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第16話 割り切り





「おっしゃあ!姫花、ジェットコースターだあ!」


「もう!太郎、騒ぎ過ぎなんだから」


「なんかさ、山田って、本沢にリードでさ、首くくられている感じしない?」


本沢とあいつは笑っているけど、ひとり、目くじら立てている奴がいる。


「一樹!俺はお前を見損なったぞ!そんなこと言うな!」


「だから、本気にすんなって。本沢にお前は飼われているんだって…………」


「か、飼われてるだとぉ!?お前こそな、藤宮に世話なってんじゃねーか!一緒じゃねーかよ」


こいつ、何言ってんだ?


俺があいつに世話になってる?


「お前、なんか俺にしてくれたりしてるか?」


少しぎこちない聞き方だけど。


「ううん。一樹になんか私がしてあげることないよ!山田くん、誰のこと言ってんのかさっぱり分かんないけど」


「いや、新田くんね、実は……」


本沢が何か俺に話しかけてきた時に、あいつはいきなり大声を出し始めた。


「みんなさ、ジェットコースター早く乗ろうよ!こんな話してないでさ」


「お、おう。一樹、お前の好きなジェットコースターだ!さあ、行くぞ!」


俺は山田に引き摺られるように歩かされ、ジェットコースター乗り場の列に並んだ。





ジェットコースターに並ぶ2人を遠目に見ながら、私は姫花と一緒に、柵に腰掛けている。


「沙彩って、実はジェットコースター、苦手だったんだ」


「そ、そうだったんだ」


「嘘でしょ」


「…………えっ?」


「なんでさっき、私が喋ろうとしたら遮ったりしたのよ」


「…………分かってんでしょ」


「何を?」


「別にね、本当に一樹には何にもしてないし、ま、何も一樹にしてもらってないからね〜!ただ、となりに住んでるってだけかな。今は」


「…………嘘ばっかし。聞いたんだから、太郎から。沙彩は、家事とか他にもいろんなこと新田くんにしてあげてるって」


「あのね、そんなこと、別に一樹に感謝されようとかどうこうしようって、思ってやっていることじゃないんだ。私が勝手にしていること。だから何にもないし、ただそれだけ」


「沙彩、自分に正直になりなさいよ!」


「ど、どうしたのよ、いきなりそんなこと言って」


「そんなことしてたら、全然新田くんなんか沙彩のこと、相手にしてくれないから。未来永劫」


「…………」


「私、沙彩に嫌われてもいいから、言う。沙彩は今、新田くんに名前すら呼んでもらっていないでしょ。それだけ、彼にとって沙彩はどうでもいいって証拠なのよ?あれだけ、影であなたが彼のことを思って行動したとしても、彼……彼に限っては、意味がないの!そろそろ分かりなさいよ、現実を」




そうだった。


一樹はそうだった。


私に振り向いてくれなかった。


姫花の言う通りだった。私が間違ってた。


一樹は、電話口で、あの女の名前は呼んでても、私の名前は呼ばない。


呼び名は、あいつ、お前、あいつ、お前、あいつ、お前…………それの繰り返し。




「ご、ごめん、傷ついちゃった?」


「違うの。よくよく考えたら、私がバカだったって。いつか私の気持ちに気がついてくれるって信じてたけど、多分、気がつかなかった、一樹は。こっからは、私が変わらないとね」


「…………沙彩?」


「ありがとう、姫花。こんなの姫花以外に言ってくれる人、いないから」




2人を乗せたジェットコースターが、急勾配を登り始める。



「頑張って、沙彩。私、応援してるから。新田くん、安心してね。太郎くん曰く、ちょっとずつ沙彩の気持ち、分かり始めているみたいだから」



急勾配を登りきった後、急降下していく。


いろんな人、もちろんそこには2人の叫び声も入っている。



「ギャアアアアーーーーーー!」



「あれは、乗れないよね、姫花」


「流石にね…………」





2人は、ジェットコースターを楽しんで、私たちのところに戻ってきた。


「あ、あれは…………速すぎるぜ」


「そうだったんだね!どうする?おふたりさん、休む?」



2人して、息ぴったりで大声で訴えた。


「休憩させてくれ!!」

「休憩させてくれ!!」




姫花と私は、顔を見合わせて微笑んだ。










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