第11話 まだ知らない恋敵の存在
章の区分を削除しました。展開をみていると章はいらないんじゃないかな、と。
これからもよろしくお願いします。
「でも…………新田くんってよくわかんないね」
学校終わり、近くの喫茶店に姫花と一緒に来ている。
コーヒーを相変わらずブラックで飲むところは感服する。私は無理。
結構長い間仲良くしている、姫花にはこれまでいろいろなことを話してきた。
今回、私は一樹の話を振ってみることにしてみた。
「そうなのよ。ずっと一緒にいたつもりなんだけど……なんて言えばいいのかな……高校が終わりに近づくにつれて……どんどん一樹が離れていってしまう感じがして」
「沙彩らしくないわね。でも、周りから見ていると一見付き合ってるように見えるわよ?」
「そこが問題なのよ!……私のこと、全然気にも留めていないような気がして」
はあ。私って女に見られてんのかな?
そこら辺にいる石ころと同じでしか見られてないとか、ないよね……?
「幼馴染だからって、互いに好きだと限んないだよね。沙彩の心配もよく分かるよ」
「分かってくれる!?」
「この間、試しにね、新田くんに迫ってみたのよ、私」
「えっ……ちょっとなにしてんのよ!姫花」
「安心してね、私になんか、微塵も興味持たなかったから。好きな人がいるからって言われた」
「う、うそ!だ、誰、誰なの、誰って言ってた!?」
も、ももももしかして私!?
私のこと、好きなの……好きだよね……何年一緒にいるって思ってんのよ……。
「それがね…………」
「うん……」
「残念ながら教えてくれませんでした!」
怖い顔したんだから、私じゃないかもしれないって思ったじゃないの。
もしそうだったらどうしようかなって思っちゃったじゃん!
でも……はっきり言ってくれればいいのに、一樹も。
「何よ〜〜〜それ!期待したじゃん!」
「きっと、恥ずかしかったんじゃないかな?そんな仲良くもない人に自分の好きな人の名前言うの。でもね、きっと彼が好きなのは、沙彩よ」
「そ、そうかな……不安だなぁ……」
「自信持ちなさいよ!あれだけ仲良かったら。もう、たった一言で済む話よ!」
「そんな勇気ないよ……」
「会って言うのが恥ずかしかったら……そうね、電話してね、ぱぱっと言っちゃうの!決まり!今日の夜9時にでも電話すること。いい?」
「う、うん……わかった。やってやるよ!」
「沙彩、その調子!」
その日の晩、私は電話口に、8時50分から待機していた。
頭の中で、一樹の家の電話番号を何回も唱える。
この番号は、自分の家の電話番号より先に覚えたんだもん。
「す、好きです?」
ああああ、ダメ。
「ずっと好きでした!?」
ち、違うよね、なんか。
「か、一樹のことが好きです!」
よし!言えた!
そろそろかな…………。
あと10秒で、9時ちょうど。
恐る恐る、番号を押して、受話器をあげる。
『…………ぷ、ぷ、ぷーーーーーーー』
……えっ?番号押し間違えたかしら……うそ……もう一回かけよ。
『…………ぷ、ぷ、ぷーーーーーーー』
もしかしてだけど、一樹、話中?
5、5分経ったら、流石に電話終わってるよね……?
5分経って、かけ直しても、電話に出てくれなかった。同じく、話中。
10分ーー
15分ーー
一樹が電話に出ることは、なかった。
ああああ、もう!男のくせに長電話なんかすんなよ!
親と話してんのかな……でも、こんな長い間喋ることなんかないよね……。
山田くんと話してんのかな……誰と喋っているんだろう…………。
気になる……気になる……気になって仕方がない!
私の電話を話中にするほどの電話相手は、どこの誰ですか?
いまから家に直接、の、乗り込んでやろうかな…………でも、せ、せめてあと5分、10分くらいは待つべきかな……?
9時25分に電話をかけても、話中…………だった。
…………いったい、一樹はこんな夜遅くに誰と喋ってんのよ!
いつもだったら、いくらでも行ける一樹の家が今日はとても遠いよ……。
でも、9時半になったら、直接乗り込んでやるんだから……!
「今日は、あいつの仕事も片付いたし…………電話でもかけよう」
運のいいことに、日曜日。
あいつのことはひとまず横に置いといて、恭子ちゃんに電話かけましょう!
久しぶりぶりってなるな…………。
何時くらいに電話かけるといいんだろ……?
お昼かな……あ、でも出掛けていたりするかな……朝は論外……夕方は食事中の可能性が高いから…………
夜9時くらいにでもかけよ。
手元のメモを見つめて、恭子ちゃんと、どんな話をしようか、悩んでいる。
今が10月の終わりだから…………次、俺が向こうに帰ることができるのが、12月のクリスマス前だから……
次、会う約束できるのは、その時らへんかな。
えっと……まあ、とりあえず電話出来なかったこと心配させてごめんって言って……
最近寒いね……なんか違うな……まあ、とりあえず電話かけてみるか。
番号を押して、受話器を取る。
『…………あ、もしもし。新田という者なんですが』
『高木です……あ、新田くん……どちらさんですか?』
や、やべえ……父親が電話出たよ、これ。
まずいな…………取り敢えず、この場を乗り切るしかない。
『あ、あの、高木……恭子さんのお宅でしょうか?』
『そ、そうですが。娘なら今、お風呂に入っていますよ』
ーーーーーーーーーーえ?
『あははは……じゃ、じゃあまた掛け直しますね、では失れ……』
『ちょっと待ってくれ……………………今、声掛けておいたからもう少しで風呂から上がってくると思うんだ』
『……………………はあ』
『ほら、バスタオル巻いて上がってきたから。今、代わるな。じゃあ』
こ、こんの…………クソ親父…………!
18歳やそこらの健全な男子高校生の妄想を刺激しやがって…………!
まずお前な、風呂に入っているとか言わなくてもいいだろう…………!
そしてなバスタオル巻いてとか間違っても言うんじゃねーよ…………!
一回、受話器を耳から離して、深呼吸をする。
ああ、受話器の向こうの恭子ちゃん……
今…………
あくぁくぁあああ!やけどしそうだああああ!
白い湯気が目にちらついて……………………!
『あ…………か、一樹くん?』
『こ、こんばんは!きょ、恭子ちゃん!?』
『そんなに驚く?一樹くんが全然電話くれなかったから、私すごい電話しにくかったんだよ?』
『あ、ご、ごめん…………心配させてごめん』
『別にいいよ、そんなの。あれから学校とかどう?』
『ま、まあ、それなりに』
『東京ってすっごい今華やかなんだってね?すごい景気が良くて。こっちなんか全然田舎だから』
『……まあ、そんな感じ?………………あのさ』
『なに?』
『今度さ、そっちの方に帰省するのって、12月…………22日くらいかなって思うんだ。だから……また会えるかな?』
『それって帰省?』
『そう。あ、言ってなかったけど、おばあちゃんがそっちに住んでいて。毎年夏くらいに帰省しているんだ…………じゃあ、電話切るね』
『ちょっと一樹く…………』
『プープープー……………………』
俺って馬鹿だな…………恭子ちゃん、まだ着替えてないじゃんか…………風邪引いてたらどうすんだよ…………。
後から掛け直すって押し通せばよかったじゃんか。
次の電話の約束もしていないし…………予定とか全然聞いていないし…………
俺って何してんだろ?
こんな電話だったらしない方がマシだったよ…………。
ーーピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
あいつかよ……またあいつか…………こんな時間になんだよ…………
いつものように電気はついているから、家にはいるっぽいわね。
なるべく、この動揺した気持ちを抑えるのよ。
ピンポンを押して…………
「どうした?」
「あ、いや、別に用事はないんだけど!?」
「ならどうしてインターホン鳴らしたんだよ」
「飲み物貰おうって思って。上がるね!」
「俺ん家をなんだと思ってんだよ…………」
絶対、誰にさっき電話していたって聞き出してやるんだから。
「さっき、何していた?」
「……ん、いや別に。ま、今テレビはつけたけどな」
「…………ふーん?」
ますます、怪しいわね…………電話してたことを私に隠すとは…………!
さてさて、電話機は…………?
あれっ…………?
受話器が外れっぱなしだわ…………?
だから、話中になったのかな?
そっか!
電話したら、受話器って絶対戻すもんね。なんかの弾みで外れていたんだわ。
だから、プープープーって、話中みたいになったんだよね!
私って、早とちりし過ぎよ…………!
「あ、一樹。お茶入れてくれて悪いけど、私帰るね?」
「ちょ、お前、これくらい飲んで行けって」
「受話器、外れているよ?戻しとくね」
「…………あっ…………サ、サンキュー」
「じゃあね、帰るね。また明日」
これで一件落着!
一樹は誰かに電話していたんじゃなくて、受話器が外れていただけでした〜!
でもーー
今日、私、一樹に全然気持ち伝えられていないじゃん!?
また引き伸ばし!?
私に、チャンス巡ってくるのかな…………?