表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/67

あとがき

●じっちゃんの初盆

 今年の夏で、じっちゃんがなくなって1年たちます。今日はじっちゃんの初盆です。ぼくが朝起きて部屋のかたづけをしているところに、近所のおばあちゃんがお参りに来てくれました。しばらくすると、花屋さんが来て花をかざってくれました。ぼくは、ぶつだんにじっちゃんから教わった、囲ごの石と戦そうの時にじっちゃんがもらったメダルを置いてあげました。ふと、じっちゃんの写真を見ると、なんだか喜んでいるようにも見えました。

 親せきの人達が、福岡や山口県から来てくれました。その後、おぼうさんが来ておきょうが始まると、みんなむねの前に手を合わせました。おきょうのさい中に、家のねこが人の間をすりぬけて、おぼうさんのとなりにすわったのでびっくりしました。そこでじっとおぼうさんのおきょうを聞いていました。きっと、家のねこもじっちゃんの死を悲しんでいるのだと思いました。

 1年前の8月20日、ぼくの剣道の試合が北九州で行われていました。その時、じっちゃんの病院から電話がありました。

「すぐ病院に来るように」

との電話です。ぼくは、試合のこともわすれ、じっちゃんのことばかり考えていました。病院に近づくにつれ、心ぞうの音が大きくなりだしたのが分かりました。でも、病院に着いた時には、いつものじっちゃんはいませんでした。

「おかえり。よう来てくれたね」

と、笑顔で迎えてくれるじっちゃんではなく、口を閉じて静かに目をつむっているだけのじっちゃんでした。今もその時のことはわすれません。

 じっちゃんは、ぼくと話をしたり、一しょに囲ごをしたりして、とてもやさしいじっちゃんでした。また囲ごをしたかったのに、もう二度とできません。じっちゃんは、よくこんな言葉をかけてくれました。

「囲ご楽しかったよ」

その言葉をぼくは、一生わすれません。今でも、じっちゃんのことを思い出すと泣いてしまいます。どこかでじっちゃんが、

「おかえり」

と言ってくれているように思います。  筆者の孫:Y.H


●父の思い出

 父は復員後、家業の農業を営み、茶、椎茸、米等を作っていました。私がまだ小学校入学前だったある日、雨の中の田んぼで草取りをしている父に「お父さーん、風呂が沸いたよ」と声をかけました。父は風呂から出て来ると「気分が悪い」と言って、横になって苦しみ出しました。夜半だったか、診察に来たお医者さんが苦しむ父を車で久留米医大に急いで運んでくれた事を憶えています。その時は、十二指腸が破れ死線を彷徨う3度の手術をしたそうです。

 長い日々が過ぎた夏の日、父はオレンジ色のタクシーに乗って帰って来ました。骸骨のように痩せ細り、夏の間ずっと床に伏せていました。そんな父に無理なお願いをして、近くの谷に魚釣りに行った思い出があります。紺色の浴衣姿で麦藁帽子を被り桑の木陰で見ている父の前で、私は得意気になって魚を釣って見せました。餌は父が捕ってくれた蜂の巣の幼虫でした。無口でとても怖かった父の優しい思い出です。

 そして父は祖父が死んだ後、仏様のお世話をするようになり50歳を過ぎてから仏教に目覚め、母と共に聞法会に通う日々が続いていました。それ以来、性格がすっかり変わってしまい、あれ程怖かった父が穏和になって御仏に向かい、朝夕に何度となく手を合わせていました。

 80歳になり糖尿病、C型肝炎などの病気はありましたが、デイサービスを利用したり縁側にて読書に勤しんだり、囲碁の勉強をパソコン相手にする等、元気な毎日を過ごしておりました。

 しかし、肝臓ガンが進行した平成17年の夏、他界しました。87歳でした。生前中において皆様と良き御縁が持てました事を、父は深く感謝致しておりました。父に代わり御礼申し上げます。

 長い間、読んでいただきありがとうございました。  編者:M.H


P.S.

この「美しき翼~父の回想録~」は自費出版しております。ご希望の方には1,700円(送料込)でお分けいたしております。メッセージ欄でその旨をお知らせいただければ、折り返し連絡いたします。在庫僅少!

【PLUSMAKERからのコメント】長い間、読んでいただきありがとうございました。


●2009年10月22日よりSF映画シナリオ「クリムゾンX」を連載。

銀河系のどこかにあるクルール星の宇宙人たちは、ある物を手に入れるために地球にやってきた。しかし地球には正義のヒーローがいることを彼等は知らなかった。そして攻防戦が始まるのであった。

http://ncode.syosetu.com/n3801i/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ