙彩に野郎が要らぬ行為を働かないように、俺は必死でガードする。


右腕に力を入れ、沙彩の半歩前を歩く。



にしても……どうしてだ。


俺を睨み、舌打ちをして向かってくる輩が多いのは、どうしてだ!?









「今日結婚できますように今日結婚できますように……」



俺の横には危ないことをぶつぶつ唱えている女性がいらっしゃる。


今日、結婚しないってば。


ていうか、お願いごとは黙ってするもんだろ。


俺も手を合わせてお願いごとをする。



願い事……それは……


「ねえ、どんなことお願いしたの?私は秘密」



うん。俺は知ってる、今日結婚したいって言ってたもんね。



「沙彩が秘密だったら、俺も秘密にする」


「教えてよ。ねええええ」


「駄々こねるんじゃない。俺のお願いなんて沙彩に関係ないだろ」


「あるもん。旦那さんのお願いごとは私のお願いごとなのおおお」


「静かにしろ……新年早々騒がしいんだよ……」


「あなたが私に秘密にしていいことなんてないの」



すげー論理だ。


これは、俺に科せられた不平等条約ではないのか!?


俺の秘密は私のヒミツ、私のヒミツは私だけのヒミツ。


俺はプライバシーのない生活をこれから送るのか……って元々家に自由に出入りしている時点で俺の行動は全て沙彩に筒抜けだったのか……?



「おーい、新田くん。ぼーっと突っ立ってたら通行人とぶつかるだろ、奥さん守ってやれよ」


「あっ……もう帰るんですか?」


「ああ。じゃあ、区役所でまた会おうな」


「ちょ、……行っちゃった……」



桑野さんは颯爽と亜希子さんを綺麗にエスコートして帰っていった。


3高ーー


高身長


高収入


高学歴



なんでも揃った桑野さん。


おまけにルックス最高。彫りの深い顔。


ちょっと取っ掛かりにくいところはあるけど、さりげなく亜希子さんにおみくじ引かせてあげたりお守り買ってあげたりーー


気の利くすごいダンディな男って感じがする。


俺もあんな男になりたいな……。




「ねえ!ちょっと聞いてるの?」


「あ、う、うううん」


「だから、それでいい!?返事は?」


「はい」


「じゃあ、家に帰りましょ?」


「う、うん」






神社から家まで歩いて帰っているんだが……どうしてだ。


こんなに上機嫌なのはどうして何だ!?


鼻歌を歌っているし、スキップしているし、なんだ?


「うれしいのか?」


「あ、当たり前じゃない……ちょっとはあなたのこと見直した」


「どういう意味で」



なんか俺したか?



「男らしいところ、あるんだなって」


「ふーん……そう」



神社から離れた道を歩いているが、もう人の姿は見えない。



「ふぁぁぁ……眠いな」


「そうね。帰ったら寝ましょ?」


「ああ。そうだな」





家の扉を開け、電気をつけ、自分の部屋に直行した。


沙彩……は自分の家に帰ったのかな。


物音も聞こえない。


ま、いいや……元旦から眠すぎって……


俺はゆっくり眠りたいので、目覚し時計のタイマーを外した。






…………ごそごそ…………



なんか…………遠くで音が聞こえる……


夢……かな。



徐々に意識がはっきりして、朝が来たから起きようと思って体を起こそうとするーー



が。



重い。なんだ、体が起き上がらない……



んあああああああ!


上に沙彩がいる!……どうしてだああ!



「おいっ、沙彩起きろ!」


「へ?」


「あ、あの。あれだ、ダメだ。ごめん、これだけは許してくれええ」


「なにが?」


「沙彩が……その……望んでいない……」


「なにバカなこと言ってるのよ、あなた」


「え?」


「飛び乗っただけ。そんなに私のことで……想像できるの?」


「ち、違うううううううう」


「あら、じゃあどうして顔、赤いのかしら?」


「そ、それは。起きた……ばかりだから」


「私がこんなに近くにいるからでしょ?」


「断じて違う」


「じゃあこれは?」




おでことおでこ、目と目、鼻と鼻、くちヴィルとくちヴィル



ーーその差、1センチ



「キス、しよ」


「う……ん」






俺はどうにかして、婚姻届の提出は見逃してもらった。


でも、これから、俺に不手際があった瞬間、学校の最中でも飛び出して区役所に連れられてしまうことになった。


例えば……重罪中の重罪とまで言われたが、浮気……とか。


するわけないって話……あ、一回してしまっているような……


でもおかしいよな?俺にだけルールを押し付けるだなんて。


どうしてだ!?








どうしてだ。


どうして俺が正月早々から百貨店で10個もの紙袋を持っているんだ。


どうして横で好き勝手にポンポン買い物をしていく女がいるんだ。


どうして桑野夫妻がいるんだ。



「なあ、沙彩。いつまで買い物する気?流石に俺、親にバレたら怒られる……」


「何言ってんのよ。福袋でしょ?安く買えるこの日のためにどれだけ貯金してきたと思ってるのよ」


「いや、俺が払ってんだろ」


「あなたの通帳で貯金してるのよ」



…………待て。


落ち着け、新田一樹。


お預け入れは、通帳があれば、暗証番号は要らない。


大丈夫だ。俺はまだ家計までは握られていない。


でも……時々不自然な引き出しがあるんだ……


この際、沙彩に聞いておこう。



「なあ、俺の通帳でさ、たまに引き出しとかしてるのか?」


「うん」



ダアアアアアアアア!


知ってた、俺の通帳の番号!


俺はもうこのお方からは逃げられないらしい…………



「そ、そうですか……」


「だから、私毎月3千円ずつコツコツ貯めていたから安心しなさい」


「へ、へい……」



俺が横を見ると、桑野夫妻が微笑んでいる。



「何がおかしいんですか」


「いや、だってさ、どう見ても若夫婦だもんね。どっちがお金を握るかの瀬戸際」


「ちょ、若夫婦って言い方ないでしょ」


「ふふふ」


桑野夫妻は顔を見合わせて笑っている。



「若夫婦って言われて嬉しくないわけ……?」


「う、うううれしいです」


「行くわよ、次は食料品売り場よ!」


「は、はい!」







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