第24話 暗雲でも晴天
電話番号を押し、恭子ちゃんに電話をかけた。
『…………あ、もしもし。高木です』
『あ、新田です。恭子さんはいらっしゃいますか?』
『はい、あ、恭子の母ですけど』
『あ、すいません。お世話になってます。恭子さんお願いできますか?』
『そ、そうですね……今ちょっと外出中なので、すいません』
『あ、それでしたらまた電話しますので、お伝えいただければ』
『では、失礼します』
俺は、受話器を置いた。
大阪にてーー
「ねえ、恭子。えっと、にったくん?から電話あったんだけど、誰だった?」
「うそー!お母さん、もう忘れたの!?前にも電話あったよ」
「忘れっぽいのよ、最近。それで、そんなのどうでもいいから、にったくんって、ボーイフレンド?」
「そ、そうかな」
「だったら恭子は何人と付き合ってることに……?」
「う、うるさいよ。つ、付き合ってる男なんて1人もいないから」
「最近すごい噂されるのよ、お母さん」
「だ、だからなんだっていうのよ」
「派手なことはやめて頂戴」
「いや。だって付き合ってなんかいないし、ただ仲良く!」
「恭子!お母さん、近所に合わせる顔ないでしょう、そんな娘がだらしのないとか噂されたら」
「知らないよ、そんなの」
ドアが大きな音を立てて、鍵が閉まる音がする。
その頃、藤宮家ーー
「ただいまー!」
「あ、沙彩、おかえり」
「う、うん。今日、ちょっと友達とテレビ見てて。向こうでごはんも食べさせてもらった」
「そう。お母さん、心配してるのよ」
「…………なに?」
「最近、一樹くんの影見えないけど?」
「いいの。一樹は一樹。私は私」
「そんな強情なところ誰に似たのかしら」
「私は世界一素直な女の子だから」
「実の子だから言っとくけど、沙彩はその真反対だから」
「私、外見じゃなくて、中身で勝負するから」
「沙彩の中身はボロボロよ?」
「うううううー!言っとくけど、私、あの父親とお母さんだったら絶対お母さん似だから!」
「ふふふ、なんか最近元気なかったけど、どうやらもう復活したようね」
「調子狂っちゃうよ、そんなこと言ったら」
「女はね、記憶は上書き」
「え?」
「男は、記憶はフォルダーに分ける」
「なんの話?」
「れんあい。まだまだ沙彩のニガテなれんあいの話」
「それはなんとなくわかるけど、何が言いたいの?」
「沙彩はきっと大丈夫。沙彩が忘れることはあっても、一樹くんはきっと沙彩のこと忘れられない」
「そんなことわかるわけないじゃん」
「男ってそんなものよ?」
「…………そ、そうかな」