第3話 思わぬ再会
ブクマしていただき、ありがとうございます。
ブクマ、評価の方、是非よろしくお願いします。
「そういえばこんなことあったな……」
どうやら、物思いに耽っていたようだ。
俺は窓枠に肘をついきながら、外の風景をぼんやり眺めている。
あの時と同じように帰省のため新幹線に乗っている俺の横には、知らないサラリーマンが座っている。
0系が今や、100系だもんあ。
「お母さんもお父さんも、海外に行っちゃたからな……」
なんで俺は一人暮らしをしているんだよって思った時もあった。
でも、1人で高校生活を送りはじめた。
今を楽しんでいる。
この、帰省の時のワクワクする気持ち。
この大都会から、田舎へ行って遊びまくることへの期待。
これまで何回、おばあちゃんの家に行ったんだろう。
毎年毎年夏に帰るのも、今年で何回目だろう?
絶対にこの帰省はやめたくない。
おばあちゃんに、会いに行く。
あれを引きずっているとか……そんなはずはない……って言い切れないか。
あの頃の、甘酸っぱい思い出に浸りながら、時速220キロで駆け抜ける。
新しい車両は、とても気持ちがいい。
あの女の子とは、今まで再会することはなかった……もう一度会いたいけど、あの頃のことを彼女は覚えているだろうか……小さい頃の記憶ってあやふやなものだからな……顔を見ても気がつくかな……それに会ってどうするっていうんだ……俺が一方的に好きってだけで向こうはなんとも思っていないんだろうな……。
でも、もし奇跡的な再会を果たし、2人見つめ合って、抱きしめて……ずっと好きだったって言われて……俺も好きだなんて言って……ぽとって荷物落として……ずっと時が過ぎるのも忘れて抱きしめ合って……。
まただ。
変な妄想なんかして……こんなこと有り得ないって。
俺は、脳内で広げていたお花畑を閉じた。
あと少しで、到着するのだが、トイレに行きたくなって席を立った。
車両後方の自動ドアを通ろうとした時、女性とぶつかった。
「あ、すいません」
「ちゃんと前見るようにしてね!」
「……はい」
俺だけが一方的に怒られる。
彼女はロングヘアで、あまり顔は見えなかった。
何か落としたようだが、すぐに拾って、そのままどこかへ歩いて行ってしまった。
「今日はついてないな……」
俺がトイレを済まして席に戻ると、車内アナウンスが流れており、すぐに新幹線を降りた。
在来線に乗り換え、建て替えのために足場の組まれた駅舎をくぐり抜けた。
こじんまりとしたロータリーの左端に、いた。
俺は目を疑った。
あの女の子に似ている。
あの日、あの時を最後に会うことのなかった、と俺が勝手に思っているだけかもしれないが、あの女の子が立っていた。
何年もここに来ていたのに……。
あの子も俺に気づいたようで、こちらを少し窺っている。
ちょっと待て、夢か……実は電車で寝過ごしていて今その夢を見ているのか……ええと……顔をひっぱてみるが、異常なし……ああ、これは現実なんだ。さっき新幹線の中で思い描いていたあのシチュエーションが繰り広げられてるっていうのか……俺はここからどうすればいいんだ……声かけるべきなのか……でも俺を全く覚えてなくて、コイツ、誰って感じだったらどうしよう……あああああああ、あの時の女の子だよね……あ、けどよく見たら違うかも!?……ホント、どういうことだよ……こんなこと普通ありえないけど……数年ぶりに再会って、そんなバカな……。
俺が一歩踏み出せずにいると、その女の子は、走り去っていった。
事前に呼んでいたタクシーの運転手が、俺に声をかけてくる。
「お客さん……乗らはる?」
「……あ、はい」