知らない場所に来て気が付いたら終わっていた私の人生
突然だが、私は今、とても混乱している。
それは、目を開けているのかわからないほど真っ新で真っ白で、全く知らない場所にいるからである。
そりゃあ、知らない場所にいたら混乱するわな。と思ったでしょう? それだけなら私もここまで混乱していない。他にもあるのだ。
なぜだか、ここに来るまでの記憶がないのだ。全て。そう、自分の名前すらわからない状態なのだ。なのになぜか、ここが知らない場所だとわかるのだ。とても不思議でならない。
さらに、まぶしいほどの真っ白真っ新な部屋。私は何をどうすればいいのか全く分からないまま、茫然とその場所の中心らしきところに座っていた。
まあ、ずっとこうしていても仕方がないからと立ち上がる。
すると突然、声が聞こえてきた。
『お皿を真っ白にして。お皿を真っ白にして』
少女なのか少年なのかわからない、幼い声が聞こえてきた。
「何? お皿? ここにはなんにもないじゃない!! 私をここに連れてきたのはあなた? 私をかえして頂戴! 」
しばらくして、また声が聞こえてきた。
『ある、ある。お皿は、ちゃんとある。それを真っ白にしてくれたら、かえしてあげるよ』
「お皿なんてどこにも……」
そこから先は言えなかった。さっきまで何もなかったところ。私の目の前に、お皿がたくさんあったのだ。しかもたくさん。
「うそ……」
何時の間に。ありえないことが起きて、信じられなかった。まず、最初からありえなかったのだが。
『お皿、きれいにして。ねえ、早く』
優しく急かしてくる声がする。それはどこから聞こえているのか。部屋に響いているように聞こえるし、頭の中に響いている気もする。
ここで何もしないまま時間が経つのは嫌だから、私は仕方なくお皿を手に持った。
するとさらに、おかしなことが起こった。またいつの間にか、流し台がそこにあったのだ。しかも、その上には漂白剤。
しかしいちいち驚いていてもただの時間ロス。私は激しく脈打つ心臓を抑える。
『ありがとー』
それと同時に、子供がきゃっきゃと笑う声がする。
漂白し終えて、私は言った。
「終わったわ。だから、私をかえして! 今すぐに! 」
また、しばらくして声が聞こえてきた。
『わかった、かえしてあげる。そこにあるものを全部飲めば、かえれるよ』
見ると、さっき流し台にあった漂白剤のボトルと同じ色をした、形の違う容器だった。
それは、かなりの量があった。
「これを飲めば、本当にかえれるのよね」
待っても返事はない。私はその言葉を信じてそれを飲み干した。
急に真っ暗になった視界の隅から、声が聞こえた。
『それを飲めば、還れるよ』
それから私の意識はぷっつりと切れた。
こんにちは、桜騎です! 今回は少し不思議な話を書いてみました!
これはたまたま今日、母がコップを漂白剤を使ってきれいにしていて……飲んじゃだめと言われ、飲んだら死んじゃうのかと聞きました。すると、たくさん飲んだら死んじゃうと答えが返ってきました。
そこでなんとなく、この話が書きたくなりました。暇つぶしなど、役に立てれば嬉しいです。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!
主人公があのあとどうなったかは、ご想像にお任せします。その液体の正体も。