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後日談 エピソード3 結婚しないために抵抗してもどんどん背中を押されるんだけど!?






大晦日の夜ーー


それは、日本中が紅白歌合戦もしくは初詣のため寺社仏閣に出かけるためにあるものである。


暖かい部屋でチャンネルをNHKに合わせ、自分の好きな歌手が出てくると一気にテンションが上がる。


寒い中、来年の願い事を年初めに神さまに伝えるために長い行列を並び、寒い夜の中、凍える。


このどちらかに分類されるのが普通。



でも……俺はーー



「明日区役所行くの」


「行かないって!……おかしいだろ」


「じゃあ離婚する?」


「だから結婚もしてないから離婚もクソもない!」



どうしてこうなった!?





昨日一昨日と、電話の復旧にあちこち飛び回っていた。


NTTに話聞きに行ったり、あきさ……亜希子さんところに行ったり。


そういえば、亜希子さんは、ついに結婚するらしい。


おめでとう。


パッと出会ってパッと結婚を決めたらしい。


大丈夫かなって少し思ったけど、家に行くとその相手の男性もいたので挨拶した。


誠実な人そうだから、よかったと思う。


でも、お祝い事は置いといて。


電話の件はちゃんと決着をつけた。


勝手に電話回線を奪わないでほしい。



電話が通じないとかいう訳の分からない理由を持ち出してきて、ここ数日俺の家に住み着いている俺の自称妻がいるからな。


亜希子さんに、沙彩の所業を報告したのだが、結婚してもいいんじゃないっていう返事が返ってくる。


うん、やばい。


横に座っていた旦那さんも、一緒に頷いていた。



でも、な、俺は高校生だから!






「なあ、沙彩。機嫌直してくれって」


「いや。約束守ってよ」


「なんの」


「元旦結婚」


「なあ、ちゃんと書類は出しに行くからな、5年待ってくれ」


「待てない」


「大学出たらさ、ちゃんと俺も仕事決まってさ、ほら色々と普通じゃんか」


「私、5年も待たされるの?」



あああああ!!


包丁を取りにキッチンに行ったよよよよ!


こっちに刃を向けて……あああああああ!




「わ、わかったから……頼む。俺の命だけはどうか……!」


「一樹は素直なところがいいんだから」



ち、違う……それは威圧してるだけだ……うううう。



恐る恐る婚姻届に手を伸ばそうとしてみるとーー


沙彩は脱兎のごとく飛んできて俺から婚姻届を奪った。




2人とも話題に困る。


時刻は11時40分ーー



改めて沙彩を見つめている、俺がいる。


やはり……俺の……好きな沙彩がここにいる。


結婚……とかできたらしたいし、夢だし、こんな美人な妻がいると自慢できるだなんて……ふわふわしていて、実感湧かない。


でも、まだ18歳だぞ!?


俺ら。




「なあ、おかしいよ。こんなの」


「……うん」


「もっとさ、ほら……恋人らしいこととかさ、もっといろんなこと2人で積み上げてさ、絆とか深めてその結果、出す結論が結婚だったら……って思うんだ」


「うん」


「これまでいろんなことあった。これからもいろんなことあるかもしれない」


「う、うん」


「それをさ、2人で乗り越えるのにまだ結婚っていうのは間違ってるって思う。俺たちって多分もっと大人になってから今を振り返ったらさ、ああ、いい青春だったなって思えるって思うんだ。青春をさ、体験できるのは今しかないんだから……無理しなくていい、今すぐ結婚とか、そんなことしなくてもいいよ、婚姻届って紙切れで俺を縛らなくっていい。俺が沙彩から離れられるとでも思ってんのか?」



沙彩は勢いよく首を横にふる。


ホッとする。


どうやら結婚暴走を止められたようだ。



「じゃあ、この紙、要らないよな?」



俺がその紙を持った瞬間ーー




どうしてだ。


俺の後ろに気配を感じる。


これは…………やばい。





「かずくん。離婚……されたいの?」


「へ?」


「ほら、沙彩ちゃん。その紙を!」



俺は婚姻届を奪い取られ、その人物ーー


亜希子さんに睨みつけられる。



「ちょ、ちょっとあなたがどうしてここに!?」


「一緒に今から初詣して、婚姻届出しに行くから。ねー?沙彩さん。約束したもんねー!」


「へ!?」




俺が逃げ出そうとすると、沙彩に手首を掴まれた。


そして、あきさん……いや、亜希子さんの背後から、男が現れた。



「やあ、新田くん。亜希子さんと結婚させて頂く、桑野信介です」


「ど、どうも……こんばんは。一度お会いしましたよね?」


「どう?新婚生活は。慣れた?」



す、するーかよ。




「え。あ、ま、まあ」


「君、いい家の住んでるね。誰が建てた?」


「へ?」


「いや、ちょっと気になっただけだ。まあ、いい。じゃあ行くぞ」


「どこにですか」


「神社。当たり前だろ。明日をなんだと思ってるんだ」





時計の音がなる。


ボーンって音を鳴らす。


新年……か。



「今日は元旦だ。行くぞ、新田」


「な、馴れ馴れしすぎません?」


「……そうか?」









なぜか、桑野信介なる亜希子さんの夫にピタリと背後をつかれたまま、近くの神社まで連行された。


一言も発さない。



「あのう……何か話しませんか?」


「う、うん。俺も話そうと思ってたところだ。そ、その、あれだ、新田くんはどうして結婚に踏み切った?」


「いやはや、まだそうとは……」


「俺は結婚しないって思ってたんだけど、なんか亜希子を見たときにこう、ビビッと来てね」


「一目惚れですか?」


「うん。向こうもオーケーな感じでね」


「いいですね」


「新田くんの話はいっぱい聞いてるよ、亜希子から」


「な、なにを!?」


「嫁さんにケツひかれてるってな。ははっ、若いのにそれだったら将来どうなっちまうんだ」


「そんなこと……」




俺が沙彩の方を不意に見ると、沙彩は俺を睨んでいる。



「すいません……」




桑野さんは、笑った。


「やっぱ。だろなって思った。この女、やっぱすげーわ」









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