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第13話 その2人がくっつく







「おはよう、新田」


「ああ、げっそりしてるか?俺」


「ああ、体でも壊したのか?」


「いいや、ちょっとな…………」


「なんかあったら言えよ?」


「サンキュ…………また昼な」





「あいつ、大丈夫かよ…………?」











教室に入って、自分の席につく。


横の席を眺めていると、昨日のことがフラッシュバックしてーー



ーーずっとずっと一樹のこと好きなんだよ、私


ーー私のことはほっといてくれたらいいから








「…………なんか一言くらい話すべきかな」


でもーー


あいつは、結局朝礼ギリギリに来て、俺の方なんか全く見てくれなかった。


私に話しかけるなオーラを漂わせていた。





午前の授業を終え、山田の待つ食堂へと向かった。


「待たせたな」


「いいや、今座ったばっかだ。お前、大丈夫かあ?」


「全然平気…………あ、平気って違うから、なにもないから」


「平気…………ってことは、さては新田、藤宮となんかあっただろ」


「……………………」


「黙ってないでなんか言えよ〜〜」


「……………………」


「ちょっとだけさ、俺の話していいか?」


「ああ」


「俺さ、ずっと前からずっとずっと本沢のことが好きでさ、昨日、告白したんだよ」


「…………そ、そうか」


「でな、俺、オッケー貰えて!たまんねーよ!!というわけで、晴れて彼女持ちになったんだよ!」


「…………そっか。おめでと」


「お、おおう。こんな気分になったの初めてだよ。あああ、だから今日もさ、放課後にデートしよって!」


「…………あはは、それはよかったな」


「ん?今日のお前は変だな。どうした?朝から藤宮とも話してないしさ」


「……………………」


「どうなんだよ。お前、告白でもしてフラれたのか?そんなわけないだろ。藤宮はなお前のことが好きで好きでたまらないんだぞ。俺もな、本沢からな、こっぴどく聞かされたよ、昨日。ああ、分かるさお前の気持ち。このまま気持ちは一緒だ、俺らは好きなもの同士だ、そう疑わなかったあの日。思い返されるあの時のこと。虚しいよな、俺も分かる。でも、元気出していこ…………」



俺は思いっきり机を叩いた。



「山田、お前の言ってることとな、まるっきり反対だよ!…………ああ、俺がな、あいつを…………ふって…………ふってしまったんだよ!…………藤宮が俺を好き!?バカっじゃねーの?あいつが…………あいつが俺のこと好きなわけないだろ…………」


「新田、お前落ち着けって」


「あっ…………」



食堂中が俺の方を向いている。


「す、すいません、お騒がせして」





俺は静かに椅子に座った。


「おい、新田。お前、藤宮をフったってどういうことだ」


「…………いや、フラれた…………のかもしれない」


「はあ!?お前、フったのフラれたのすら分からねーのかよ。しょうがねーやつだなお前は。まあ、藤宮と俺の彼女、仲良いはずだから、ちょっと探り入れてやるよ」


「余計なお世話だって」


「お前、俺にな、そんぐらいさせろよ。俺だってな、自分だけ彼女できて幸せなのもな、悪いって思ってっから」


「…………じゃあ、頼む」


「任せとけ!」
















私って、昨日なんてこと言ってしまったんだろ…………。


ダメダメな女ね…………まったくもって一生の不覚かもしんない。


恭子…………絶対、恭子って女、許さないんだから…………!


だいたいね、幼稚園にいる時からいけ好かない女だったのよ!


すぐ、男の先生がいたら抱きついたりして。ませ過ぎなのよ。


そのくせして、女だけでいる時には、ふんふんうなづいてばっかしで。


八方美人だったわね。今も昔も変わらない。


そんな女に引っかかる一樹も一樹よ…………!



でもーー


どうすればいいんだろう。私はこれからどう彼と向き合えば…………。



下を見ながら廊下を歩いていると、私の耳に噂話が飛び込んできた。


「ねえ!あの本沢さんと、なんと山田くんが付き合い始めたそうよ!」


「うそ!まるで美女と野獣じゃない!本沢さん、なんか弱味握られたとか?」


「山田くん、そうだったら最低な男ね。でも、あの山田くんなんかがそんな高尚な手段使うかしら?」


「あっはは!それもそうよね」


「キャハハ!」






う、うそ……………………姫花と山田くんが付き合ってる…………………………?







「あら、珍しいじゃない。沙彩が昼休みに生徒会室に来るなんて」


「あっ…………ちょっと話したいことがあって」


「どうかしたの?」


「いや…………あ、姫花が山田くん…………と付き合ってるってホント?」


「あー…………あー、まだ沙彩に言ってなかったわね。実は、昨日、山田くんに告白されちゃいまして!」


「あ、そう……なんだ」


「あれれ?もしかして…………沙彩って、山田くん好きだったとか?」


「まっさか!全然好きでもなんでもないから…………」


「…………なんか変ね…………沙彩、なんかあった?もしかして、新田くん関連!?」


「そ、そうなの…………」


「で、ちゃんと付き合えた!?」


「い、いや…………実は、一樹と…………仲違いしちゃって…………前に言ってたようにね、一樹に好きだって言えたのは言えたんだけど…………その言ったタイミングが最悪だったの」


「なんとなく、分かるわ。喋らなくてもいいよ、沙彩。それ以上話すと辛いから」


「あ、ありがとう。姫花って優しいね。ホント優しいよ」


「新田くん…………ね。彼って難しいよねー」


「べ、別に一樹のことはいいからさ、ねえ、聞かせてよ!」


「え?」


「なんで山田くんと付き合うことにしたの?」


「やっぱり聞きたい?」


「うん」


「それはね、彼が私のこと、信じてくれているって思ったからよ」


「…………姫花を信じているって……ど、どういうこと?」


「山田くんとはね、前々から教室とかで結構話す機会があったの。その時にはね、ぜーんぜん山田くんのこととか眼中になかったんだ。顔もタイプじゃないし、身長も高くない。でもね、私が困ってる時、いっつも私を助けてくれたなーって思ったの、告白された時」


「…………そうだったんだね」


「彼ったら、そこ分かってんのよ。告白の時もね、『見た目で付き合えないのは分かってます!でも、付き合ってから、俺は絶対本沢さんに嫌な思いさせませんから!』って。だったら、山田くん……あ、太郎くんと付き合ってみようかなって」


「あ、そうだったんだ…………」


「でもね、名前言う時にさ、太郎ってちょっと笑わない?なんかイメージと顔と名前が一致するって!」


「アハハ!たしかにちょっと、そう思っちゃうかも!……あ、ごめん。彼氏だよね」


「いいのよ、沙彩。彼は面白いことが取り柄なんだから。ほら、笑って」


「ふふふ……ふふっ!」


「あははあはは……山田太郎って名前さ、ちょっと笑っちゃうね、やっぱ。タロって犬みたいでさ……ははは!」







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