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第六章・終戦 〜興安丸と復員〜(7)家族の復員

 10月の終り頃だったか、千代子姉の婿の片山兄が復員して来た。彼は満州の新京で応召され衛生兵として台湾に派遣されていたとかで、無事復員できた由。しかし、新京に残している家族一族の安否が心に残る。松次兄も終戦直前に新京で召集されたとか。弟の良次も現役の工兵隊として、東満国境の要塞構築に従事していたとか。はたして無事帰国できるやら、まったく分からない。

 新京に残る千代子姉と子供4人、マサ子姉と子供1人と、松次兄、弟の良次9人が、無事引き揚げて来るのかが最大の心配事であった。大連からの引揚げ船の着く日が待ち遠しい。二度程、博多港まで片山兄と一緒に行ったが無駄だった。

 三度目の正直というか、一家一族の元気な姿を博多港に出迎えた時の喜びは何事にも代えられないものだった。家からたくさんの銀飯の握りと芋饅頭を提げて行った事を記憶している。何よりも、無事引き揚げて来られた事が幸いだった。しかし長野に嫁いだマサ子姉婿の山下義兄は、終戦後シベリアに抑留され、後に戦友の伝言で病死したとの情報が伝わったが、それが本当だったのか。2年を経て白木の空箱で故郷の長野の親元に帰って来た由、痛恨の極みでしかない。  また片山兄の弟、恵吉氏が、一旦は兵役除隊になり警官の仕事に就いていた由。北鮮国境らしかったが終戦となり、住民の暴動に対し日本人居住者の命を守る一念で市街に出て行って、ついに帰らぬ人となった事が何よりも痛ましかった。


 多くの犠牲者を出したこの戦争で、僕を始め家族も再び故郷の地を踏みしめられた事に見えない大きな力を感じた。生き残った者として背負わされた役目と命が、そこにある事も感じていた。

●2009年10月22日よりSF映画シナリオ「クリムゾンX」を連載。

http://ncode.syosetu.com/n3801i/

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