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第25話 急変







これが俺が願っていた生活。


日本の平和を謳歌する。


勉強にも、遊びにも、付き合いにも、どんなこともしないで済む、夢にもみた休日。


「朝起きると、正午過ぎだもんなー」


なにもすることがない、こんな幸せなことがあるだろうか。


ブランチを済ませて、優雅にコーヒー飲んでテレビを見ていた。


その時だった。


一本の電話が鳴り響く。


リンリンリンーー!


「こんな日曜日に誰だよ……」


俺は、ソファーを立ち上がり、受話器をとった。


「はい、もしもし。新田です」


『か、一樹!?今家にいる?電話大丈夫?』


「え!?誰?」


『お母さんよ、全然電話していなかったけど。元気?って、そんな場合じゃないの』


「ど、どうしたんだ、急に」


『おばあちゃんが倒れたの!危篤なの、今すぐ大阪に来て!』



は、はぁ?



「いや、母さんこそ外国じゃねーの?」


『そ、それはそうなんだけど、この危篤の知らせをね、お隣さんからさっき電話で聞いたばっかしなの。すぐ新幹線乗って!』


「お、おう。分かった。母さんたちは?」


『今日の成田行きに乗って、すぐ向かうわ。でも、時差とかあるから遅くなっちゃうけど、出来るだけ急ぐから』


「じゃあ、後の連絡はどうする?」


『とりあえず、阪大病院に行って!』


「りょ、了解」


プープープーーー





お、おばあちゃんが危篤のーー


重篤って…………倒れたって?



何かに突き動かされるように、俺は荷物をかき集める。



階段を踏み外してしまい、大きな音を立てて転げ落ちる。



「いって…………打っちゃった…………」


右膝が、ズキズキする。


1秒も早く行かなきゃいけないのに…………!



俺が階段でうずうずしていると、玄関先で大きな声が聞こえる。



「一樹!大丈夫!?」



あの声は…………あいつか。


俺も大きな声で返答する。



「ああ!ちょっと転んだだけだ!!」


「ねえ、鍵開けて勝手に入っていい!?」



勝手に入る…………?


あいつ、俺の家の鍵を持ってるだと…………?



「いいけど!」


そういうと、あいつは大急ぎで、中に入ってきた。


「一樹!すっごい大きな音だったよ!?…………こんな赤く腫れちゃって…………」


「心配すんな。大したことない…………あー、イッタ…………」


俺が立ち上がろうとするも、痛みのあまりふらついてしまう。


「一樹!そんな急いでどうするの!?」


「…………ばあちゃん、倒れたんだよ」


「…………え、?ど、どういうこと?」


「危篤だって」


「だ、大丈夫なの?それで、一樹はこれから……?」


「俺、今から大阪行く」


「私も行く!」


「…………は?お前関係ないだろ」


「な、ないことないもん!一樹のおばあちゃんにはお世話になったもん!」


「嘘つけ、会ったことないだろ」


「あ、会ったことあるもん!大きなひまわりが玄関先に咲いてて、大きな庭があってそこで…………」


「いつ行ったんだ?」


「…………お、覚えてないんだ…………やっぱり…………ううん、でもね、あのおばあちゃんには私もいっぱいお世話になったから、ついていく!」


「いや、赤の他人だし、大阪だぞ?お前、そんな簡単なことじゃないんだぞ?いつ帰れるのか分かんないからな?」


「う、うん…………やっぱりーー」


その時、またもや玄関先から声がした。


「沙彩ー?どこいるのー!?」


「あ、お母さん、ちょっと聞いて!?一樹のおばあちゃん、倒れたって!」


「大変!一樹くん今すぐ行ってあげるの?」


「は、はい。今から新幹線で」


「ひとりで大丈夫?」


「は、はい。ひとりで大阪に何回か行ってますので」


「沙彩。もしかして一樹くんについていくとか言ってないでしょうね?」


「だって!」


「沙彩!親の言う事聞きなさい。当たり前に考えて。一樹くんの身内のことよ!私たちは影で支えることしかできないんだから」


「わかった。一樹、早くいってあげて。ごめん。邪魔しちゃって」


「いいよ、俺も声聞けて少し落ち着いたから」


「じゃあ、私が一樹くん東京駅まで送ってあげる。お金とか持ち合わせ大丈夫?沙彩も荷物とか、詰め込むの手伝ってあげて?」


「一樹、急ごう!」


「ああ。藤宮家には俺、いっつも世話になって」


「いいのよ。一樹くんも一人で大変でしょ?隣なんだからこれくらい当たり前よ」



俺は、2人に助けてもらって、その日の新幹線で、日が落ちる前におばあちゃんの運ばれた阪大病院に行くことができた。








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