第34話 おやつ①
短いですが
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あき先生が私の家に住み始めて結構な日にちが経った。
私が鍵を開けると、決まってあき先生は私に挨拶してくれる。
「おかえりー!」
遠くから声が聞こえる。
「あっ、ただいま……ってあきさんか」
あき先生って呼び名は堅苦しいから、あきさんって呼んでって言われた。
亜希子さんはなんとなくしっくりこないもんね。
私が家に帰るとひとり……ではなく、新しい我が家の住民、あきさんがいる。
やっぱり慣れないかな。
カバンをリビングに置きっぱなしにして、キッチンに向かう。
私は家に帰るとすぐにお菓子タイムになるのだ。
でも、今日は特別。
キッチンにお人形さんがいた。
あき先生は可愛いエプロンをつけて、ミキサーを回していた。
「あっ、沙彩ちゃん勝手にキッチン使ってて……」
キッチン台は少し高めに作ってあるので、背が少しだけ低めのあき先生は腕を上げ気味。
「いいですよ、全然。ところで何作ってるんですか?」
「えっとねー、 寒天のゼリーなんだけど食べたことある?」
「ないです!寒天で作ってるんですか?」
「かんてんファザーって会社の商品で、店で普通に売ってるやつ」
「へえー、もう食べれるんですか?」
「うん。ちょうど冷蔵庫から出したところ。この時間くらいに沙彩ちゃん帰ってくるかなーって思って」
「う、嬉しいですう!あきさんみたいに、どうしたらそんなことが出来るんだろう」
「そんなこと簡単よ、相手のことをちょっとだけ考えてあげればいいだけだから」
「う、私一番苦手かも……」
「大丈夫よ」
その時ーー
一樹が家に帰ってきた音がした。
「ほら、一樹くん帰ってきたよ」
「そ、そうだけど……だからって」
「誘ってみたらどう?」
「えええ!?」
「一緒に食べない?って」
「勇気ないです……前に言ったみたいに、もう一樹と一緒にごはん、食べられないですから……」
「ごはん食べるくらいどうってことないよ?私だって、いろんな男友達と食事したりしたけど、何にも?ないよ」
「それはあきさんだからです……」
「とりあえず、一樹くん呼ぼう?」
「……はい」
♢
「一樹ぃ!」
「なんだ……お前か。急に大声出すなよ」
「ご、ごめん……あっ、デザートあるんだけど……あ、あき先生と一緒に食べない?」
「おっ珍しいな、お前から誘ってくるって」
「そ、そう?じゃあ、うち来る?」
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