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第一章・入隊 〜軍隊生活と飛行兵志願〜(6)ノモハン事件と満州国

 昭和14年7月、北鮮会寧の飛行場大隊に転入した僕等にも、このノモハン事件に出動がかかった。会寧の飛行隊(九五式水冷複葉戦闘機)も動員され、その整備のため北満に転進した。この時、僕は留守隊に回され衛兵勤務、不寝番等で多忙を極めたが2ヶ月余りで帰還した。 

 ノモハン事件で地上部隊の苦戦が耳に入った。多数のソ連の戦車部隊に圧討され、ついにはタコツボ防空壕(兵士一人が潜むように掘った穴)の中から地雷用の爆弾を抱いて戦車のキャタピラに肉弾自爆し防戦したとか。停戦して多数の捕虜となった日本兵とソ連兵との交換には、日本側は自国の兵に唐米袋を被せて引き取ったとか。日本兵としての不名誉を嫌った仕打ちの結果、顔を見せないための手段で、捕虜となるより自決すべき事を上層部が暗示したものだった。

 この事件の後、陸軍大臣の東条英機が戦陣訓を作り【生きて虜因の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残す事勿れ】という一項が加えられた。その後、太平洋戦争中の至る所で玉砕、死守を強要され幾多の将兵が犠牲となった。そのきっかけとなった戦陣訓が、このノモハン事件の置き土産だったと思う。外国の軍隊では負けると思われると降参が早く、捕虜となる場合が多いのとは逆の現象だった。

 また、この事件の前後にはソ満東部でソ連軍の越境での小競り合いがあったが、国境警備日本軍の抗戦により、ソ連軍は敗退して事なきを得た『張鼓峰事件』という紛争があったと聞く。


 満州国の事に触れてみたい。

 昭和4年、中国は長い内乱の後、蒋介石がやっと中央部だけの支配権を確立する一方、中国東北部(満州)は張学良の軍隊が支配していた。これに対し日本は積極的な大陸政策を採用し満州に目をつけた。

 昭和6年9月18日夜、関東軍の奉天守備隊が中国軍の兵営のある奉天北大営から、南へ600mほどの地点、柳条湖で南満州鉄道(俗にいう満鉄)の一部を日本軍自ら爆破した。これを口実にして北大営を攻撃。また、他の連隊が奉天城を攻撃し占領してしまった。この『柳条湖事件』が『満州事変』の発火点となった。

 もともと日本は、日露戦争の勝利で南満州鉄道の権利を得て大連、新京、奉天等の支配権を握っていたものの、満州そのものは握っていなかった。しかし、この柳条湖事件をきっかけとして日本軍の出兵となり、日本国政府の慎重な態度に軍部が独断で事を起こした。満蒙開拓を国の施策とし、開拓民を送り豊富な沃土を農産物の宝庫としたいという計画だったが、政府は他国への侵略じみた行動に二の足を踏み、腰を上げないので軍部が先駆けとなった。

 当時、満州には『関東軍』という最強を誇る部隊がいた。まず、関東軍が行動を起こし内地から動員を求めたが、政府はこれを拒んだようだった。戦況不利になった関東軍は、朝鮮にいた朝鮮守備隊を独断で出兵させ戦果を拡大していったため、政府もやむなく内地からの出征を認め戦火はさらに拡大していった。

 昭和7年になると満蒙開拓を主目標として内地から移民が募集された。資料によると、その数33万人にのぼり、集団で生活群落を作って農作業を営んだ。しかし敗戦となり内地に帰還できず死亡した者、その数18万人に及んだという。悲惨な末路であり、我が子を捨てたり地元民に預けたり、食料と交換したりして引き揚げた者も多かった。現在も親探しが続き、肉親の情の繋がりの深さに涙を誘われる。

 この移民を守るための関東軍だったのに、南方戦線が不利になるに従いこっそり動員され、国境警備はお留守に近かったと聞いた。終戦直前、ソ連軍が国境を越え進軍して来た時は、ほとんど無抵抗だったようだ。開拓民の無念さを思い知らされた。

 昭和7年3月1日、満州国が初めて建国し溥儀氏が満州国の天皇として就任したが、内実は日本国の支配するかいらい政権であったようだ。

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