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第一章・入隊 〜軍隊生活と飛行兵志願〜(14)射撃大会

 思い出した事がある。入隊以来、銃の支給は常に保持していたが、実弾射撃はほとんどなかった。ただ、平壌時代に一度だけ実弾射撃訓練が実施された。郊外の射撃場へ凍った道路を30分余り行軍するのが困難を極めた。射撃場で弾込めの操作を習い、300m離れた標的に寝撃ちの姿勢で5発の実弾を撃ったが、1.5m×2.0mの標的の円内には1発も当たらなかった経験がある。

 ここ会寧でも射撃訓練が実施され、5発で50点満点のところを38点を射止めた。銃は発射の瞬間、銃口が上に跳ね上がり肩をぐっと後へ圧迫するので、最初から肩にしっかり押しつけ、反動を小さくするようにしていたため好成績を上げたのだと思う。

 翌日、第一中隊、第二中隊合同の射撃大会が行われた。もちろん僕は第一中隊からの選手に選ばれ射撃場に立った。僕の中隊の教官が「銃に癖があるから」と、他の銃を与えてくれたのがまずかった。さらに防毒マスクをつけて射撃する事になった。

 最初の一発を発射して弾が右上に当たった場合は、右下を狙う事も一つのコツ。銃の癖によるものもある。標的場では塹壕の中の看視兵が、弾跡を丸いシャモジのような物で指し示し、それを縦・横・斜め・左・右にする事で点数を示してくれる。

 防毒マスクを被っているので、呼吸でガラスが曇る。いつまでも狙う事はまずい。大きく息を吸い込み静かに吐く。「一寸一時に照準を定め “心で撃つな。手で撃つな。暗夜に霜の降るが如く”引き金を引け」と教えられている。でも、なかなかその状態にはなれない。ガラスの曇りで照準が定まらない。後ろでは、検査官が靴と剣をガチャガチャ鳴らして見守っている。

 5発撃った結果、34点稼いだが前日より4点不足し、がっくり肩を落とした。銃を交換したのが悪かったのか、防毒マスクをつけたのがまずかったのか、いずれにせよ後の祭り。第二中隊から出た選手が38点取って優勝した。

 中隊に帰り「全員集合の中で優勝は逸したものの、我が中隊では最高の成績を上げた。初期の目的を果たした事を多とする」との賛辞を貰い恐縮したものだ。

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